アメリカの医療が驚くほど高いことは、皆さんもご存じですよね。健康保険によってどこまでカバーされるかは千差万別なので、同じ病院で同じ医師から同じ治療を受けても、40ドル程度(5,000円ぐらい)しか払わない人もいれば、400ドル(約5万円)も払わなければいけない人もいます。無保険だとクリニックに行っただけで1,000ドル(12万円程度)と言われても、アメリカでは誰も驚きません。
そんなアメリカでは、高い医療費をできるだけ安くするために、日帰り手術がとても多いです。今回は、私の息子が足首を骨折したときに受けた日帰り手術について、エピソードをご紹介します。
目次
1.骨折に対してのんびりな医者
息子は過去に2回骨折しています。どちらもハイスクールのフットボールが原因です。1度目は右手の甲(Metacarpal)の骨でした。学校には資格を持つトレーナーがいるのですが、このトレーナーは「重度の打撲」という診断を下してくれました。そして、ご丁寧に、マッサージも施してくれました。
念のために、とアポが不要のUrgent Careへ行ってレントゲンを撮ったところ、骨折と分かったのです。Urgent Careの医師は、整形外科にレントゲン写真を送るので、そこから電話があるはずです、とおっしゃってました。
しかし、当日に電話がないどころか翌日になっても電話はありませんでした。医療に関しての、まぁアメリカあるあるなのかもしれません。
待たない主義の私は、さっさと自分で整形外科へ電話してアポを取りました。しかしそのアポは、3日後。もっと早く診てほしかったので、一か八かクリニックまで乗り込んで、泣き落とし作戦&直談判を決行しました。その甲斐あって、アポは翌日に変更できました。

ちなみに、Urgent Careの医師が送ったレントゲン写真、全然違うクリニックへ送られてたそうです。はい、医師でも役立たずはいらっしゃいます。
しかも、そのレントゲン写真を受け取った別の整形外科からは、なんと2週間後に電話がありました。「もたもたしてると骨が自然にくっついてしまうので、1週間後にアポいれますか?」というものでした。
正直、あきれてしまいました。骨折してから3週間もたてば、思春期の子供の骨は、かなり固まるでしょう。赤ちゃんなら骨折が完治してるレベルです。すでに別の整形外科に行っていたので、丁寧にお断りしましたが。
この時の骨折は、骨折といってもひびが入っているだけなので、ギブスで固定して6週間かけて完治しました。それでも右手を折ってしまい、学校で何も書くことができず、とても不便な思いをしたようでした。
そんな時にたまたまアートの授業で、ペットの絵をエッジングで描くプロジェクトがありました。彼が左手で描いたその作品は、今でもフレームに入れて我が家の家宝となっています。
2.2度目は足首をやりました
2度目の骨折は、足首でした。フットボールの練習中に背後からタックルを受けて転倒。その時にくるぶしが割れました。
この時にも、例のトレーナーは「重度の打撲」と診断。そしてやはり、悲鳴を上げる息子に対してマッサージを施しました。
私は前回の骨折からの経験を踏まえ、もうUrgent Careもすっ飛ばして、すぐに整形外科へアポを入れました。

