日本には、親子が上下関係というよりは友達のような関係で仲が良い「友達親子」が大人気です。親友のように何でも話すことができるこの関係は、親が子供に対して威圧的な態度をとらず、子供は親に対して恐怖心を抱くことがありません。
日本と比べて、親は威厳ある存在であることを重視する傾向にあるアメリカでは、この友達親子は、どこまで浸透しているのでしょうか?
目次
1.アメリカにおける友達親子の実態
アメリカにも、友達親子はいます。しかし親子関係は上下関係であるべきだと信じる人が多いからでしょうか、友達親子の関係を築いている人はそれほど多くありません。中には「そんな関係。。」と否定的な人もいます。
アメリカの市場調査によると、アメリカで暮らす親の約40%程度は、子供と親友のような関係を築きたいと考えています。そしてその多くは、子供が成人してからも実家暮らしを続けることに対して、否定的ではありません。
子供にできるだけ快適な生活環境を提供しようと、子供におねだりされたわけでもないのにモノを買い与えることも少なくありません。私はこれを書きながら、まさに自分のことだと思っております。
親が「子供の親友になりたい」と思っている一方で、子供はそんな親をどう見ているのでしょうか?
実は子供自身も、約半数は親のどちらかを「親友の一人」だとみなしているのだそうです。そうなると、子供にとっては家庭がとても居心地の良い空間となり、時間がある時にはできるだけ家にいたいと感じたり、成人しても親と同居する選択肢があるのなら、迷わずに同居を選ぶことが多くなるのだとか。
2.友達親子のメリット

友達親子には、たくさんのメリットがあります。日本では、子育て専門家の尾木ママも、この友達親子の育児方法を称賛されてましたね。
- 子供の反抗期が軽減される(親が子供の気持ちに理解を示すため)
- 親は、子供の社交や生活環境を把握しやすい(子供が臆することなく話してくれる)
- 子供の親に対する不満が減る
- 親は、子供が言うことを聞いてくれるので精神的に楽
ぐらいでしょうか。友達親子の関係を築いている人のほとんどは、その関係に満足しているという点もまた、友達親子の特徴ですね。
3.友達親子のデメリット

友達親子には、デメリットもあります。日本では友達親子に対して賛成派と反対派がきっぱり分かれる傾向にあり、賛成派は約40%程度なのに対して、反対派は30%もいて、賛成派と同じぐらい反対の人もいます。その理由は、
- しつけができない(親に威厳がないため)
- 子供の精神的な成長を妨げる
- 反面教師で学べない
この点は、アメリカの専門家の多くも口をそろえて指摘する部分です。アメリカでは、親は子供の上に立って指導するべき存在という考え方が根付いており、子供に対して毅然とした態度で対応する人が、とても多いです。そして、そうあるべきだと信じている人も多いですね。
その人たちの考えは、「親は子供と同等の立場ではないのだから、友達になる必要はない。子供は友達を家の外で見つけたらよい。親は親、友達は友達。同じではない。」というものです。
専門家も、親が子供の親友になってしまうと、子供が悪いことをしても、その気持ちを理解して受け入れてしまい、正しい方向へと導くことが難しくなってしまうと指摘しています。例えば未成年の飲酒でも、威厳のある親なら、「未成年なのだからダメ」と言うでしょうけれど、友達親子だと「外はダメだけど家の中でならOK」と許可を出してしまうかもしれません。子供の「ルールに従う」スキルが育たないという点は、確かにデメリットですね。
また親子間に一定の距離があると、子供は成長過程の中で、親の悪い面を見たら「自分はそうならないように」と反面教師で学ぶ経験をするでしょう。しかし友達親子の場合には、親の悪い部分を見て、そのまま受け入れて真似をしてしまう子が増えてしまうのだそうです。
4.アメリカで増えている友達親子
専門家からは批判的な意見が多い友達親子ですが、アメリカのミレニアム世代の子は、両親と友達親子となるケースが多いようです。その理由はずばり、ヘリコプターペアレンツやブルドーザーペアレンツがそのまま友達親子になることが多いから。私も多分、このタイプだと思います。
ヘリコプターペアレンツやブルドーザーペアレンツについてはこちらから
アメリカは車社会ですし、子供が一人で近所の公園に歩いていくだけでも親が逮捕されるので、基本的に親は子供が中学生ぐらいの年齢になるまでは、四六時中べったりと張り付いています。その中では、子供にあれこれ言う大人に対して、子供の代わりに戦うこともあるでしょう。これ、ヘリコプターやブルドーザーの特徴ですね。
そうした生活が続くことによって、子供にとっては親は一番のよき理解者となります。そしてその関係が少しずつ友達親子になっていくのかもしれません。
威厳のある育て方をした場合にはどうなる?
私の周囲には、子供に対して威厳のある子育てを貫いた友人が何人もいます。彼女たちは、子供がお願いしても間髪入れずNOと言い、子供が「どうして?」と聞けば「Because I Said so!」と言っていました。
この育て方が良いか悪いかは、私が判断することではありません。しかし多くの場合、親は自分よりも上の立場にいる存在だとだと認識して育ちます。その上下関係を受け入れて、ルールを守る人間に成長する子もいましたし、子供が高校を卒業すると同時に家を出た子もいましたね。
多くの家庭に共通しているなと感じたことは、子供が18歳の段階で精神的にかなり大人だったという点です。自分は成人だと自覚して、親とは異なる考え方と価値観で行動しようと考えている子が多かった気がします。
5.アメリカの専門家が友達親子に否定的な理由
アメリカの専門家が、この友達親子に対して否定的な理由は、ほかにもあります。それは、アメリカは「成熟した文化」なので、子供がいつまでも子供の気持ちを持ち続けることは、必ずしも善ではありません。子供は成長したら早く独立して、大人としての責任と自覚をもって生活するべきだという考え方が根付いています。
友達親子だと、子供は大人になっても快適な実家から出たいと思わないでしょう。実家にいる限りは、子供が何歳になってもヘリコプターペアレンツが守ってくれるので、大人としての責任を実感する機会は減ってしまいます。この点が問題だと、専門家は指摘するわけですね。
実は私の息子も、そろそろ大学を卒業する時期が近付いており、就職先を模索しています。友達親子だった息子は、就職先は実家のそばが良いと言っておりました。
でも私は、子供には世界を見てたくさんの経験をしてほしいと思っています。なので、「獅子は子を谷へ突き落す」戦法に切り替えて、遅ればせながら子供の自立を応援している次第です。