将来はプロになりたい、だからこそ、大学は本場のアメリカへ留学したい!または、大学はスポーツ奨学金で行きたい!と考えているヤングなアスリートは多いのではないでしょうか。アメリカの大学には、さまざまな奨学金制度があり、アスリートももちろん対象となっています。しかし、方法やプロセスは意外とややこしく、「分からない」と思っているうちに受験が終わってしまうことも。
目次

1.アスリート奨学金とは?
大学のスポーツチームは、大学の規模によってDivisionに分類されています。
大学の規模 | アスリート奨学金 | |
Division I (D1) | 大(大学院を併設するような、数万人規模の学生がいる大学に多い | Full Rideのみ |
Division 2 (D2) | 中(学生数が数千人程度の学校に多い) | Partial |
Division 3 (D3) | 小(小規模な私立大学が多い) | なし |
このうち、アスリートという区分で奨学金が支給されるのは、D1とD2のみとなります。D1はアスリート奨学金はFull Ride(全額無料)のみとなっているので、D1のスポーツでスカウトされて入学する学生は、学費も寮費も、教科書代も、全て無料となります。
D2のアスリート奨学金は、Partial、つまり全額無料ではないけれど一部が無料になるというものです。いくら無料になるかはケースバイケースで、半額だけ無料という人もいれば、もう少し少ない学生もいます。
D3については、アスリート奨学金はありません。しかし、D3の大学にもスポーツチームはあり、スカウトによって入部します。アスリートという枠での奨学金はないものの、D3は資金が潤沢な私立大学が多いので、Financial Aidが充実しているとか、施設や設備、サービスにお金をかけてくれているという魅力があります。
2.アスリート奨学金の獲得方法
アスリート奨学金は、大学のコーチからのスカウトによって決まります。例えばD1の場合には、大学ごとにFull Rideの奨学金の枠が100人程度と決まっており、その枠内でしか与えることはできません。規模が大きな大学のスポーツは、試合がテレビ中継されるなど、メディアへの露出も抜群です。そのため、奨学金がなくてもぜひチームに入れてほしいという人は多く、チームに所属しているメンバー全員がアスリート奨学金を受けているというわけではありません。
アスリート奨学金を受けるためには、高校の時に大学のコーチからスカウトしてもらうことが必要です。もちろん、それが唯一の条件というわけではありません。中には、大学へ入学してからWalk-onという形で入部を希望し、才能が認められたらFull Rideの奨学金をコーチからオファーしてもらえる、というケースもあります。
一方、D1のアスリート奨学金は、無慈悲な部分もあります。この奨学金は、入学してから卒業までの全期間を保証するものではなく、毎年、見直しがあります。そのため、大学1年生の時には奨学金をもらえたけれど、2年目にはなくなった、というケースもあります。
アスリート奨学金がなくなったら、学生はどうなるのでしょうか?答えは簡単。学費や寮費の支払義務が発生します。もしも諸事情で支払えないとなると、履修ができずに退学という事態にもなりかねません。
そうならないためには、アスリート奨学金を狙うとはいえ、最悪の場合も念頭に入れて、学費を払える大学を選ぶということも、必要な対策かもしれませんね。
もしケガでスポーツを辞めたら、どうなる?

大学のスポーツは、ケガで退部する人もいれば、プレータイムがあまりないという不満を抱えて退部する人もいます。また、少数派だとは思いますが、コーチからのセクハラや嫌がらせなどで退部するケースも、ちらほらと聞きます。
どのような理由で退部する場合でも、スポーツを辞めたからと言って大学も退学する必要はありません。スポーツをすることを条件に入学しているわけではないので、スポーツの有無と在学資格の有無とは完全に別物です。
3.大学のコーチに高校での実績をアピールする方法
真剣にスポーツをする高校生は、全米に数えきれないほどいます。そして、若い才能が欲しいと考える大学も、全米にたくさんあります。このマッチングは、どのようにして行うのでしょうか?日本からアメリカへスポーツ留学を希望する人はもちろんのこと、アメリカの高校でスポーツで頑張っている人にとっても、これは興味関心がある所だと思います。
おすすめはNCSA

