医者に行って1億円⁉アメリカの医療費と健康保険の仕組み

アメリカにも、健康保険制度はあります。しかし、日本の仕組みとかなり違うので、慣れるまでは戸惑ってしまう人が多いですね。ここでは、アメリカの医療費の仕組み、健康保険の種類などについてご紹介します。

目次

  1. アメリカの健康保険制度は複雑
  2. 保険会社が加入拒否?
  3. 健康保険のプランは大きく分けて3種類
  4. 医療費の自己負担分が計算される仕組み
  5. かかる医療費をできるだけ安く抑えるコツ

1.アメリカの健康保険制度は複雑

日本の健康保険制度といえば、職場の組合を通して加入する社会保険課、市役所を通して加入する国民健康保険、どちらかに加入しなければいけません。税金の一つなので、加入しないという選択肢はありませんよね。これは、日本が、国民皆保険制度を採用しているからです。

しかしアメリカでは、オバマ政権によって大きく変わりましたが、基本的には国民は健康保険に加入する義務はありません。つまり、加入するかどうかを選択できる仕組みとなっているのが特徴です。もちろん、加入しなければ病院に行った時にかかる費用がびっくりするほど高額になりますが、それでも「僕は健康、保険なんて必要

なし」という人がたくさんいます。

アメリカで健康保険に加入するには、

という方法があります。

職場を通して健康保険に加入する

仕事をしている人なら、職場を通して健康保険に加入するのが一般的です。日本の場合だと、健康保険と年金などをあわせて社会保険料として、収入によって決められた金額が源泉されますよね。高収入の人と低収入の人とでは、納める健康保険料は違います。

しかしアメリカの場合には、収入に関わらず、健康保険料はプランによって毎月の価格が決まっています。低収入の人も高収入の人も、同じ金額がかかるわけです。職場を通して健康保険に加入する場合には、保険料は源泉されますが、企業によってはかかる保険料の一部を会社が負担してくれるため、毎月の保険料は個人で加入するよりもリーズナブルになることが多いです。

しかし、ここで大きな問題があります!それは、収入が低い人にとっては、保険料が高すぎて払えない、いや、払いたくないというケースがあることですね。例えば、毎月のお給料が10万円で、健康保険料が8万円かかるとしましょう。ほとんどの人は、払いたくないという判断をするのではないでしょうか。だって、給料10万円から8万円が引かれたら、手元にはたったの2万円しか残りません。そこから家賃や食費を払うなんて、無理ですよね.

そこで、健康保険に加入しない人が生まれるわけです。基本的には加入するかどうかは選択なので、加入したくないという人もいれば、加入したいけれど高額すぎて無理、という人もいます。

保険会社が販売する商品を個人で購入する

健康保険は、職場を通して加入しなくても、保険会社がそれぞれ販売しているプランに加入するという選択肢もあります。よく知られている保険会社と言えば、

  • BlueCross BlueShield
  • Aetna
  • United Heathcare
  • Humana

などがあります。それぞれ複数の健康保険プランをラインナップしており、毎月かかる保険料や、どこまで健康保険がカバーしてくれるのかという点が異なります。個人で購入するタイプの保険はどれも、職場を通して加入する健康保険と比較すると、割高感があるプランが多いです。

しかも、同じ保険会社でも、州によって支社があり、プランが異なります。そのため、まずは住んでいる場所によってどんな健康保険の選択肢があるのかを知ったうえで、比較検討することが大切ですね。

人で購入できる健康保険はこちらから

メディケイドを利用する

オバマ大統領の医療保険制度改革法によって誕生したのが、通称オバマケアと呼ばれているメディケイド(Medicaid)です。これは、低所得者向けのリーズナブルな公的な健康保険プランとして注目されました。

このメディケイドが施行された2018年からは、アメリカも国民皆保険にしようという動きが高まり、健康保険に加入していない人には罰金が科せられました。(大人1人あたり$695,子供1人あたり$347と高額です)

このメディケイドは、その世帯の収入によって保険料が変わるというシステムとなっているため、これまで「加入したいけれど高額すぎて無理」だった人達にとっては、大きな救いの手となったわけです。

2.保険会社が加入拒否?

