進化論(Evolution)と創造論(Creation)は、キリスト教徒がそれほど多くない日本においては、論議される機会はほとんどありません。しかしキリスト教が大多数を占めるアメリカでは、進化論vs創造論は、永遠の課題と言っても過言ではありません。実際の所、どのぐらいの人がどちらを信じているのでしょうか?そして、私達の日常生活には、どんな影響があるのでしょうか?
目次
1.進化論とは?

進化論とは、一言でいうなら「人間の祖先はネアンデルタール人という類人猿」だという説ですね。これは、1959年に出版されたチャールズ・ダーウィン氏の「種の起源」に基づいた考え方で、自然選択の中で生物は少しずつ進化していくというものです。生物はそれぞれ、生活する環境に応じて少しずつ変異し、間違った変異をした種は絶えてしまい、正しい変異をした種のみが生き残れるという説です。
進化論は、科学的な考えに基づいた説です。
日本では、子供の頃に必ずこの進化論を学びます。長い地球の歴史の中で、人類がどのような経緯で誕生したのかという流れを学びます。だから、人間の先祖は類人猿だと考える人は、日本においてはほぼ100%に限りなく近いと言っても過言ではないと思います。
2.創造論とは?
一方の創造論は、キリスト教の旧約聖書の説に基づいた考え方です。科学的な根拠に基づくと地球の誕生は約45億年ほど前になりますが、創造論の中では地球が作られたのは約6,000年前となります。そして、アダムとイブが既に美しく緑が整備された楽園の中に表れて、それが人類の始まりだという説ですね。
キリスト教ではない人にとっては、創造論というと、だいたいこの部分しか知らないものです。その先の話に続きがあることは、私も含めて知らないとか興味がないという人が多いのではないでしょうか。
アダムとイブがその後どうなったかという点については、聖書を読むとたくさんの登場人物が出てきて、説明されています。ちなみに、アダムとイブは、恐竜と共にこの地球上で仲良く暮らし、氷河期が到来した時にはノアの箱舟に乗っていたから無事だった、のだとか。
3.解決できない問題
日本では、宗教の位置付けはアメリカと大きく異なります。私たちは子供の頃に進化論を学校で習い、テストのために必死に記憶しましたよね。クロマニヨン人とか北京原人、ネアンデルタール人などはすべて、この進化論の授業の中で登場する人類の祖先という位置づけです。
アメリカでは、子供は学校に行く前の年齢から教会へ通い、創造論を学びます。特に聖書の中でも最初に登場するアダムとイブについては、どんなに小さな子供でも知っている有名な登場人物です。
しかし学校に通う年齢になると、学校で教える進化論と、それまで自分が常識として認識していた創造論とが相反することに疑問を抱くのです。うちの息子も、学校で進化論を習ったけれど、創造論を信じている子どもは憤慨していたと言っていました。
進化論と創造論は、科学を信じるのか、それとも宗教を信じるのかという立ち位置によって、どちらが正しいかは変わります。実際の所、誰もその時代に生きていたわけではないので、知る由もありません。近年では大流行している都市伝説シリーズやYouTuber達が、「実は人間の祖先はサルでもアダムでもなく、宇宙からやってきた宇宙人だ」という説もまことしやかに囁かれているほどです。



私としては、真実が知りたいという点でとても興味がある部分ではありますが、地球の歴史を知り尽くした宇宙人が資料などを公開してくれる以外には、解明されることはきっとないのかもしれません。
4.進化論vs創造論、アメリカではどっちが主流?