私の息子も、頑張っていたフットボールで大学からスカウトを受けました。プロになるつもりはなかったのですが、大学でもフットボールを頑張りたいという希望もあり、試行錯誤しながらアスリート奨学金のプロセスを研究しました。
アメリカのハイスクールでスポーツをしていて、大学でもスポーツを続けたいという子は、まず最初にNCSAへ登録することがマストです。
NCSAというのは、アメリカの大学と高校生をマッチングするサービスで、全米の大学が利用しています。スポーツごとに分かれていて、データベース化されています。
NCSAのサービスでは、高校1年生から登録ができ、高校在学期間中の試合のハイライトをアップロードできます。それを大学のコーチが見て、ピンと来たら連絡をもらえるという仕組みになっています。
NCSAは、有料のサービスです。料金を払えば、自分が住んでいる地域や州だけでなく、遠く離れた州にある大学から声がかかることもあります。

ちなみにこのNCSAのサービス利用にかかる料金ですが、最低料金だと100ドル程度だと聞いたことがあります。我が家は、見事なセールストークに飲み込まれてしまい、$2500も払いました。最終的にはNCSAで見つけた大学からスカウトを受け、そこへ進学することになったので、元が取れたとは言えますが。
地元のコーチが声をかけてくれることも
アメリカのハイスクールスポーツは、ローカルテレビなどでも放送されます。そのため、地元で活躍するアスリートは、テレビで知名度が高くなり、地元の大学から声がかかることもあります。
ただし、大学側にとっては、生徒が地元にいるからという理由でのスカウトは、基本的にほぼ考えていないことが多いです。地元にたくさんアスリートがいても、その大学が欲しいと思えなければ、声がかかることは残念ながらありません。
チャンスは必ずやってくる
もしも経済的にNCSAへの登録が難しい場合、また地元のコーチに全く声をかけてもらえなくても、あきらめてはいけません。高校のjunior 後の夏休みには、大学が一斉にスカウトに動き始めます。
大学ごとに、公式ページで、リクルート希望者を募ります。既に大学から声をかけてもらっている場合でも、そうでない場合でも、このフォームに記入することで、スカウト希望者への正式なエントリーとみなされます。
ここエントリーシートには、SATやGPAなど学業面での情報に加えて、Hudlのリンクもしくは動画クリップをアップロードできるような内容となっています。コーチはこのシートを見ながら、誰をスカウトすべきかの作戦会議をするわけですね。
遠方の場合には、実際に大学が主催するキャンプへ参加して直接コーチとコミュニケーションを取ることが難しいかもしれません。その時のために、高校時代の試合のハイライトは、自身で動画編集をしてキープしておきましょう。
3.ハイライト動画の作り方
多くのハイスクールでは、試合の様子を録画撮影しています。例えば、私の息子がやっていたフットボールでは、Hudlというソフトがあり、そこにプレーごとに細かい動画として録画されていました。こうしたソフトがない場合には、いつどこで名プレーをするか分かりませんから、親か友人などにお願いして、試合の様子を、全録画してもらうことをおすすめします。
録画する際には、自分のアップではなく、できればフィールドの半分ぐらいが写る距離感がおすすめです。大学のコーチとしては、アスリートの表情を見たいわけではなく、試合全体の様子の中で、そのアスリートがどんなプレーをしたのかという全体像を把握したいのです。
ぜひ大学のコーチに見てもらいたいという動画を見つけたら、次はいよいよ編集です。複数の動画をつなげて1つにまとめるのが基本ですが、
- 音はナシ。お気に入りのミュージックをBGMにするのはNGです。
- 動画は長くても2分以内に収める事。大学のコーチは忙しいので、長編を作っても見てもらえません。
- ベストなプレーを最初に持ってくること。2番目にベストなプレーは2番目に。忙しいコーチは、最初の数プレーを見るだけで、だいたいの学生の才能レベルが分かります。
- チームスポーツの場合には、自分に〇とか矢印を付けて、どれが自分かを分かりやすく工夫しましょう。背番号だけを伝えても、大勢いる中で見つけることは大変です。
こちらは、私の息子のSophomore/Juniorの頃のハイライト動画です。ご参考までに。
ちなみにNCSAにアップロードするクリップは、このようにまとめたものではなく、一つ一つのプレーごとに異なるアップロード動画となっています。それを、大学のコーチが見てくれるという仕組みですね。
5.スカウトから入学までの流れ
スカウトから入学までの流れを、ザックリと説明しますね。
~ハイスクールJuniorの春
ここまでの時期は、大学のコーチが高校生をスカウトする時期です。声をかけて会話をし、「ぜひうちにおいでよ!」的なセールストークをします。ここでスカウトされても、正式なものではないため、1つの大学に絞る必要はありません。種まきは、多いほど良いのです。
この時期にしておくこと
- SATを受けてスコアをゲットしておく。
- とにかくGPAは高く維持する。
- コーチに見てもらう動画クリップの準備。
ハイスクールJunior4月~5月
大学のコーチから、より詳細なお知らせが入るようになります。
- 夏に主催するキャンプに参加しないかというお誘い→参加したほうが良いです
- リクルート希望のためのフォームへの記入を促される →オンラインで自主的に見つけることもできます
この時期にすること
- 夏のキャンプ計画。移動や宿泊の手配も。
- 候補になる大学は全て、オンラインでリクルートフォームに記入しておくこと。
JuniorとSeniorの間の夏休み