アメリカの健康保険は、社会福祉という要素よりも、ビジネス的な要素が強いですね。日本の場合だと、基礎疾患を持っているとか、健康上でたくさんのトラブルを抱えている人でも、健康保険に加入することはできますよね。

しかしアメリカでは、職場を通して加入する場合には問題はないものの、保険会社が販売する保険商品に個人が加入する場合には、基礎疾患があったり、健康面でハイリスクと判断されると、加入拒否をされてしまいます。

病気がちな人こそ健康保険に加入するべき、という声が聞こえてきそうですよね。確かに、正義という点ではそうかもしれません。しかし保険ビジネスモデルとしては、健康保険をたくさん使いそうな人を加入させてしまうと、保険会社の損失が大きくなってしまうと考えるようです。そのため、健康保険に加入する際には、健康診断を求められることが多く、その結果次第では、加入したくても加入できない状態となってしまいます。

メディケアでは、基礎疾患がある人でも加入できる制度が確立されました。そのため、それまで健康保険が必要だったけれど加入できなかった人でも、安心して健康保険に加入できるようになったのです。

3.健康保険のプランは大きく分けて3種類

各保険会社が提供している健康保険、および職場を通して加入する健康保険は、大きく分けるとサービス内容によって3つのタイプに分類できます。

HMO保険会社が決めた医療機関を受診するプラン。これはネットワークと呼ばれていて、各保険プランごとに、どの医療機関が該当するか異なります。
HMOプランでは、医療機関を受診した際にかかる自己負担分(Co-Pay)があらかじめ決められていて、その金額のみを支払います。Co-Payはプランによって異なりますが、20ドル~40ドル程度と比較的リーズナブルです。
PPO患者自身が自由に医療機関を選べるプランです。ただし、年間の持ち出し負担分(Deductible)があり、その負担額をクリアするまでは、保険の適用はありません。このDeductible、年間で2000ドル~5000ドルと高めなので、健康な人だと、健康保険が適用されないままほぼ全額が自己負担となってしまうことも珍しくありません。
POSHMOとPPOの中間に位置するプランで、両者の良い所を抽出したハイブリッドタイプの保険商品です。ネットワーク内の医療機関を受診することを前提とするものの、それ以外の医療機関を受診しても、保険が適用されるという魅力があります。

おわかりでしょうか。健康保険のプランが変わると、同じ疾患で同じ医療機関を受診しても、自己負担分が大きく変わります。20ドルの自己負担分だけで済む人もいれば、300ドルを請求される人もいるわけです。

4.医療費の自己負担分はどう計算する?

アメリカの医療費の計算方法は、とても複雑です。日本のように、かかる医療費は病院が変わっても同じ、というわけではなく、医療機関ごとによって治療費の設定額は異なります。

もしも健康保険に加入していなければ、この医療機関が設定する金額を、そのまま請求されることになります。例えば、インフルエンザかなと思って病院に行き、簡単な検査を受けたとしましょう。無保険の場合には、病院が設定した「Office Visit代$300」を全額請求されます。

それでは、健康保険に加入していた場合にはどうでしょうか?どこで加入したかに関わらず、健康保険はプランごとに、提携価格があります。上記のOffice Visit代も、医療機関が設定した価格は$300ですが、プランの提携価格は$100だとします。この場合、医療機関は治療費をプランとの提携価格に修正しなければいけません。その結果、治療費は$100となります。

さぁここで、HMOやPPOによる違いが出ます。

この健康保険で、患者の自己負担額は$40というHMOプランに加入していた場合、患者さんに請求されるのは$40だけです。そして、健康保険会社が医療機関に対して支払うのは、残額の$60となります。

PPOプランはどうでしょうか?年間の自己負担額(Deductible)が$2000と設定されているプランなら、かかる$100は全額が患者さんの負担となります。

ちなみに、このDeductibleは、1月1日~12月31日までの自己負担分が蓄積されていきます。たくさん病院に行ってDeductible額をクリア(自己負担で$2000払ったということ)した後には、プランが定めるカバー率で、医療費の一部が健康保険によって負担されます。

5.かかる医療費を安く抑えるコツとは?

アメリカの医療費は、日本とは比較できないほど高額です。仮に無保険だったとすると、ケガや病気で入院すると、数日間の入院だけでも数万ドルという信じられない医療費を請求されることも珍しくありません。

そういえば、新型コロナウィルスで入院した場合、無保険だと医療費の請求が1億円ぐらいになる、という噂がまことしやかにささやかれました。本当かどうか、信じるのはあなた次第、なのですが。

それでは、医療費を少しでも安く抑えるコツには、どんなものがあるのでしょうか?

