日本の義務教育では、飛び級もなければ留年もありません。天才的に頭が良い子でも、自身の学年を飛び越えて一つ上の学年に進級することは、認められていません。留年も同じです。劇的に何も理解しなかった子でも、義務教育なら進級はできます。
しかしアメリカでは、学年の概念が日本よりもフレキシブルです。そのため、留年もあれば飛び級もあります。クラスの中に1つ年上の人がいたり、年下の子がいたりしても、不思議ではありません。
目次
1.飛び級とは?
飛び級(Acceleration)とは、自分がいるべき年齢よりも上の年齢のクラスで授業を受けるという制度です。学校によっては、学年そのものを底上げして、本来なら7年生なのに8年生や9年生に進級できるケースもあれば、得意な教科だけ飛び級の扱いにするケースもあります。
飛び級は、アメリカでは古くから存在している制度です。ニュースなどでも、11歳の子供が大学を卒業しました、なんていう天才少年少女の話題がたまに上がりますが、これは飛び級のシステムによって、学年がどんどん上がったことによって起こることです。
飛び級に対しては、子供も保護者も賛否両論です。学問を学ぶ問部分にだけ焦点を当てるなら、飛び級は効率的に自身のレベルにあった内容を学べるという点で、メリットです。しかし自身よりも年齢が上の子供たちに混ざることによって、社交性や性格形成の面にも多少の影響はあるでしょう。そのため、飛び級を打診されても断るケースもたくさんあります。
2.Gifted and Talentedでは何をする?

飛び級ではないけれど、勉強が得意な子供のために提供されているカリキュラムと言えば、Gifted and Talentedプログラムがよく知られています。これは州もしくはISDが提供する試験を受けて、一定ラインを超えると認定され、Gifted and Talentedから提供されているプログラムを受ける権利が与えられるというものです。
これは、一度認定されるとハイスクールを卒業するまでずっとその資格を維持できるという特徴があります。
小学校からハイスクールまで存在していますが、学校によって具体的にどんな対応をするかは多種多様です。
息子は、小学校3年生の時にこの認定を受けました。どんな素晴らしいプログラムを経験できるのか、親の私の方がワクワクしていましたが、結局何もないまま、学年は終わりました。その学校では、人員不足という理由で、認定はするけれど特別なことはしないという方針だったようです。
ミドルスクール以降になると、Math BeeとかSpelling Beeなどアカデミックな競技大会へ参加する資格を得ることができました。ただしこれも、認定されている生徒全員が参加できるというわけではなく、学校ごとにアカデミッククラブ的なものがあり、そこに自主的に入部して参加しなければ競技大会へは参加できません。息子の場合、掛け持ちができないフットボール部に所属していたため、こうしたアカデミックなイベントとは無縁でした。
3.留年とは?
留年と聞くと、日本人の私たちにとっては、落第の烙印を押されたような気がして、とてもネガティブに受け止めてしまうかもしれません。しかしアメリカでは、留年は日常茶飯事に起こりますし、必ずしもアカデミックな原因で落第するとは限りません。
例えばキンダーぐらいの年齢に多いのは、英語を母国語としない子供たちの留年です。ESLで学びながらキンダーを2年リピートすることで、学力的にも語学的にも飛躍的な成長が期待できます。
そのほかにも、キンダーをあえて1年遅らせることで子供の学校での理解度を高めたいと考える親はたくさんいます。こういう理由の場合には、早い学年での留年を決意するケースが多いです。
ミドルスクールやハイスクールになると、授業で赤点だったことが理由の留年が多くなります。しかし多くの場合には、留年しないように学校がサマースクールなるものを実地して、生徒のサポートをします。息子が通っていたハイスクールでも、赤点で学年を終えた留年候補生は100人以上いたものの、サマースクールのおかげで実際に留年するのは0人か1人ぐらいにまで抑えられていました。
また留年の場合には、年齢制限が設けられていることが多いです。ハイスクールなら20歳以上はNG、などのルールがあるので、何回も留年を繰り返して年齢が上がりすぎてしまうと、高校の卒業はあきらめてGEDなど高校卒業と同等の資格を得られる試験を受験するという方法を選択することになります。
4.こんなケースがありました
飛び級と留年は、これまで私もごく普通に見てきました。1年程度の留年や飛び級は全く珍しくなく、話題にすらならないことが多いですね。そんな中で、少しユニークな例をいくつかご紹介しましょう。
3年の飛び級、そしてVerdictorian



息子のハイスクールの同級生に、3年飛び級している天才的な女子がいました。たまたま同じストリートに住んでおり、何度か顔を合わせたことはあります。
この彼女、3年の飛び級でもまだ伸びしろが多かったらしく、なんとハイスクールをVerdictorian(最優秀生徒)として卒業し、本来ならアカデミックな奨学金を出さないアイビーリーグの大学へ、フルライドと呼ばれる全額奨学金待遇で進学しました。
少年院へ送られ、時間切れ
息子のハイスクールのフットボール部に、2年年上の先輩がいました。彼は在学中に車の窃盗で逮捕され、そのまま少年送りとなってしまいました。少年院に入っていたのは1年程度だったのですが、彼はキンダーのころに1年すでに留年をしており、しかもミドルスクールでも留年した経験があったのです。その結果、少年院から戻ってきてハイスクールを修了することは年齢制限に引っかかるためにNGとなってしまいます。そのため、少年院に入った時点で退学の扱いとなりました。
ミドルスクールの試合に車でやってきた選手



アメリカでは、ハイスクールで自動車の免許を取得できます。しかし留年している生徒の場合には、ミドルスクールでも自動車の免許を持っているケースはあります。
息子がミドルスクールだった頃、フットボールの試合で少し離れた町へ行った時のことです。1台の車がフィールドのすぐ隣に駐車し、中から降りてきたのがミドルスクールの子供だったのです。どうやら試合の直前に自宅へ何かを取りに帰ったらしく、試合の恰好をして車から降りてきました。
今となっては全く驚かない光景ですが、最初にその光景を見た時には驚愕でした。