日本の学校では、子供たちが食べる給食にかかる費用は、親が負担します。給食がなければ、親が毎日お弁当を作らなければならず、大変な労力や時間がかかってしまいますよね。
それに、学校で提供される給食は栄養バランスが取れているだけでなく、リーズナブルです。自治体によって毎月かかる給食費は違いますが、平均すると4,000円~5,000円程度が一般的ではないでしょうか。
しかしこの給食費、日本では未払いが大きな問題となっています。その理由は払えないとか払いたくないとか様々ですが、この未払いによって自治体は大きなダメージを受けていたり、取り立て役を仰せつかる担任の先生は、白髪が増えるような苦労を強いられています。
この給食費の未払いトラブルは、実はアメリカにはほぼありません。少なくとも、私がアメリカで子育てをしてきた中では、見たことがありません。その理由と仕組みをご紹介しますね。
目次
1.アメリカの給食費の仕組み

アメリカでは、キンダーから大学まですべて、学校では給食を提供しています。しかし全員が給食を食べなければいけないというわけではなく、自宅からお弁当を持参する子もたくさんいます。生徒や家庭に選択権があり、家庭でお弁当を作るのが面倒な人は、給食という選択肢もあります、というスタンスですね。
この給食費は、プリペイド式になっています。親が事前にランチアカウントなるものを開設して、そこにいくらかを入金しておきます。子供は学校で給食を食べたいときに、4桁の暗証番号(PIN)を会計の時に伝えることで、子供が現金を持たなくてもランチを購入でき、学校側も未払いのリスクを回避できるという仕組みになっています。
子供が自身で現金を管理できるぐらいの年齢になると、学校側もプリペイドだけでなく、子供がその場で現金払いするという選択肢もくれます。プリペイドでもその場で現金払いでも、給食の代金は変わりません。私の息子はほとんどお弁当を持参していたので、給食代金がどのぐらいかはよく覚えていないのですが、確か1食あたり$3(500円程度)ぐらいだったような気がします。
ランチアカウントがない!子供はどうなる?
学校の新学期が始まると、子供達は学校からたくさんのお知らせをもらって帰宅します。これは、日本でも同じですよね。そのお知らせの紙の中には、ランチに関するものもあって、どのサイトでランチアカウントを開設するか、入金はどうやってできるか、といった説明が書かれています。
最初から「年間を通してお弁当を持参させます」という家庭なら、ランチアカウントを開設する必要はありません。しかし、今日はお弁当だけど明日は給食、という子や、毎日給食という家庭では、ランチアカウントを開設することが多いです。
もしも子供が給食の時間にカフェテリアに行き、給食を購入しようとしたのにアカウントに残金が入ってなかったり、アカウントが開設されていない場合には、どうなるのでしょうか?

結論から言うと、ランチは購入できません。キンダーぐらいの年齢だと、担任が慈悲の心で「今日は私が払うから」と言って購入してくれることは、あるかもしれません。しかしその場合、必ず担任から親に「ランチアカウントを開設していないので、してください」という連絡がいきます。
1回ぐらいなら、担任が費用を負担して給食を購入してくれることはあるでしょう。しかし何回も続くと、残念ながらその子はランチタイムには何も食べられない事態となります。周囲の子が給食やお弁当を食べていても、その子は何も食べられません。はい、これは親の責任なのです。
2.Free LunchとReduced Lunchとは?
「給食代が払えない貧困層に対して、それはあんまりじゃないか?」
という声があるかもしれませんね。アメリカにはそうした貧困層向けの福利厚生プログラムがあります。USDAから提供されているNational School Lunch Program(NSLP)という制度で、全米で2,300万人程度が利用しています。

公立の学校では、世帯の収入が一定以下の場合には、給食費は完全無料となります。さらに、無料になるレベルではないけれど客観的に見て生活が貧しい家庭だと認定されると、給食のディスカウント制度を利用できます。
- Free Lunch(給食費が無料)世帯収入が、政府が定める貧困ラインの130%以内が対象
- Reduced Lunch(割引価格)政府が定める貧困ラインの130%から185%まで
貧困ラインというのは、毎年政府が決定するもので、世帯人数によって収入のラインは異なります。
世帯の人数 | 2022年度の貧困ライン (Poverty Guideline) | Free Lunch |
2 | $18,310 | $23,803以下 |
3 | $23,030 | $29,939以下 |
4 | $27,750 | $36,075 以下 |
5 | $32,470 | $42,211以下 |
6 | $37,190 | $48,347 以下 |
7 | $41,910 | $54,483 以下 |
8 | $46,630 | $60,619 以下 |
ちなみにこの貧困ガイドラインは、WICが定めるラインとは異なります。
Free LunchとReduced Lunchは、現在Webで申請できるような環境整備が進められています。それまでは、学校のカウンセラーに相談すると、必要な書類を教えてくれますし、場合によっては学校側で手続きをしてくれることもあるかもしれません。
Free LunchとReduced Lunchの申請はこちらから
Free LunchとReduced Lunch に関するガイドラインはこちらから
3.該当するなら利用したほうが良い、その理由は?
このランチプログラムは、自身の世帯が貧困層であるという一定の基準となります。子供が学校に通っている間には、とりあえず栄養のある食事ができるということは、親にとっては大きな安心感ではないでしょうか。
しかし、メリットはそれだけではありません。例えば大学入学のためのSATやACTを受験する際には、ランチプログラムで無料もしくは割引きの人は、テスト料金にも反映されます。
それに、もしも将来、子供が成長して大学を受験する場合には、Free LunchやReduced Lunchを「過去に1度でも」利用した経験があると、FAFSAをファイルする際に考慮されます。自己負担額ゼロ円と計算される可能性も大いにあります。
アメリカの大学費用についてはこちらから