国籍喪失後のトラブル、どんなケースが考えられる?

アメリカ市民権を取得すると、日本国籍は自動的に喪失します。それが法律です。

でも、日本へ国籍喪失届を出さないと、日本では私たちがアメリカ国籍を取得したことを知るすべがないので、戸籍謄本には何も記載されない状態となってしまいます。

もしも、アメリカ市民権を取得したのに日本へ国籍喪失届を提出せずにいた場合、将来はどんなトラブルになる可能性があるのでしょうか?

国籍喪失届に関する情報はこちらから (リンクは在アメリカ日本国大使館のものですが、各日本総領事館でも手続きできます)

国籍喪失=外国人になる

国籍喪失届を提出してもしなくても、私たちはアメリカ市民権を取得した瞬間に、日本国籍を失います。つまり、記録上はまだ戸籍が残っていたとしても、私たちは「外国人」「元日本人」となってしまいます。

そのため、日本へ3か月以上滞在するのなら、ビザが必要となります。

元日本人でも、関係ありません。必要です。

国籍喪失後の手続きは全て削除

国籍喪失届が出ていないと、役所に管理されている戸籍謄本はそのままの状態です。

そのため、子供が生まれて出生届を提出したり、戸籍を別の場所へ移す転籍をしたりした場合、役所では手続きが受理される可能性は十分にあります。

だって、役所はあなたが日本国籍を喪失した事実を知らないわけですから。

しかし、受理されたからOKというわけではありません。

数年後、家、数十年後に国籍喪失の事実が分かると、役所では過去にさかのぼって記録を訂正します。

そして、日本国籍喪失後に行った手続きの種類によっては、記録が削除される可能性も高いので注意が必要です!

子供の出生届が消えた?

日本国籍を喪失した後に出産し、子供の出生届を日本へ提出したとしましょう。

役所側では、上記の通り、国籍喪失の事実を知らないので、そのまま出生届は受理されるでしょうし、子供は日本国籍を取得し、日本のパスポートを手に入れることができるでしょう。

しかし、後からあなたの日本国籍喪失の事実が発覚したら?

残念ながら、国籍喪失後に提出した子供の日本国籍は削除されてしまいます。

元日本人(つまり外国人)が生んだ子供は、日本国籍を取得できないからです。

持っていたバスポートも無効です。

子供の出生届に関する地獄を経験したくない人はこちらをどうぞ

日本から出禁を言い渡されることもある

しかも、その時に親子で日本に滞在していたとしたら、滞在ビザを持たない外国人が不法に日本に滞在、つまりオーバーステイとして、強制送還される可能性も高いです。

オーバーステイによる強制出国だと、日本から出禁の刑を言い渡される可能性もありますね。一般的には5年から10年の出禁です。

出入国在留管理局はこちらから

そうなると、、、、親の最期にも駆けつけることができません。

国籍喪失後の戸籍手続きは原則的に全て無効

国籍喪失後に提出した戸籍関連の手続きは、例えその場で受理されたとしても、後から戸籍喪失日まで遡って全て無効の扱いとなります。

そのため除籍謄本を請求する際には、国籍を喪失する直前の本籍地から取り寄せなければいけません。

除籍謄本と戸籍謄本の違いとは?

アメリカ市民権を取得しても、戸籍はなくなりません。呼び方が変わって戸籍謄本ではなく除籍謄本となるだけです。ここでは、取得方法や違い、知っておくと便利な豆知識をまとめています。

コロナ禍で増えたのか、それともトランプ政権になってから増えたのかは知りませんが、近年では「アメリカ市民権を取得したけれど、日本国籍の喪失届を出していない」人が、正式に国籍喪失届を提出するケースが増えていると聞きます。

ご存じの方は多いですが、アメリカ市民権を取得した瞬間に、日本の国籍は勝手に喪失します。

国籍喪失届を提出してもいなくても、喪失するわけですけれど、日本側に正式に届出を出さなければ、日本側は知る由がないので、戸籍謄本などには何も記載されません。

それでは、国籍喪失届を提出したら、自分の戸籍はどうなってしまうのでしょうか?

