日本では、銀行口座の名義は1口座につき1人というのが基本です。夫婦だからと言って、普通預金の口座が夫と妻の共同名義になることは、ありませんよね。しかしアメリカでは、Joint口座がとても一般的です。
ここでは、どんなものにJointが適用できるのか、自身だけの名義で口座を作る場合と比較して、どんなメリットとデメリットがあるのかをご紹介します。
目次
1.Joint Accountとは?
Joint口座(ジョイント口座)とは、1つの口座の名義が1人だけではなく、複数の人が共同で共有している口座のことです。ジョイント口座は夫婦が銀行口座とかクレジットカードを持つ際に使われることが多いですが、その他にもいろいろなところでジョイントがあります。アメリカでは、夫婦がジョイントで口座を持つことが一般的で、夫婦ともに収入がなければいけない、といったルールはありません。
ジョイント口座は、Primaryとなる人と、Secondaryとなる人とで、一応の順位付けがあります。複数の人が一つの口座を共有していると、誰かが勝手に口座を解約するとか住所変更しても他の名義人が知らない、なんてトラブルが起こりかねません。そうしたリスクを回避するために、基本的には手続きできるのはPrimaryのみと限定されているのが一般的です。
夫婦でジョイント口座を持つ場合、夫がPrimaryで妻がSecondaryになることが多いです。私も、以前はそうでした、しかし、我が家では家庭の中で役割分担が決まっていて、お金の管理をするのはすべて私の役割りです。ローンの借り換えとか住所変更など、こまごまとした手続きもすべてが行うわけですが、その度に「あなたはPrimaryではないので、この手続きはできません」と言われるのが、本当に不便でした。
なので、現在は、世帯の生活を支える大黒柱の夫ではなく、収入が全く安定していない妻の私が、ほぼすべての口座でPrimaryとなっています。そのおかげで、業者や金融機関に電話をかけても、夫にお願いする必要なくすべての手続に私一人で対応できます。
2.どんなものがJointにできる?
ジョイント口座にできるものは、たくさんあります。上記した銀行の口座はもちろんですが、他にも
- クレジットカードの名義(口座はジョイントでも、カードはそれぞれの名前で発行してもらえます)
- 車や家のローンの名義
- 税金の申告(Tax Filing:Tax Returnと呼ばれることもある)
つまり、プラスの財産もマイナスの財産も、「名義」が必要なものなら大抵は、ジョイントにできます。
3.誰とでもJointにできるの?
ジョイント口座を作ると、その口座内の資産はプラスの者でもマイナスのものでも、名義人のものとなります。例えば銀行口座なら、名義人なら誰でもその口座内の資金にアクセスできるので、預金したり引き出したり、クレジットカードの引き落とし口座にすることも可能です。
ほとんどの場合、ジョイント口座は結婚している夫婦とか、事実婚のパートナー、その他親子や親戚、ビジネスパートナーなど、お互いに信頼できる間柄で作ります。
例えば結婚している夫婦なら、独身の頃から使っている自身のみの名義の口座はそのままキープして、家賃や生活費を支払うための口座をジョイントにして、毎月のお給料からそこにお金を入れて一緒に使う、と言った活用方法があります。
また、アメリカでは高校生ぐらいから自身名義の銀行口座を持つことができます。しかし成人年齢の18歳に満たない高校生では、単独名義で口座を作ることはできません。そのため、親と子供でジョイント口座にするという方法もあります。
我が家でも、子供が高校生の時に、これからのカード社会では、カードの使い方やお金の管理方法を学んでほしいと思い、ジョイント口座を開設しました。そしてお小遣いはその口座へ定期的に入金し、子供はデビットカードを使って支払をしていました。
4.Joint Accountのメリット
資産の名義をジョイントにする事は、たくさんのメリットがあります。
- 各人の口座をそれぞれ管理するよりも、ジョイントとして一つにまとめることで管理しやすくなる
- 名義人の一人が死亡しても、口座は凍結されない
- 名義人の一人が死亡しても、遺産相続の対象にならない
- 毎年の税金をジョイントで申告すると、税金面での優遇措置を受けられる
- 相続税の対象とならない

ジョイントとして一つにまとめることで管理しやすくなる
夫婦でジョイント口座を作るなど、同一世帯でジョイント口座を作ると、一つの口座を共同管理できるようになり、お金の管理がしやすくなります。また、ビジネスパートナーとジョイント口座にすれば、業務上の入出金の流れをお互いに把握しやすくなるというメリットもあるでしょう。
名義人の一人が死亡しても、口座は凍結されない
例えば、夫婦のどちらかが死亡した場合、銀行口座がジョイントなら、ほとんどの場合には、その口座が凍結されることはありません。これは、金融機関が”Right of survivorship”というシステムを採用しているからですね。
日本では、口座の名義人が死亡すると、全ての資産が遺産相続の対象となるため、銀行口座はしばらく凍結されます。同一世帯の配偶者といえど、簡単にお金を引き出すことができなくなってしまい、場合によっては大きな経済的な負担や精神的なストレスになってしまいますよね。
アメリカでも、口座名義がジョイントでなければ、遺産相続の対象となります。口座の凍結もあるでしょう。しかしジョイント口座なら、夫婦のどちらかが亡くなっても口座凍結はなく、口座の残高はすべて、他の名義人(この場合ならSurvivor)の資産と見なされます。
遺産相続の対象にならない

