日本の相続では、預貯金や不動産などプラスの財産を相続するなら、借金などマイナスの資産も相続しなければいけないというルールがあります。アメリカでも、基本的には同じような考え方です。しかし、預貯金も不動産もほぼすべてがジョイントと呼ばれる共同名義のアメリカでは、借金の取り扱いは若干異なっているようです。
目次
1.基本的には被相続人の財産で精算
借金や借入と言っても、どんなタイプの借入かによって、扱いは若干異なります。アメリカでは基本的に、自身の借り入れを配偶者や子供から強制的に取り立てることはありません。しかし死ぬ前に何か資産を持っていたのなら、そこから回収して精算されます。
アメリカでは誰かが亡くなると、その人がどんな資産を持っていたのかを検認という手続きで把握します。この期間内に、債権者(お金を貸していた側)は「返して欲しいです」と申告すると、亡くなった人が持っていた資産が返済に充てられることになります。
2.住宅ローンはどうなる?
もしも夫婦のジョイント名義で住宅ローンを組んでいる場合には、返済義務は残された側へ自動的に移行します。もしも亡くなった夫だけの名義で住宅ローンを借りていて、残された妻がそこで暮らしている場合には、夫の資産である住宅を売却してローンの返済に充てられることになり、当然ですが、そこで暮らす妻は追い出されてしまいます。
そうならないためには、住宅という不動産と住宅ローンという資産をどちらも妻が相続してローンを払い続けるという選択肢がベストですね。
「ちょっと待って、そんなの払えない!無理!」
となりそうな人は、とりあえず住宅ローンを返済できる金額の生命保険を相手にかけておくことをおすすめします。ふざけているわけでも冗談でもありません、アメリカ人の多くは、生命保険を使って住宅ローンの支払いを行います。
3.クレジットカードの借り入れは?
クレジットカードの残債も、名義がジョイント名義なら、残された側が支払うことになります。そのカードは夫しか使っていなかったという場合でも、ダメです。
ただしアメックスのように、共同名義ではなくてカードの契約者は一人で、配偶者や子供が「承認ユーザー」となっている場合には、話は別です。これは、ジョイントではないので、承認ユーザーに支払い義務は発生しません。
もしも亡くなった夫に相続できるような資産がない場合には、クレジットカードのローンは消滅します。ただし不動産や預貯金を残していたら、そこから精算されます。
4.学生ローンの取り扱いは?
公的な学生ローンは、本人の死亡によって消滅します。亡くなった人が資産をたくさん持っていたとしても、家族に支払い義務はありませんし、資産を使って返済する必要もありません。
ただし民間の学生ローンは、上記の住宅ローンやクレジットカードの借り入れと同じように、連帯保証人やジョイント名義になっていることが多いため、残された人に返済義務が移行します。
5.自動車のローンは?
自動車のローンも、名義によって支払い義務があるかどうかが変わります。もしも車の名義が亡くなった夫のみで、ローンがたくさん残っているので払いたくないという場合には、その車をローン会社に差し押さえてもらうと良いでしょう。
ローンの名義が亡くなった人のみということは、遺族が売却したくても勝手にはできませんよね。そのため、差し押さえさせて車を持って行ってもらい、後はご自由にどうぞ、というスタンスができます。
ただし、亡くなった夫の形見の車をそのまま乗り続けたいという場合には、ローンの返済を引き継ぐことで車も残された自分のものになります。
6.医療の未払いなどはどうすれば良い?
医療費は、医療機関の采配によるところが大きいようです。
もしも未払いの金額が少なければ、医療機関はあきらめて口座をクローズしてくれることがあるようです。死んだので回収不能、という事ですね。
しかし金額が大きければ、話は別。死んだ人が何か資産を持っているだろうと予測して、検認の際に回収に来るかもしれません。
その場合には、亡くなった人が持っていた預貯金や不動産などの資産を使って精算を迫られます。
7.ちなみに我が家は。。
ちなみに我が家は、プラスもマイナスもすべての資産がジョイント名義なので、私が先に死んでも、夫が先に死んでも、そのまま支払いは通常運転となります。夫の方が圧倒的に稼いでいるため、もしも彼が先に亡くなると残された私には経済的な負担が重くのしかかるわけですが、その時のために生命保険にはしっかり加入しています。