数年前にテキサスの州知事が、メキシコ国境から大量に押し寄せる移民が手に負えないという理由で、移民たちを片道切符のバスに乗せて、ニューヨークやワシントンDCなどに送り付けたというニュースが話題となりました。
この時にバスで全く知らない遠方へ送られたのは移民だったわけですが、実はアメリカでは30年ほど前から、ホームレスを片道切符のバスに乗せて別の都市へ送る移住計画なるものが行われています。
目次
1.ホームレス移住計画とは?
ホームレス移住計画とは、州が行っているプログラムではなく、各自治体が行っているプログラムです。ホームレスが多く対応しきれない都市部では、このプログラムに対して多くの予算を割いている所も少なくありません。例えば
- オレゴン州(ポートランド)
- ワシントン州(シアトル)
- カリフォルニア州(サンフランシスコ、チコ、サンタクルーズ、サンタモニカ、ロングビーチなど)
- コロラド州(デンバー)
- アリゾナ州(フェニックス)
- ネバダ州(リノ)
- ユタ州(ソルトレイクシティ)
- フロリダ州(サラソタ、キーウェスト、ウェストパームビーチなど)
- ニューヨーク州(ニューヨークシティ)
などは、このプログラムに積極的に取り組んでいます。多くはホームレスの数が多い自治体なのですが、ユタ州のソルトレイクシティのようにホームレスはそれほど多くない自治体でも、積極的に別の場所へホームレスを移住させるプログラムはあります。
2.ホームレス移住計画の目的
この移住計画は、ホームレスに対して目的地までの片道切符を無料で渡すというシンプルなものです。多くの場合、ホームレスは生れ育った故郷や、家族や友人などお世話してくれる人がいる場所へ戻ることを希望し、このプログラムを自主的に利用するのだとか。
ただし、ホームレスなら誰でも利用できるわけではありません。バスの到着地に受け入れてくれる人がいる事を条件にしている自治体が一般的です。憧れのフロリダへ行きたいという理由だけでは、残念ながらバスの無料チケットはもらえないというわけですね。
またこのプログラムは、嫌がるホームレスを無理やりバスに押し込めて「あばよ!」と姥捨山へ捨てるわけではありません。あくまでも人道的な目的で行われています。
ただし、知っておかなければいけない落とし穴もあるそうです。それは、「二度とこの場所に戻ってきません」という書類に署名させられることです。すべての移住プログラムではないものの、バスのチケットと交換にそうした書類に署名すると、仮に戻って来てもシェルターなどには入れてもらえなくなります。
3.ホームレス排除のために行う自治体もある
自治体の中には、何かと面倒なホームレスの数を減らしたい目的で、自治体からホームレスへ移住を呼びかけるケースも少なくないのだとか。もしも受け入れ先がないホームレスにうまい話を持ち掛けて排除しようとたくらんでいるのなら、それこそ現代アメリカの姥捨山のような話ですね。
しかも自治体によっては、ホームレス移住プログラムの予算を組まず、住民たちへ「寄付してくれたらホームレスを排除して差し上げましょう」と触れ込んだり、戻ってきたホームレスを契約違反として逮捕することもあるそうです。
それがホームレスにとって良いのか悪いのかは、私にはわかりません。