ジョイント口座を持っていて、名義人の一人が亡くなった場合、口座内の資産はすべて、他の名義人の資産と見なされます。夫が働いて妻が専業主婦という家庭で、もし夫が亡くなった場合には、夫婦で持っていたジョイント口座の資産は、法律上は妻の財産とみなされます。そのため、遺産相続の対象とはならないのです。実際にその口座へ資金を入れていたのは亡くなった夫だとしても、ジョイント口座である限り、妻の資産となります。
例えば、子連れ再婚した夫婦がいたとして、夫が再婚した妻、そして前妻との子供を残して亡くなったとします。もしも夫婦でジョイント口座を持っていたら、口座の所有権および資産は、全て妻のものです。一方、夫が前妻との間にできた子供とジョイント口座を持っていたら、その口座内の資産は、全てジョイント名義人である子供のものとなります。
ジョイント口座は、法的な親族関係になくても、作ることはできます。つまり、家族に内緒でこっそり愛人がいる人だと、愛人とジョイント口座を作ってそこに一定額の資産を入れておけば、万が一の時には、ジョイント口座の資産は愛人のものとなります。家族から返却要求を受けても、ジョイント口座が愛人を守ってくれるというわけです。
税金面での優遇措置
毎年2月から始まるTax Filingでは、夫婦はそれぞれ単独で申告するか、それとも共同で申告するかを選択できます。世帯で同じ金額の収入があっても、単独でそれぞれが深刻する場合と比較すると、夫婦で共同申告したほうが、大きな節税効果を得ることができます。
相続税の対象とならない
ジョイント口座は、親子間やビジネスパートナー間で作ることも可能です。名義人が亡くなった場合でも、資産はジョイント口座の他の名義人のものとみなされるため、そこに相続税は発生しません。
アメリカでは、親子間の相続や配偶者間の相続に関しては、日本と比較してずいぶんフレンドリーな相続ルールとなっています。相続する資産が1,000万ドル(10億円程度)以上なければ、相続税はかかりません。つまり、私のような庶民は、相続税の心配をする必要が鼻からない、というわけですね。
もしも資産が1,000万ドル以上の場合、相続税は最高で40%がかかります。富裕層にしたら、相続資産の半分近く持っていかれることは大きな損失です。しかし、もしも相続税がかかるべき金額でも、口座がジョイントなら、それは相続税の対象外となり、税金は発生しません。
5.Joint Accountのデメリット
一方、ジョイント口座には、デメリットもあります。普通に生活しているうえでは、あまりデメリットを感じることはありませんが、いざという時のために、どんなデメリットがあるのかを知っておきたいものです。

1人で勝手に作ることはできない
ジョイント口座を作る際には、名義人全てが一堂に会し、それぞれが口座開設のための書類に記入しなければいけません。例えば夫婦の場合には、どちらかが勝手にジョイント口座を作ってしまう、ということは難しいわけです。
近年では、ネットで簡単に金融機関の口座を開設できます。そのため、口座開設のために必要な情報や書類が手元にあれば、勝手に開設することは、物理的には可能かもしれません。しかし、夫婦と言えど相手が知らない所で勝手に口座を開設するというのは違法となるので、行わないようにしてくださいね。
また、店舗に足を運んでジョイント口座を開設する場合には、必要書類を持って全員で窓口に行かなければいけません。
相続でわだかまりが残る可能性あり
ジョイント口座は、時として相続の際にわだかまりを残す可能性があります。例えば、再婚相手と全ての資産をジョイントにしてしまうと、自身が亡くなった際には、全ての財産が無条件で再婚相手のものとなります。前配偶者との間に子供がいる場合でも、残念ながら子供に相続してもらえる財産はゼロとなってしまいます。
また、愛人と作ったジョイント口座にまとまった資金が入っていた場合、家族は返還要求をしても認められないことがほとんどです。
トラブルが起こりやすい
例えば、夫が稼いできた収入を、ジョイント口座を持っている専業主婦の妻がすべて浪費したとしたら、どうなるでしょうか?そうしたトラブルは、ジョイント口座ならでは起こるものですし、実際にジョイント口座の浪費が原因で離婚となった夫婦も少なくありません。
負の資産から逃げられない

ジョイント口座は、銀行預金や投資口座などプラスの資産だけではありません。家や車のローンをジョイントにした場合、相手が亡くなったら残債はすべて自分の肩にのしかかってきます。夫に先立たれた専業主婦が、家のローンや車のローンを払えない可能性は十分にあります。
いかがでしたか?とても便利なジョイント口座ですが、万が一の時には大きなトラブルになってしまうリスクはあります。理解した上で、ジョイントにしてくださいね。