アメリカにも個人年金がある?必要?

アメリカの年金には、いくつか種類があります。

  • 公的な年金(ソーシャルセキュリティ)
  • 企業の年金制度(401Kや加入すると勤続年数に合わせてもらえる厚生年金的なもの)
  • 私的な年金(IRAなど。個人が自身で購入する。)

今回は、3つ目の個人年金について簡単にご紹介します。

目次

  1. アメリカの個人年金の特徴
  2. 個人年金って必要?

1.アメリカの個人年金の特徴

アメリカの個人年金は、証券会社もしくは保険会社で販売されています。IRAなどは良く知られていますが、IRAは年金のように死ぬまで受け取れるわけではありません。何歳まで生きるか分からない長寿な私達にとっては、やはり少額でも死ぬまで受け取れるタイプのAnnuityタイプの年金の方が、ありがたいものです。

証券会社の個人年金商品

日本の個人年金商品と近いのは、こちらです。一定期間コツコツと積み立てるタイプもあれば、Single Premium と呼ばれるように、掛け金をまとめて一括で預けて寝かせ、増えた分も合わせて年金として受け取れるというタイプもあります。

最低いくらから一括預金できるかは、金融機関によって異なります。2万ドルとか3万ドル程度で始められるものから、10万ドルスタートというものもあります。

個人年金の特徴は、年間の預け入れ上限がないことです。税金の控除などもありませんが、潤沢な資金がある人ならたっぷり預け入れて自身の老後に備えることができそうです。

保険会社の個人年金商品

保険会社が販売する個人年金商品の多くは、IRAの範囲内で少額を積み立てるという商品が多いですね。自分自身でIRAを積み立てる場合と何が違うのかはビミョーですが、プロに任せるのが安心という人にとっては、便利なのかもしれません。

→IRAについてはこちらから

2.個人年金って必要?

個人年金が必要かどうかは、色々な要素によって変わります。

  • 定年後のAnnuity年金がいくら入ってくるか
  • 個人年金に預け入れるまとまった資金はあるのか

あたりが、判断基準となりそうですね。

定年後のAnnuity年金がいくら入ってくるか

よく新聞などで、アメリカのどの州でリタイヤするのが一番経済的にお得か、なんていう記事が掲載されています。また、定年するまでに2ミリオン貯めても足りない、なんて非現実的かつ絶望的な展望を涼しい顔で語る専門家もいたりしますよね。

しかしこれはすべて、毎月死ぬまで必ず入ってくる年金を含めていない仮説です。職場によっては、何歳から年金が毎月いくら入ってくるというリタイヤメントプランが提供されており、転職しても各職場で加入して受給条件を満たしていれば、定年後には複数から年金が死ぬまで入ってくることも十分に可能です。

例えば、職場からの年金制度で毎月$2,000が入ってくるとしたら、

  • 1年間で $2,000 x 12 = $24,000
  • 65歳から85歳までの20年間では $24,000 x 20 = $480,000

となります。つまり、毎月$2,000の年金を20年間必要だとしたら、職場のAnnuityがなければこの金額を貯金や投資で自分で準備しなければいけません。しかし年金として受け取れるなら、持っていなくても自分が生きていれば入ってくるのですから、経済的にはずいぶん助かりますよね。

老後の資金計画を立てる際には、老後にいくら必要かという記事に惑わされて不安になるのではなく、自身の生活にはいくらかかるのかを客観的に計算した上で、それをどの年金でどこまで補えるのかを計算しながら、資金計画を立てることをおすすめします!

アメリカ人は何歳で定年退職する?

日本では、会社によって60歳ぐらいを定年退職の年齢として社内規定などで定めていて、その年齢になると、よほどの重役的なポジションでない限りは、肩をポンポンと叩かれてお疲れ様と強制的に定年退職となる、、というケースが多いのではないでしょうか。

アメリカの場合、定年退職はどうなっているのでしょうか?また、皆さん何歳で退職するのでしょうか?

目次

  1. 辞めなければいけない定年退職はない
  2. 何歳で退職する人が多い?
  3. 退職できない人はどうすればよい?
  4. 退職したら働けない?
  5. たまに耳にするEarly Retireって何?

1.辞めなければいけない定年退職はない

アメリカには、何歳になったら定年退職しなければいけないという法律もなければ、社内の規定もありません。フリーダムの国なので、基本的にはどんなにヨボヨボになっても、働きたい年齢までずっと働くことができます。

日本人と比べて貯蓄という習慣を持たない人が多いアメリカ人の場合、会社を辞めると食べていけないという人が少なくありません。だから、何歳で会社を卒業しなければいけないというルールがないことは、大きなメリットかもしれませんね。それに近年では60代は元気なので、できるだけ長く働きたいという人もたくさんいます。

2.何歳で退職する人が多い?

