アメリカには、日本の常識とは全く違う常識があります。特に子供に関しては、私たちが日本人として持ち合わせている常識とか親切心で行ったことでも、アメリカでは「余計なお世話」「するべきじゃない」「犯罪者の疑いあり」とみられてしまうことがあるかもしれません。
目次
1.事件は、街のお祭りで起きた

アメリカでは、人口1,000万人ぐらいの規模の町なら年に1回か2回ほど、Fairと呼ばれるお祭りが開催されます。これは簡易遊園地みたいなもので、ショッピングモールの駐車場のような広い場所に、子供向けのアトラクションがずらりと設置されて、子供たちが楽しく遊べるというものですね。
ちなみに、当たり前ですがアトラクションは有料です。
息子が2歳の時、私たちはカリフォルニアに住んでいました。それまでFairなるものに足を運んだことがなかった私は、ワクワクしながら夫と息子と3人で足を運びました。
Fairに設置されるアトラクションの多くは、小さい子供が喜びそうなものばかりです。子供だけで乗せる親もいますし、親が一緒に乗ってもOKな乗り物もたくさんあります。息子が乗りたいと指さした乗り物は、子供だけでもOKかつ親と一緒でもOKな乗り物で、私たちは家族で乗ることにしました。乗り込んだら、係の人がシートベルトを締めてくれました。
アトラクションが終了すると、私は自身のシートベルトを外して隣にいた息子のベルトも外し、降りようとしました。
その時、後ろから子供の泣き叫ぶ声が聞こえたのです。
2.親切は犯罪?
振り返ると、息子と同じぐらいの年齢の女の子が、どうやら降りたいのにシートベルトを外すことができず、しかも他の人はほとんど降りてしまったため、パニックになって泣き叫んでいたようでした。
あたりを見ると、係員は次の乗客のチケットを確認する作業で忙しく、誰も助けに来ません。
私は、余計な親切心を出してしまい、「大丈夫?」とその子に聞きました。するとその子は泣き叫びながら「外せない!」というのです。そのまま泣く子を放置して降りてしまうこともできましたが、その子のシートベルトを外すことぐらい大したことではないと思い、私は外してあげました。
今から考えると、おそらく私自身の危機管理が十分ではなかったのでしょう。今もし同じ状況になったならきっと、あなたの親がすぐ来るよと告げ、私はそのまま自分の家族と共に降ります。
しかしその時の私は、助けるのが親切だと思ったのです。
その後、私達は乗り物の台から地面へ伸びる階段を下りたのですが、その階段がけっこう急でした。夫がちょうど階段の所で息子を抱っこしてくれたので、私はその後ろからバランスを取りながら降りました。
その時真後ろで、さっきの子がまた泣き叫んでいます。振り返ると、怖くて降りられないから抱っこしてくれ的なポーズで、両手をあげて私を待ってます。
「へ?」
と思いました。階段が急だから怖いのだろうという事は分かりましたけれど、知らない子を抱っこするのはちょっとな、と思ったので、私は手を貸すことにしました。その子は私の手を握って階段を下りました。
地面まで降りたところで、私はその子に聞きました。
「パパかママのところに行ける?」
そしたらその子は「サンキュー」と言って親のところに走っていったようでした。親の所へ無事にたどり着いたかどうかまでは確認せず、私は夫と息子と歩き出しました。
その数秒後、なんとその親に呼び止められたのです。
びっくりしました。
おそらく、一緒にアトラクションに乗らずに外で待っていた両親は、娘が見ず知らずのアジア人の手を握って降りてきたものだから、誘拐犯かと思ったようでした。
私は憤慨しました。人の親切に対して誘拐犯とは何事だ!と思い、ワナワナしました。
その時は、一緒にいた私のアメリカ人夫がその子の父親に「お宅の娘が泣き叫んでいたので、私の妻が親切心でシートベルトを外してあげたんだ。階段を降りる時には手を貸したんだよ。見ろよこの階段、小さな子だと落ちそうだろ?」
というと、その子の父親が状況をようやく理解したらしく、「娘を助けてくれてありがとう。感謝します。」といって立ち去っていきました。
3.知らない子供に触れることはハイリスク



アメリカでは、誘拐が日常茶飯事に起こっています。それだけでなく、子供への性的いたずらを目的とした犯罪などもたくさんありますし、性犯罪や臓器売買目的の誘拐も多いです。子供から一瞬でも目を離したすきに子供がいなくなってしまうと言っても、大げさではありません。だから親は皆、子供の体に誰かが触れることに対してとても警戒します。
もしも私たちが親の立場でなくても、他人の子供に対しては、犯罪者だと勘違いされるような行動をしないように気を遣います。見ず知らずの子供に対しては、どんな行動のどの部分が切り抜かれてイチャモンを付けられるか分かりません。だから大人の方から、基本的には身体的な接触を全力で避けます。
(その子の親が目の前にいる状況でハイタッチをするとか、そういう接触はもちろん別です)
ハグやスモールトークが当たり前、とてフレンドリーなイメージがあるアメリカですが、そうした犯罪も多い国だからこそ、見知らぬ他人への警戒はもひときわ強いのかもしれません。