この時期は、アスリート奨学金を狙う人にとっては、とても忙しい時期となります。まず、進学しようかなと考えている大学が主催するキャンプには、できるだけ時間を作って参加しましょう。中には、飛行機で移動しなければいけない大学もあるかもしれませんが、価値はあると思います。
夏休みに入ると、コーチから学業成績についてチェックが入ります。
- SATスコア(ACTでも可)
- Report Card(Juniorまでの成績が掲載されているもの)
大学によっては、文武両立でなければ入学できないこともあり、そこから先のリクルートのプロセスを進めて良いかどうかを、ここでコーチが判断します。
もしも大学が求める学力基準に満たなければ、残念ながらコーチからの連絡はここで途絶えます。
また、大学への出願プロセスは、8月1日に解禁となります。早い人なら8月中に願書を提出し、9月には結果を受け取ることもできます。ちなみに、我が家は8月中旬に全ての書類が揃ったので出願しました。
大学の仕組みや出願方法については、こちらから
SATについてはこちらから
この時期にしておくこと
- キャンプへの参加
- 大学へ出願準備。エッセイなどがあり、結構時間がかかります。
- 高校の先生へ推薦状の依頼
アスリートはEarly Actionが原則
9月に入ると、いよいよ出願が本格化します。出願形態には、Early DecisionやEarly Action、Regular Decisionがありますが、コーチからは、基本的には第1位志望の大学ならEarly Decisionでの出願を勧められます。Early Decisionがない大学では、Early Actionを勧められます。
その理由は、倍率が低いからです。できるだけ合格しやすい条件で出願することで、自分にとってもコーチにとってもウィンウィンとなるわけですね。

コーチは合否に影響がある?
D1は、もしかしたらコーチが学生の合否に多大な影響を及ぼしているかもしれません。しかし、アスリート奨学金がないD3では、コーチは大学の合否には全く影響がありません。
息子は気に入った大学へEarly Decisionで願書を出しました。その大学では合格発表が一斉に行われたのですが、合格発表された時間から15分経った頃に、コーチから結果を知りたいと連絡がありました。おそらくそれで、アスリートを何人確保できたのかをカウントするのだと思います。
以下は、アメリカのハイスクールのフットボールをテーマにした作品です。もちろんフィクションですが、内容がリアルすぎて、ドキュメンタリーやノンフィクションだといわれても、私は信じますね。