アメリカの大学生は、日本の大学生よりもはるかに多くの勉強が求められます。日本の大学へ進学した私自身と、アメリカの大学へ進学した息子様を比較しても、その差は一目瞭然でした。
日本では、大学に入る前の受験がものすごく大変だと言われています。私も受験は経験しましたし、確かにそれはその通りだと思います。
しかし私が大学受験の時にした勉強量と、息子が大学に入ってからしている勉強量とでは、やはり息子の勉強量の方が多いですね。
そんな勉強まみれの学生生活を余儀なくされるアメリカの大学では、精神的なバランスを崩してしまうのでしょうか、自殺者がとても多いことでも知られています。
目次
1.キャンパスでShooting予告。そしてロックダウン。
数か月前、息子様が通う大学で、Shootingの予告がありました。大学側はすぐに地元の警察へ連絡して、キャンパスをロックダウンという措置をしました。ロックダウンというのは、建物も敷地もすべて封鎖して、誰も行き来できない状態にすることです。
息子はちょうどその時、すでにキャンパス寮にいたため、特に精神的なストレスを感じることもなく、普段通り勉強をしていたそうです。普段と違う事と言えば、カフェテリアへ食事に出かけられなかった、というぐらいでした。
しかしShootingの予告があったのは午後の早い時間帯。授業中の生徒も当然いましたから、ターゲットとなった建物は、地元の警察官だけではなくFBIも大量にやってきて封鎖され、トイレにも行けないような状況となってしまったそうです。
こうしたロックダウンは、アメリカの学校では日常茶飯事とまではいかなくても、それほど珍しくありません。世間をにぎわすビッグニュースにもなりません。予告があれば建物をロックダウンというのは、すべての高校でルールが決まっていて、危険な要因がないと確認されるまでは、誰もそこへ入ることも出ることもできません。
そして。
翌日には、そのShootingの予告をしたという犯人が逮捕されました。
犯人はなんと、大学キャンパス内で生活している学生の一人だったのです。
それを聞いて、私はなんだか複雑な心境になってしまいました。
だって、もしその犯人が精神的に追い詰められた上での犯行なら、誰に起こってもおかしくないと思ったからです。
はい、アメリカの大学生活は、それほど精神的なストレスが大きな世界なのです。
2.生徒はいつも追い詰められている
息子様の大学に限ったことではないでしょう。多くの大学では、学生は週末でも勉強漬けの毎日を余儀なくされます。昼間は授業に出席し、空いている時間は図書館で勉強したり、オフィスアワーと呼ばれる質問タイムには、皆が教授の元へ足を運んでいろいろと質問します。
勉強は、それだけでは終わりません。毎日、大量の課題が出るため、息子様は毎日、週末も含めて深夜まで勉強オタクな毎日を過ごしていました。
「QOLを大切にした方が良い」
「オンとオフのバランスをとればいいのに」
という声が聞こえてきそうですね。
はい。そんなことは、学生は百も承知です。しかし、無理なのです。のんびりリラックスしていると、単位が取れません。だから、壊れそうなギリギリのところでみんなが踏ん張り、必死に勉強をするのです。
そんな毎日を過ごす中では、当然、精神を病んでしまう子はいるものです。私自身も、息子様が必死に頑張る姿を見て、遠くからではありますが心配してきました。
そして、あともう少しで卒業だというタイミングで聞いたShooting予告事件。皆がギリギリのところで頑張っているからこそ、誰がああいう状態になってもおかしくないと、私はその時思いました。
勉強だけがストレスの原因とは限らない
一日のほとんどを勉強して費やすのですから、勉強がストレスの大きな原因となっていることは、言うまでもないことだと思います。
しかし、勉強だけではない点も、知っておかなければいけません。
例えば、人間関係の悩みとか、ホームシックとか、恋人と別れたというのも、きっと精神的なストレスだと思います。学校の雰囲気によっては、肌に合わないとか、環境になじめないという人もいるかもしれません。
3.大学での自殺者は多い
アメリカの大学は、他のライフステージと比較しても自殺者が多いことで知られています。大学生の16%はうつ病を患っており、その多くは大学生になってから発症したという統計もあります。
実際の数を見ると、自殺未遂を試みる学生の数は全米で年間24,000人程度、そのうち1,100人は自殺に成功しています。
また、日常的に大きなストレスにさらされる大学生活の中では、どうしても入学前と比較すると自殺のリスクは高くなってしまいます。
- 女子は男子よりも自殺未遂リスクが2倍から3倍も高い
- 男子は女子よりも自殺による死亡率は4倍から6倍高い
- 学生の12%は在学中に真剣に自殺したいと考えている
- 学生の26%は、頻繁に自殺したいと考えながら学生生活を送っている
息子様の大学でも、これまで何回か自殺未遂者が出たというお知らせが回ってきました。自殺で亡くなった生徒が出ていないことは不幸中の幸いですが、自殺未遂でも本人は相当に追い詰められていたのだと察します。また、精神的ストレスからドラッグに手を出してしまう生徒も、数多くいます。
4.大学の対策とは?
大学生が精神的に病んでしまうことは、今に始まったことではありませんし、特定の大学に限ったことではありません。だから多くの大学では、色々な対策を講じています。
- キャンパス内のクリニックでカウンセリングを受けられる。無料。
- 定期的にセラピードッグがキャンパスへ来る
- キリスト教やユダヤ教ではキャンパス内に神父がいて、話を聞いてくれる
- 気分転換のためにイベントが開催される
などが、息子様の大学で実際に行っている対策です。
全米どの大学でも、勉強がハードすぎるから少しマイルドにしますね、という対策はしていません。少なくても、息子が通う大学では、そういう対策は検討すらされてはいません。
「大学は精神的ストレスの強い場所なので、自分なりにバランスを取りながら乗り越えてください」
というのが、大学側の見解です。
これから大学へ子供を見送る方は、親と離れて生活するだけでなく、ストレスまみれのキャンパス生活が子供に与える精神的な影響を考えた上で、できる範囲で子供の心のサポートをしたいものですね。