  • 健康保険は、家族の健康状態を見て決める。健康ならHMOプラン、基礎疾患がある人はPPOプランがオススメ
  • ER(Emergency Room)ではなくUrgent Careを利用する
  • 気軽に病院には行かず、まずは家庭で様子をみる

などがありますね。

アメリカのチップの相場と注意点

目次

  1. 日本にはない慣習!チップとは?
  2. チップは誰に払うモノ?
  3. チップの相場はケースバイケース
  4. 観光客が多いエリアでは料金にチップが含まれていることも
  5. チップの注意点

1.日本にはない慣習!チップとは?

日本になく、アメリカにある風習の一つと言えば、チップ(tip)がありますよね。これは、法律や制度で決められているものではなく、あくまでも「感謝」の気持ちを表すというアメリカの風習です。なので、必ずこうしなければいけないとか、うっかり忘れると逮捕される、なんてことはありません。

チップは、何かサービスをしてくれた人に対して支払うものです。私たち日本人にとっては、いつ、誰に、どんなタイミングで支払えばよいのかが分かりませんし、金額はいくらぐらいが相場なのかという点も、分かりませんよね。

チップは英語で、Tip(ティップ、と発音)と呼びます。その他には、Service ChargeとかGratuityと呼ばれることもあります。

2.チップは誰に払うモノ?

チップは基本的に、何かサービスをしてくれた人に対して支払います。

例えば、レストランなら、お会計の際にサーバーへチップを払いますし、ホテルでは客室清掃をしてくれるスタッフに対して支払ったり、スーツケースを部屋まで運んでくれるスタッフ、またはタクシーを呼んでくれたスタッフなどに対して白羽うこともあります。

アメリカで生活していると、その他にもチップを支払う機会はたくさんあります。家のメンテナンスで業者に自宅まで来てもらった場合には、チップを支払う習慣がありますし、美容室やネイルサロンなどでも、支払います。

3.チップの相場

チップは、いくらぐらい支払えばよいのでしょうか?これは、場所やサービスの内容によっても違いますし、感謝の度合いによっても変わりますね。

飲食店の場合

飲食店と言っても、レストランもあればファストフードなどもありますし、ビュッフェなどもあります。また昨今ではグルメのデリバリーも増えていて、こうしたサービスでもチップは必要です。

タイプチップの目安
ファストフード不要
フードコート不要
レストラン15%~20%
軽食のみのカフェ10%~15%
食べ放題のビュッフェ一人当たり1ドル~2ドル
グルメのデリバリー10%~15%

バーやクラブの場合

アメリカには、バーやクラブがあり、お洒落な大人のスポットとして人気がありますね。バーやクラブでは、バーテンダーが働いているカウンターでドリンクを注文し、客はドリンクが出てくるのを待ち、カウンターで受け取って支払いをします。

このように、ドリンクを注文する度に支払いをするタイプのバーやクラブなら、チップはドリンク1杯ごとに1ドル~2ドルを支払うのがマナーですね。ただし、顔を覚えている常連客に対しては、クレジットカードをOpenと言って預かってくれていて、1日の最期に飲んだ分をカードでまとめて支払えるタイプのバーやカウンターなどもあります。この場合には、約10%~15%のチップを支払代金につけるのが良いでしょう。

美容室(Hair Salon)やネイルサロン、エステの場合

アメリカでは、美容室などのサロンでも、チップが求められます。高い料金を支払っているうえに、更にチップだなんて!と思う人がいるかもしれませんが、こうしたサロンではチップは支払代金の15%~20%が相場なので、きちんと払いたいものですね。

サロンの場合には、大抵支払いはクレジットカードやデビットカードを受け付けているので、その際にチップもつけてカード払いにするのが便利です。

タクシーにもチップが必要

アメリカでは、タクシーに乗ってもチップが必要です。8ドルのタクシー料金で10ドル札で支払い、「Keep the Change!(お釣りは取っておいて!)」とスマートにできれば理想的ですよね。しかし近年では、タクシー料金にもカード払いが増えているため、チップもカードで支払うのが一般的です。

タクシーのチップは、メーター料金の15%~20%程度が目安です。

ツアーバスやツアーガイド

アメリカへ観光にやってくる人は、ツアーガイド付きのツアーを利用したり、ツアーバスを使ってたくさんの場所を効率的に回るのが、賢い遊び方です。留学生や移住した人でも、遠く離れた都市へ観光に行く際には、ツアーバスやツアーガイドのサービスを利用することがあり、その際にもチップが必要です。