レントゲンを撮ると、やはり割れてました。複雑骨折とか、骨折して足が変形しているというわけではなかったため、医師は息子に2つの選択肢をくれました。
- ギブスで固めて放置して治す
- 手術して治す
この時彼は、ちょうどハイスクールのJuniorを迎える直前の夏でした。Juniorのシーズンはハイスクールのアスリートにとっては、下手したらSeniorよりも大切といっても過言ではないほど重要です。大学からのスカウトを考えると、どうしてもシーズン中ずっとベンチというわけにはいかない時期でした。そのため彼は、手術をしてしっかり治すという選択をしました。
3.手術は当然の日帰り
アメリカでは、手術は医師のクリニックでは行いません。日本だと、クリニックの中の1部屋をオペ室にして、そこで手術してくれることが多いのですが、アメリカでは手術のみに対応するHospitalがあり、患者と医師はそこに足を運びます。
息子が指定されたHospitalは、外来手術オンリーの病院で、病床は一つもありませんでした。
手術の日、指定された病院に行くと、整形外科の手術待ち患者様たちが、おそらく30人以上はいました。それぞれがオペ準備室に通され、スタンバイします。そして医師は、まるで流れ作業のように、オペ→家族へ説明→次のオペ、という作業をきっと丸一日続けるのだと思います。
手術当日、朝8時にチェックインするようにと言われ、その通りに病院へ行きました。そこから待つこと4時間、ようやく息子の順番が回ってきたときには、正直すでに息子も私も疲労困憊でした。
手術の時間は1時間程度だったと思います。手術は、割れたくるぶしにネジを2本埋め込む手術で、難易度はそれほど高くないと医師がおっしゃっていました。なので、私も心配せず、待合室でスマホで日本のバラエティを見てゲラゲラ笑いながら待ってました。
手術を終えた息子とは、リカバリールームと呼ばれるドアなしの個室みたいなところで再会しました。
かかったお値段は?
日帰りの手術で支払ったお値段は、我が家の健康保険では500ドルぐらいでした。
外来手術をする病院からの請求 | $200 |
執刀医からの請求 | $200 |
麻酔医からの請求 | $100 |
そのほか、松葉づえや処方箋 | 数十ドル |
この金額は、あくまでも我が家の健康保険を適用した場合です。うちでは自己負担額が少ないHMOプランに夫の職場経由で加入しています。その代わり毎月の掛け金はやたら高額ですが、いざというときには自己負担は少なくなるという仕組みです。
アメリカの健康保険についてはこちらから
4.大変なのは術後だった

息子が受けた手術を日本の病院で受けると、入院期間は2週間ほどだそうです。しかしここはアメリカ、リカバリールームに運ばれた後は、目が覚め次第ご自由におかえりくださいという感じです。
松葉づえをいただいて、病院の入り口まで息子を車いすに乗せて搬出しましたが、可哀そうな息子は、まだ意識が朦朧としていますし、激痛で歩ける状態ではありません。しかし体は私よりも大きく、抱っこできるサイズではなかったので、なんとか自分で車いすから車に乗り込んでもらいました。
場所がどこであろうと、術後は安静にしていなければいけません。それなら病院よりも自宅のほうが良いでしょう、というのがアメリカ流の考え方なのでしょう。確かに、精神的には自宅のほうが安心ですし、リラックスもできると思います。それに、安静にしろと言われなくても、術後は痛いので、安静にすること以外には何もできません。合理的という点では、自宅で治癒するのもアリだと思います。
ちなみに手術後1週間目には、術後の経過をチェックするために受診しました。その時は、さすがに痛みは落ち着いていましたし、本人は足を引きずりながらでも歩けていました。
医師の話によると、スクリューを外す手術は不要とのこと。ちなみに、日本でもそういう手術をしてくれる病院はあるようですが、数か月後にネジを除去する再手術をする病院が多いようです。アメリカでは再手術の話を聞いたことがないので、おそらく手術の回数はできるだけ少ない方向で調整するのがデフォルトなのでしょう。
その日の受診では、足を固定させるためのブーツをいただき、歩き回る時に履いてくださいと言われました。着脱できるブーツなら、お風呂の時には脱げばよいので、固定ギブスよりは使い勝手は良かったですね。
アメリカで骨折すると、ケースバイケースですがリハビリを受けることができます。受けることができるといってももちろん健康保険が適用される有料の医療サービスなのですが、高齢の人かハイスクールのアスリートたちは、このリハビリを受ける人が多いようです。
息子も受けました。週5回のリハビリを4週間、トータル20回でお値段800ドル(10万円程度)。やはりアメリカの医療は高いと思いました。