結論から言うと、戸籍はしっかり残ります!

安心してください。これまでの戸籍謄本に「国籍を喪失しました」という一文が追加され、「除籍」の扱いとなります。

でもね、除籍でも役所では150年間は保存してくれるので、私たちが生きている間に困ることはありません!

もしも年金や相続の申請などで戸籍謄本を持ってこいと言われたら、戸籍謄本ではなく除籍謄本を提出すれば良いだけです。

謄本の名前が変わるだけ

除籍謄本と言われると、なんとなく面倒で複雑な感じがしますけれど、書類の呼び方が変わるだけです。

本籍がある役所で発行してもらえるのは、戸籍謄本と同じですね。

発行手数料が、戸籍謄本よりも除籍謄本の方が高い自治体が多くて、戸籍謄本は450円なのに対して、除籍謄本だと750円だったりします。

戸籍謄本でも除籍謄本でも、日本の正式な法的書類として使うことができますし、もしもアメリカ側へ提出するのなら、アポスティーユでもつけておけば問題ありません。

ちょっと豆知識

アメリカの場合、書類にアポスティーユをつけておけば、自分で英訳&宣誓書を添付したものを公的な機関に提出しても、認められるケースが多いです。

国によっては、英訳もライセンスを持ったプロに依頼しなければ有効でないとか、発行されてから有効期限が3か月以内でなければダメ、という厳しいルールとなっている所もあるようです。

アメリカでも、きっと場合によっては発行ホヤホヤな除籍謄本にプロ英訳をつけたものを持ってこい、と言われることがあるのかもしれません。

でも一般市民のルーティン的な手続きの場合には、役所や担当者によってケースバイケースのようですけれど、DIY英訳でもOKなケースが多いと聞きます。

しかも、アポスティーユ自身には有効期限はないので、アポスティーユした除籍謄本を何通か自宅に保管しておき、必要な時に英訳と宣誓書をつけて提出するという事も可能かなと思います。

アメリカ市民になったら日本国籍を放棄!どんな手続きが必要?

アメリカは二重国籍を認めています。しかし、日本は認めていません。国際結婚などで生まれた時に自動的に日米の国籍を取得した人は例外ですが、アメリカに来てから自分の意志でアメリカ市民になった人は、日本国籍がなくなります。

目次

  1. みんなも知ってる通り「二重国籍はNG」
  2. 黙って二重国籍だと何が起こる?
  3. 国籍喪失の手続き方法

1.みんなも知ってる通り「二重国籍はNG」

法律によると、アメリカ市民になったら自動的に日本国籍がなくなるとのこと。しかし実際には、自分で国籍離脱の手続きをしなくても、公的機関から「あなたアメリカ市民ですよね?日本国籍なくなりましたよね?」なんてお知らせがくることはありません。

だからと言って、沈黙を守ればバレないぞ、ということを言ってるのではありません。これは違法行為となって処罰の対象となります。おそらくにアメリカの警察官とか日本大使館の人が自宅にやってきて逮捕されるなんてことはないでしょうけれど、万が一何か罪を犯した時には、二重国籍を黙って持ってたという刑が追加される可能性は十分にあるでしょう。

日本大使館のサイトを見ても、

自己の意思で米国市民権を取得した場合は、その時点で日本国籍を失いますので二重国籍とはなりません。このことを知りながら既に取得した日本のパスポートを使用したり、新たに日本のパスポートを申請した場合は処罰の対象となります。

アメリカ合衆国日本国大使館Webサイト

と明記されています。

ちなみに、日本国籍を放棄する際には2種類の手続き方法があり、

  • 国籍喪失届→すでにアメリカ市民権を持ってる人が行う
  • 国籍離脱届→生まれた時から二重国籍の人が行う

という違いがあります。

2.黙って二重国籍だと何が起こる?