ツアーガードの場合には、グループあたり5ドル~20ドルぐらいが妥当でしょう。グループの人数や、ツアーの所要時間などを考慮して、金額を決めるのがおすすめです。

ツアーでは、ツアーバスのドライバーに対してもチップを渡したいものです。リムジンのような専属のドライバーがつくラグジュアリーなツアーなら、かかったサービス料金の15%~20%程度が目安となりますが、大勢が乗る観光バスの場合には、1人当たり1ドル~2ドル程度でOKです。

ただし、バスと言っても、公共の交通機関であるバス(街中を走るコミュニティバスなど)では、チップは必要ありません。

4.観光客が多い場所では代金にチップが含まれていることもある

世界中から観光客が集まるニューヨークシティやラスベガスなどのエリアでは、レストラン料金の中に、すでにチップが含まれているケースが少なくありません。全ての飲食店でチップ込みの料金を請求されるというわけではありませんが、チップがすでに代金に含まれている場合には、更にチップを上乗せして支払う必要はありません。注意しましょう。

チップが代金に含まれているかを確認するためには、お会計の時にいただく請求書を見ると、そこに明記されています。

レストランなどの飲食店では、食事を終えてお会計(Check,please)と頼むと、何を注文したのかアイテムごとに代金が記載されたレシートのような紙を持ってきてくれます。そこには、代金の合計分、そして税金が加算された合計金額がかかれています。

もしもチップが代金の中に含まれている場合には、そこにGratuityとかService Chargeなどの名目で、いくらかが上乗せされています。

ここで注意しなければいけない点は、チップが含まれているかに関わらず、Tipを自分で加算する項目が必ず設けられているという点です。チップが代金に含まれていない通常のレストランの場合には、そこにチップ分を自分で計算して、代金とチップの合計金額を支払えばOKです。

代金にチップが含まれている場合には、Tipと書かれた部分に「ー」と横傍線を引き、払いませんという意思表示をすれば問題ありません。

5.チップの注意点

チップを支払う際には、いくつかの注意点があります。

サービスがイマイチだった。チップを払わなくてもよい?

チップは、サービスに対して支払うものです。サービスが良くないと、払いたくないという気持ちになってしまいますよね。しかし、払いたくないからと言ってチップがゼロというのは、相手を激怒させかねません。特に、レストランのサーバーなど、お給料を客からのチップに頼っている職種の人にとっては、チップがゼロだと、生活できなくなってしまうかもしれません。

もしもサービスが悪く、チップを払いたくない場合には、払わないのではなく、チップの金額を低めにすることで、サービスの質が悪かったことを相手に伝えると良いでしょう。

チップをサッと簡単に計算したい

チップをいくらにするか、サッとスマートに計算するためには、

  • 加算されている税金を2倍にする→代金の18%程度になります
  • 代金を10分の1にする→代金の10%になります

という方法が簡単です。

日本食レストランでもチップは必要?

日本食レストランや寿司レストランでは、サーバーに日本人が働いていることが少なくありません。しかしこの場合でも、アメリカの飲食店なので、チップは必要です。

日本食レストランだからと言って、従業員の給料体制も日本式というわけではありません。オーナーはアメリカ人の可能性がありますし、従業員のお給料は、客からのチップを想定して低めの金額に設定されている可能性も高いです。

レジの前にグラスがあり、お金が入っている。チップはそこへ入れるの?

ショップによっては、レジの前にグラスとかお皿などがおいてあり、小銭などがチップのように入っていることがあります。しかし、それは基本的に「現金で支払った人が、細かいお釣りを持ち歩きたくないので、そこへ寄付する」という意味合いが多いですね。

現金払いをして、チップもそこから払いたい。どうしよう?

もしも、チップも含めた金額を現金払いするなら、支払う際に「 I don’t need change」とか「Keep the chaneg」などと伝えればOKです。うっかり伝え損ねて、お釣りを受け取った場合には、そこからチップ分を手渡ししても、問題ありません。

もしも現金払いをしてチップもそこから払いたいけれど、金額が大きいお札で支払うからお釣りも欲しい、という時には、お釣りを受け取ったうえでチップ分を手渡しするのが良いでしょう。