アメリカでは、相続や贈与に関してはとても良心的なルールです。アメリカで相続を受ける場合、控除枠が$13ミリオンと見たこともないような金額で設定されているので、庶民なら相続税と考える必要がありません。アメリカであまり相続税の話題が上がらないのは、大半の人が相続税とは無縁だからなのです。
しかも、配偶者間の相続なら、基本的には控除枠なしの無制限です。何十ミリオンを持っている人でも、また何十ビリオンを持っているような人でも、配偶者からの相続には相続税は一切かかりません。
でも、ご存じですか?この無制限というのは、相続を受ける側がアメリカ市民だった場合のみです。
「えっ?何それ?グリーンカード保持者はどうなるわけ?」
と心配になる方もいるでしょう。
グリーンカード保持者の場合には、若干ルールが変わります。その理由は、配偶者が亡くなって巨額の富を相続した直後に本国へ永久帰国なんてされるとアメリカとしては困るから、です。
それでも資産が庶民レベル&アメリカで暮らしている人なら、グリーンカード保持者でも市民と同等レベルの控除を受けられるので、大きな心配は必要ないでしょう。
心配したほうが良いのは、
- 夫婦がどちらもグリーンカード保持者の場合
- アメリカ以外の国で暮らしている場合
- 保有財産が2ミリオン以上ある富裕層の場合
です。
不動産の相続対象率が変わる
アメリカの不動産は、夫婦でジョイント、つまり共同名義になっていることが多いものです。共同名義の不動産は、夫婦のどちらもアメリカ市民の場合にはお互いに50%ずつの所有権と見なされます。専業主婦だから実質的にはすべて夫のお金で払っているとか、そうした事情は関係ありません。
例えば$500Kの不動産を所有しているなら、どちらの給料で家のローンを払っているかに関係なく、夫婦それぞれが半分ずつ$250Kずつ所有していると見なされます。
アメリカで暮らしているグリーンカード保持者の場合には、家の持ち分に関しては共同名義なら50-50です。この点は、アメリカ市民と同じですね。
ただし不動産評価額の半分相当の金額は、「相続」ではなく「アメリカ市民からグリーンカード保持者の妻へ贈与された」という扱いとなります。贈与税もアメリカでは控除枠が高いので、庶民ならそれほど心配する必要はないでしょう。しかし、無制限相続ではなくて贈与の扱いになってしまう点は、理解しておいた方が良いかもしれません。
また、アメリカに不動産を持っているけれど海外で暮らしているカップルの場合にも、注意が必要です。
上記の例に挙げた$500Kの不動産の場合、全額がアメリカ市民の資産だとカウントされます。グリーンカード保持者の資金をいくら投入したかを証明すれば、その分だけ相続資産から差し引いてもらうことはできるものの、証明できなければ共同名義でも100%がアメリカ市民の資産と見なされてしまいます。
じゃあどうする?
将来の相続のためにアメリカ市民権を取得する、という人はいるかもしれません。しかし、もしかしたら配偶者が帰国したら自分は日本へ永住帰国したいという人もいるでしょう。また、将来は何が起こるか分からないのでグリーンカード保持者のステータスを維持したい人もいると思います。
上記の通り、グリーンカード保持者でも心配したほうが良い人は、それほど多くないと思います。しかしどうしても不安な人や、すでに富裕層なので将来が心配でたまらないという人は、
- QDOT(Qualified Domestic Trust)を作成して相続税を回避する
- LLCを設立して資産はすべてそこへ投入 →LLCには贈与税がかからない
- 生命保険へ加入する →Irrevocable Life Insurance Trustなら贈与税を回避できる
もちろん、素人であれこれ悩んでいても最善策は出ないかもしれないので、外国人の資産管理に詳しい税理士やファイナンシャルプランナーに相談するのもおすすめです。