アメリカ市民権を取得したときには、誰も「次は忘れずに日本国籍を離脱してくださいね」なんてアドバイスはもらえません。自分で速やかに国籍喪失届を出せば問題ありませんが、方法が分からず放置した場合でも、持っていた日本のパスポートが有効期限切れとなり、アメリカ国内で更新はできなくなります。

だって、市民権を取得したときにグリーンカードは回収されるため、アメリカ国内で日本のパスポートを更新する際に提示しなければいけない「合法的にアメリカに滞在している書類」がありませんから。

そのため、日本へ里帰りする際にはアメリカのパスポートを使って外国人として入国することになります。

だから必然的に、その後はアメリカ人として生活することになるわけですね。アメリカ国内で日本のパスポートを更新したり、日本の海外在住者向け行政サービスを受けることもできなくなります。ま、自分の意志でアメリカ市民権を取得したのですから、それ以降に日本のサービスを受けようと思うなよ、ということなのでしょう。

また日本の親からの相続が起きた時にも、日本の代行サービスを利用できないことが多いです。その理由は「二重国籍は違法ですよね?」だから。

海外にいても日本からの相続はできますが、その際にはその国に合法的に滞在している証明書を提示して、大使館で書類を発行してもらう必要があります。アメリカの場合だとグリーンカードやビザですが、アメリカ市民になってしまうとそうしたものは一切ないので提示できず、「アメリカに合法的に滞在していることで大使館のお墨付きをもらえない」のです。それを嫌がる法律事務所が多いというわけですね。

もちろん、それとこれは別として請け負ってくれる法律事務所は、探せばあります。しかし、選択肢は少なくなってしまいます。

3.国籍喪失の手続き方法

アメリカ市民権を取得したら、法律によると3か月以内に日本国籍喪失の手続きが必要です。しかし3か月を過ぎてしまっても、受け付けてもらえます。

手続き方法は

という3つの方法があります。

日本大使館のサイトはこちらから

アメリカにある日本大使館へ行く

もしも運転できる距離に日本大使館や領事館があるなら、この方法が便利かもしれません。必要な書類

  • 国籍喪失届(なぜかネットではダウンロードできないので、窓口で受け取ってその場で記入しましょう)
  • 帰化証明書(アメリカ市民権を取得したときにゲットした賞状みたいな証明書です)
  • 帰化証明書の日本語訳(大使館のサイトに例があります。自分でできます)
  • 日本のパスポート(手続きの際に返却します。有効期限切れでもOKです)
  • アメリカの免許証(住所確認のため)

アメリカにある日本大使館へ郵送で手続きする

日本大使館への距離が遠ければ、必要な書類を大使館に郵送して遠隔手続きすることもできます。その場合には、

  • 帰化証明書の代わりに宣誓供述書(テンプレートが大使館サイトにあります)
  • 宣誓供述書の日本語訳(例文があるので自分でできます)
  • 免許のコピー(現物を送ってはいけません)
  • 帰化証明書を送る必要はありません。コピーも不要です。

を送ります。一番重要な国籍喪失届は、上記の通りネットでダウンロードできない重要書類なので、面倒ですが「請求シート」なるものを大使館に郵送して送付してもらえるようにお願いしましょう。

日本の役所へ郵送で手続きする

面倒さがさらにアップするので、おすすめしません。どうしてもという人は、本籍がある役所に上記の書類をすべて日本語訳付きで送り付けるという方法で手続きすることになります。

アメリカ市民権vs永住権、どうするべき?

国際結婚の片道切符でアメリカに来た人、アメリカで働いていてこのまま骨をうずめようかと考えている人、日本へ帰国する予定がなくずっとアメリカに住んでいる人はたくさんいます。多くの場合、グリーンカードと呼ばれる永住権もしくはアメリカ市民になって生活しているのではないでしょうか。

アメリカ市民権は、アメリカに来てすぐに取得できるモノではなく、一定の条件を満たさなければいけません。しかし条件を満たせば抽選などをすることなく申請して取得できます。長くアメリカに住んでいると、ずっと永住権をキープしたほうが良いのか、それとも市民権をとってアメリカ人になった方が良いのか、迷うことがあるかもしれません。