会社から強制的に年齢を理由に辞めさせられることは、アメリカではありません。しかし皆さん60代になるとソワソワしだして、何歳で退職しようかなという計算を始めます。

それは60歳前後から、さまざまな老後資金を捻出するためのリタイアメント口座がペナルティなしで引き出せるようになるからです!

  • 59歳6か月~ IRAと401Kの引き出しができる
  • 62歳~ ソーシャルセキュリティの受給年齢(早期ペナルティはかかりますが受給可能)
  • 67歳 ソーシャルセキュリティを満額で受給できる年齢

つまり60代になると、「働かなくても自動的に入ってくる年金がスタート」するので、それで生活が成り立つ人はストレスまみれの仕事にサヨナラして、さっさと退職するわけです。

警察や消防士、軍人などのように、20年間勤めれば、退職後に年齢にかかわらずリタイアメントの支給が始まるというお仕事もあります。しかし一般的な民間企業は、55歳以上でなければ年金支給はスタートしない所が多いです。

3.退職できない人はどうすればよい?

金銭的に余裕がある人は、ソーシャルセキュリティの受給が開始となる62歳から少しずつ辞めはじめ、満額支給できる67歳になると、多くは退職します。

しかし上記のように、貯金何それ美味しいの?という人が多いアメリカでは、退職の年齢になったからといって、金銭的な理由で退職できない人も大勢います。この場合、退職すると毎月の収入がガクンと減るので、最悪の場合には家を失うリスクさえあるでしょう。

退職できない人は、残念ながら働き続けるという選択肢しかありません。もしくは、退職してソーシャルセキュリティなどを受け取りながら、低所得者向けの公的なサービスを利用するかのどちらかとなります。

退職せずに働き続けた場合、どうなるのでしょうか?元気に働けて仕事のパフォーマンスにも問題がなければ、まさに理想的かもしれません。しかし年齢によって仕事のパフォーマンスが低下したり、使い物にならなくなってしまうと、企業は容赦なくレイオフするでしょう。私も過去に、そうした人を複数見てきました。

ちなみに、レイオフの場合には企業が社員に対して一時金を支払う義務はありません。倫理的な理由でわずかな一時金を支払う会社は多いですが、それは会社の善意でしていることです。

その日をもってレイオフされた人は事実上の無職となってしまいます。失業手当を数か月間受け取ることはできますが、残念ながら働いていた時と同じ金額というわけではありません。

4.退職したら働けない?

退職しても、雇用してくれる企業があれば働けます。地域密着型のサービスをコンセプトとしているウォルマートなどでは、入り口の所に高齢者がスタンバイしており、買い物客に挨拶をしています。はい、グリーター(Greeter)と呼ばれるお仕事で、高齢者にとっては人気が高い激戦職なのだそうです。

一般的には、若い年齢よりも高齢者を積極的に採用しようという企業は少ないので、仕事は見つけづらくなります。

5.たまに耳にするEarly Retireって何?

日本でもアメリカでもたまにいますが、30代とか40代ぐらいで「僕はEarly Retireなのさ」という人がいたりします。FIRE(Financially Independent Retire Early)と呼ぶ人もいますね。

一般的なEarly Retireというのは、「すでにたくさん稼いだので、もう働かなくても食べていける」という超うらやましい人々を指すことが多いですね。どうしてそんな若くして「働かなくても食べていける」経済状況になるのかというと、

  • 宝くじで大当たりした
  • 不労収入(株の配当とか賃貸収入とか)だけで食べていける
  • 高額所得の仕事でコツコツと貯め続けて財を成した
  • 起業して大成功、それを売却して大金を手に入れた
  • 親の遺産相続

などが多いですね。働かなくても十分な資金があれば、働かないという選択をすることも可能です!

ちなみにこのEarly Retireは、自分で勝手に宣言していることなので、その年齢からソーシャルセキュリティ年金が受け取れるとか、そういうわけではありません。働かない選択をすることは悪くありませんけれど、そこから年金を受給できる年齢になるまでどうやって生活していくのか、しっかり計算した上で慎重に決めることをおすすめします。

夫の死後に怒り爆発!遺族年金の闇

アメリカの年金制度は、ソーシャルセキュリティ(Social Security)という公的年金のほかに、職場を通して加入するリタイヤメントのプログラムがあります。日本でいうところの、厚生年金のようなものでしょうか。

この年金制度は、仕組みが分かればそれほど難しいものではありません。しかし、すべてを夫任せにしている専業主婦の人は、夫が亡くなった後に受け取れたはずの遺族年金がもらえず、怒り心頭となってしまうことがあります。

目次

  1. 公的年金制度ソーシャルセキュリティの仕組み
  2. 民間の年金制度はオプションが多い
  3. Survivors Benefitを選ぶとどうなる?
  4. 自分勝手な男が多くて制度がチェンジ