今から20年ほど前の2004年にアメリカのテレビ局が行った調査によると、創造論を支持する人は全体の60%で、過半数を占めていました。
あれから20年がたち、2015年にふたたび行った調査では、創造論を支持する人の割合は45%と低くなり、代わりに進化論を創造する人の割合が全体の55%と過半数超となりました。
ちなみに、こうした進化論vs創造論の調査は、結構頻繁に行われていて、データ化されています。その中で分かってきたことは、
- 若い世代ほど進化論を支持
- 若い世代はキリスト教から距離を取る傾向もある
- 低学歴の人は80%が創造論を支持
- 高学歴の人は、35%程度は「心では創造論、だけど頭では進化論」、65%は「完全に進化論のみを支持」
という点です。
このうち、私が面白いなと感じたのは、「心では創造論、だけど頭では進化論」という考え方ですね。子供の頃に学んだ創造論を否定するわけではないけれど、後から学んだ進化論の方がつじつまが合っているような気がするので、そちらを支持する、ということなのでしょう。
ちなみに、私の周囲を見ても、だいたい上記のプロファイルは当たっています。
5.キリスト教信者の夫に質問してみた
私の夫はキリスト教信者です。私は違います。仏教徒です。
先日、夫と進化論vs創造論について会話をしてみました。私は基本的に、つじつまが合っていることなら信じられるのですが、そうでないものは盲目的に信じろと言われても、なかなかできません。
夫は、「心では創造論、頭では進化論」だと考えています。その夫との会話で、創造論と進化論に接点はないものだろうかと試行錯誤した所、
「もしかしたらアダムとイブは人間ではなくてミトコンドリアだったのかもしれない」
というよくわからない考えが浮かんできました。ミトコンドリアなら、環境的な条件が揃えば、無の状態からでも生まれますよね。だったら私も納得できる妥協案だなと思ったのです。
しかーし、これを敬虔な「盲目的に創造論しか信じない」義母に話したところ、ブチ切れられました。人間とミトコンドリアを一緒にするなんて、冒涜だ、ぐらいの勢いだったと思います。
6.学校で教えるかどうかが議論
アメリカの公立高校では、進化論は学校で教えます。でもネアンデルタール人とか詳しく教えてくれる先生は、たぶん地域的な特徴が許せばいるのでしょうけれど、ごく少数だと思います。多くの先生は、カリキュラムに入っているから仕方なく教えるけど、できれば教えたくない、というスタンスのようです。
その理由は、
「父兄からのクレーム」
なのです。神の教えに反しているとか、そんなものをうちの子供に教えるなとか、国が定めたカリキュラムよりも宗教の方が大切だと真剣に意を唱えてきます。
その結果、学校の先生は
- さらっと口頭で触れるだけでテストにも宿題にもしない
- 忘れたふりして飛ばす
- カリキュラムが多すぎて1年ではこなせないという理由で切り捨てる
- しっかり丁寧に教えて、後から父兄のクレームを受ける
のどれかを選択することになります。
ちなみに、キリスト系の私立学校では、進化論は全く触れない所が多いそうです。生徒や保護者からの授業料と寄付金で成立している私立なら、賢いビジネス判断なのでしょう。
昔は進化論が禁止されていた
現在では、ほぼすべての州の公立学校では、進化論を教えていると思います。しかし100年前には、バトラー法という法律があって、学校で進化論を教えることを禁止していました。ただしその中でもやはり進化論を信じる教師はいたわけで、過去には今とは逆に、
「創造論は教えない」
というスタンスもあったようです。このバトラー法は廃止となっています。
7.裁判沙汰になったこともある
進化論vs創造論の論議は、正直、同じ価値観を持つ人と論議するなら問題ありませんが、進化論信者と創造論信者が論議をしても、ケンカになるだけで終わるのが大半です。私自身、過去にそうした経験があるので、今では家族以外とはこうした話題には触れないように心がけています。たまに仕事で知り合った人から、会話の流れで創造論を吹っ掛けられることはあります。とても気分が悪くなるので、あからさまに話題を変えるようにしていますね。まぁ良識がある人は、他人とそうした話はしない方が良いと心得ているわけですが。
キッツミラーvsドーバー裁判(2005)
進化論vs創造論でケンカになるのは、私だけに限ったことではないようです。2005年にペンシルバニア州で起きたキッツミラーvsドーバー裁判では、創造論を信じるキッツミラーという名の女性が、他の父兄11名と共に、ドーバー高校を訴えたというものです。原告の言い分は「進化論は科学ではなく悪魔。そんなものを子供に教えるなんて言語道断」というものでした。しかし判決は、進化論は教えてよろしい、ドーバー高校の教え方にも問題はなかったというもので、法律は創造論よりも進化論を支持した結果となりました。
8.世界各国はどうなの?
ほかの国と比べると、アメリカは世界の他の先進国の中でも進化論を信じる人の割合がとても低い国として知られています。
ある調査によると、進化論を支持する人の割合が最も高いのはアイルランドやデンマーク、スウェーデンなどの北欧諸国で、その次のフランスやイギリスなどのに西ヨーロッパ諸国や日本が並びます。
東ヨーロッパに関しては、西ヨーロッパ諸国よりも進化論支持者の割合は低くなるものの、アメリカよりもずっと高く、平均して7割以上は進化論を支持しています。
アメリカの進化論支持率と同じぐらいの支持率を持つ国には、キプロスやラトビアなど、元ソ連だった国があります。
ちなみに、アメリカよりも進化論支持者が少ない国は、どこがあるのでしょうか?統計によると、イスラム教徒が圧倒的に多いトルコだそうです。