アメリカ国籍を取得した人は日本で老後を過ごせるのか?

長い人生の中では、アメリカ国籍を取得した時には老後もずっとアメリカだと覚悟をしていたけれど、離婚や死別などいろいろなことがあり、老後はやはり住み慣れた日本へ帰りたいと希望する人も、少なからずいます。

そこで今回は、アメリカ国籍を取得した人は日本で老後を過ごせるのかについて、検証してみました。

目次

  1. 法的にはどうなる?
  2. アメリカ人の配偶者を連れて行くことはできる?
  3. 配偶者と共に日本へ移住する際の注意点

1.法的にはどうなる?

アメリカ国籍を取得した人は、自身で自主的に日本国籍の放棄手続きをしてもしなくても、法的には日本国籍がなくなります。

国籍法11条(国籍の喪失)

日本国民は、自己の志望によつて外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う。

この状態で日本へ帰国しても、あなたは外国人というステータスなので、何もできません。

そのため、

  1. 日本国籍を放棄する手続きをする
  2. 日本での在留資格を得るためのビザを取得する

という順序で手続きをします。

日本での在留資格にはいくつかの種類がありますが、私たちの多くは「日本人の配偶者など(実子)」というステータスが該当するのではないでしょうか。

もともと日本国籍を持つ元日本人だと、いくらか優先順位は高くなるという話も聞きます。

この在留資格ステータスでは、

  • 親の戸籍謄本、すでに亡くなっている場合には除籍謄本
  • 日本で生まれたことを示す出生届受理証明書(自身の除籍謄本に記載されています)
  • 費用面で問題ないことを証明できる書類
  • 身元保証人→日本で暮らす親族

が必要です。日本で働かなければ資格を得られないわけではありません。定年退職している人にとっては、この点はありがたいですね。

戸籍や除籍の謄本ぐらいなら簡単に入手できますが、身元保証人や費用面で必要となる書類は、ケースバイケースで難易度が上がる可能性がありますよね。そのため、問題なくスムーズに手続きを進めたいなら、弁護士に依頼することをおすすめします。

2.アメリカ人の配偶者を連れて行くことはできる?

アメリカ人の配偶者と共に老後は日本で、と希望している人は、自身の在留ビザの手続きをするのと並行して、アメリカ人の配偶者は「定住者」ビザの申請をすることになります。この方法だと一緒のタイミングで移住できるので、大きな安心感がありますね。

定住者の場合には、

  • 婚姻受理証明書
  • 銀行残高など経済的に自立していることを証明する書類
  • 身元保証書
  • 質問書
  • 夫婦間の交流があることを証明する書類

などが必要です。この場合、弁護士に相談しながら却下されないように準備するのが得策かもしれません。

3.配偶者と共に日本へ移住する際の注意点

配偶者と共に日本へ移住する際には、大きな注意点があります。それは、

  • 将来遅かれ早かれ訪れる相続
  • アメリカ国籍を放棄する際に発生するExit Tax

です。

海外でずっと働いてきた人なら、自身もしくは配偶者が海外から年金を受給することになるでしょう。海外の年金を日本で受給することは、問題ありません。

しかし配偶者が亡くなり、自身が遺族年金を受け取る場合には、大きな問題が発生します。

それは、海外からの遺族年金は相続税の免除にならないどころか、日本人の平均余命まで生きると仮定した上で受給金額を全て財産として計算され、そこに大きな相続税がのしかかるからです。

ちなみに、この海外資産にかかる相続税は、あなたの国籍は関係ありません。日本国籍を再取得していても、海外国籍のままでも、同じように課税対象となります。

この点は決して甘く見ずに、自身で対策を講じたうえで移住することを強くお勧めします。

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