1.公的年金制度ソーシャルセキュリティの仕組み

アメリカの公的な年金制度は、ソーシャルセキュリティと呼ばれています。この制度には遺族年金があり、ソーシャルセキュリティを受給していた人が亡くなると、その配偶者は故人が受け取っていた金額と同額を、遺族年金として受け取ることができます。

遺族年金を受け取れれるかどうかという点については、婚姻期間などの条件はありますが、10年以上結婚していた夫婦なら、自身に全く稼ぎがなくてソーシャルセキュリティの受給要件を満たしていなくても、配偶者の立場で受給ができます。

ソーシャルセキュリティ番号についてはこちらから

2.民間の年金制度はオプションが多い

民間の年金制度にもいろいろありますが、大企業の多くは、年金制度を社員に提供しています。これはどういうものかというと、雇用期間中に毎月一定額を収め続けると、定年後には年金を受け取れるという仕組みです。加入期間、そして所得によって計算されることが多いです。

定年を迎える際には、どのような受け取り方をしたいかという点で、いくつかの選択肢が従業員へ与えられます。

  • まとまった金額を一括で受け取る
  • 毎月同じ金額を自身が亡くなるまで年金として受給し続けたい
  • 毎月同じ金額を、自身だけでなく配偶者が亡くなるまで年金として受給し続けたい

大きく分けると、この3つがあります。企業によっては、一括受け取りという選択肢がないケースもありますが、年金(Annuity)というオプションを提供している場合には、自分が亡くなるまで受給が続くのか、それとも自分の死後も配偶者が亡くなるまで受給が続くのか(Survivors benefit)かを選べるケースがほとんどです。

3.Survivors Benefitを選ぶとどうなる?

何歳まで生きるか分からない場合、亡くなるまで年金として毎月受け取ることを希望する人は多いでしょう。我が家もそうです。

しかし、自分が死ぬまでなのか、それとも配偶者が死ぬまでなのかは、できるだけ早い段階で夫婦で話し合っておく必要があります。相手を信頼しきっていると、稼ぎがない配偶者は地獄を見ることになりかねません。

働いていた自分が死ぬまでの受給、自身より長生きする配偶者が死ぬまでの受給を比べると、毎月の受給額は10%~15%程度変わります。そう、減ります。だから人によっては、配偶者のための遺族年金は付けずに、その代わり多めの金額を自分の生きている時にもらおうと考える人がいるのです。

例えば「自身が亡くなるまで」を選択すれば毎月$3,000受給できる人がいたとしましょう。自分の死後に残される配偶者の面倒を見ようとすると、毎月の受給額は10%~15%下がるため、$300~$450程度少なくなります。

それだけではありません。仮にそのオプションを選んでも、自身の死後に配偶者が同額を受給できるというわけではなく、多くの場合には、自身が受給していた金額の約半額程度となります。

つまりこの場合には、毎月$3,000もらえるはずの受給額が、遺族年金にすると受給額が減って$2,500程度となってしまい、自身の死後に配偶者が受け取れる額は$1,300程度になるというわけです。

この差をどう受け止めるかは、世帯ごとに様々だと思います。

4.自分勝手な男が多くて制度がチェンジ

もしも妻が専業主婦だとしたら、妻にとっては年金に関してもすべて夫頼りとなります。妻が稼いで夫が専業主夫の家庭なら、立場は逆ですね。

「きっと夫がきちんとしてくれているだろう」と思っていても、夫がSurvivors Benefitを選択しなかった場合、夫が亡くなると妻の手元に入ってくるのは、公的年金以外はゼロです。

「あのクソ野郎!死んでからとうとう本性を見せやがったな!」

と憤っても、後の祭りです。

私の知り合いでも、そういう方がいました。夫が亡くなってから遺族年金が入ってこなくなり、公的年金だけを月に800ドル程度受給している、とその女性はおっしゃっていました。ちなみに、公的年金は、遺族年金をつけないという選択肢はありません。そのおかげで、彼女は800ドルを受給できているのです。もしも公的年金に遺族年金を付けないという選択肢があったとしたら、彼女の亡くなった旦那様はおそらく、「つけない」を選択していたかもしれません。そうしたら、彼女は高齢で無収入、路頭に迷うことになります。

体は健康でまだまだ元気な方でしたけれど、生活ができないため、泣く泣く子供の家に同居させてもらっているそうです。子供がいただけラッキーでした。そして、子供が受け入れてくれたこともまた、ラッキーだったと思います。

ちなみに、こういう人は、決して少数派ではありません。「自分が稼いだ金なのだから、自分でどう使おうと勝手だろ!」という考え方の人が少し前のアメリカにはとても多かったらしく、そのせいで路頭に迷う未亡人が多発してしまったのです。

そのために現在では、Survivors Benefitを選択しない場合には、配偶者の署名捺印だけでなく、公証人の元で公証してもらうという面倒な手続きが必要となりました。