目次

  1. 永住権のメリットとデメリット
  2. 市民権のメリットとデメリット
  3. 私が市民権をとった理由

1.永住権のメリットとデメリット

アメリカ市民にならず、ずっとグリーンカードのステータスを維持することには、メリットとデメリットがあります。

メリット

  • 日本のパスポートをずっとキープできる
  • 日本へ永住帰国するという選択肢も維持できる
  • 日本の親からの相続の際に手続きがスムーズ→外国人だと手続きが煩雑になる
  • 将来は日本からの年金もアメリカにいながら受け取れる
  • 日本の親の介護や看病で長期間日本に滞在しても問題なし

デメリット

  • グリーンカードを定期的に更新しなければいけない。お金もかかる。
  • 選挙権がない
  • 遺産相続の際に税金控除される金額が低い
  • 有事の際には「市民オンリー市民優先」となる可能性が否めない
  • 公務員になれない
  • 万が一の時には日本へ強制送還されるリスク
  • 一定期間以上アメリカを離れるとステータスが失効する
  • 社会保障を受けられる範囲が市民よりも限定されている
  • アメリカ市民の配偶者と離婚した場合、養育権で不利

2.市民権のメリットとデメリット

それではアメリカの市民権をとると、グリーンカードだった頃と比べてどんなメリットがあるのでしょうか?

メリット

  • 夫や子供と同じアメリカのパスポートが持てる→有事の際でも確実にアメリカに帰ってこれる
  • 公務員になれる
  • 政治家や大統領にも立候補できる
  • 国家機密に関わる仕事ができる
  • 日本の親を呼び寄せることも可能→永住権の人より手続きがスムーズで早い
  • 日本を含めた海外に長期滞在しても、問題なくアメリカへ帰ってこれる
  • 公立校で奨学金を受けやすくなる
  • 万が一の時でも日本へ強制送還されない
  • 養子を迎える際の手続きがスムーズ
  • 海外赴任の際にビザ取得がスムーズ

デメリット

  • 日本国籍を放棄する手続きをしないと、日本の親からの相続が困難
  • 日本の親の介護などで日本に長期滞在すると、不法滞在者となる
  • 世界のどこに住んでいてもアメリカへずっと納税しなければいけない
  • Jury Dutyと呼ばれる陪審員のお勤めに呼ばれるかもしれない

3.私が市民権をとった理由

私は10年ほど前に、市民権を取得しました。その理由は、

何かあっても夫と息子と同じ家に帰ってきたかったから

というもの。もちろん、そうならない可能性は極めて低いのですけれど、アメリカのパスポートを持っていないということは、少なからず有事の際にはアメリカではなくて日本へ帰されるリスクがあるという事です。

私がそう思うようになったきかっけは、とある日本人女性の記事を読んだ事でした。彼女はアメリカ人の男性と国際結婚をし、子供も生まれて幸せにアメリカで生活していたそうです。しかし何かのきっかけで、ずいぶん昔に彼女が申請した移民ビザの書類に不備があることが分かり、なんと彼女だけ強制送還されたのです。それまでは永住権で生活していたので不法滞在ではないはずですが、発行すべきではないグリーンカードが発行されたとみなされて、彼女はそこから10年間のアメリカ入国禁止になったのだとか。

また当時はグリーンカードを持って海外へ長期滞在する人が多かったのかは知りませんが、グリーンカードを持っていてもアメリカ入国拒否にあったという人や、口論になって立腹した入国管理菅にその場でグリーンカードを捨てられた、なんて話も友人から聞きました。

もちろん、友人から聞いた話は、どこまで本当なのかは分かりません。しかし当時はアメリカ大使館の日本語サイトに、グリーンカードを持っている人が海外に滞在する際の注意書きなどが掲載されたりもしました。なので、それなりに問題があったのだと予想しています。

私はすっかり怖くなり、万が一の時にも夫と息子様と同じ家に帰ってこれるようにとの思いで、アメリカの市民権を取得することに決めました。まぁ日本で暮らしている親とはもともと折り合いが悪かったので、決断するのに迷う要素が少なかったというのもありますが。

グリーンカードを持ってアメリカで生活している人を、怖がらせようとしているわけではありません。今は以前よりもネットでより多くの情報収集ができますし、万が一の時にはヘルプを求めることもできます。ネット社会が進むことは、私達のような立場の人間にとっても、大きなプラスになっている思いますね。