パートナーが日本人でもアメリカ人でも、老後は住みやすい日本へ永久帰国したいという人は少なくありません。もしも現実的に可能なら、素晴らしいと思います。
しかし、もしも日本で暮らしながら配偶者がアメリカのソーシャルセキュリティ年金を受給し、配偶者が先に亡くなったら自身はその遺族年金で生きていこうと思っている人は、注意が必要です。
なぜなら、配偶者の遺族年金を受け取る際には、自身が亡くなるまでお世話になろうと思っている「将来の受給予定年金」が、まるまる資産と見なされて課税財産となってしまうからです。
「嘘つくな、そんな話聞いたことないぞ」
と憤慨する人はいるかもしれません。しかし残念ながら、国際結婚組ではすでに複数の人がこのトラブルに巻き込まれていて、大変な経験をしています。
目次
1.なぜアメリカのソーシャルセキュリティ年金は課税対象なのか?
日本の厚生年金は、遺族年金が課税対象財産とはみなされません。遺族年金に対しては、所得税も相続税もかかりません。
これは、相続税法によって「契約に基づかない権利」に該当するからですね。
しかしアメリカのソーシャルセキュリティ年金の受給権に関しては、残念ながら「契約に基づかない権利」には該当しません。
とりあえず日本とアメリカには年金の協定があるので、遺族年金に対しての所得税に関しては、非課税です。
でも、相続税は別。そしてこの相続税がクソ恐ろしい金額なのです。
2.遺族年金にかかる相続税はどうやって計算する?
相続税の計算方法が、本当にクソです。
相続法24条では、ソーシャルセキュリティ年金のような海外からの年金を終身定期金に分類しており、以下↓のうち、最も高い金額を相続資産としています。
①当該契約に関する権利を取得した時において当該契約を解約するとしたならば支払われるべき解約返戻金の金額
②定期金に代えて一時金の給付を受けることができる場合には、当該契約に関する権利を取得した時において当該一時金の給付を受けるとしたならば給付されるべき当該一時金の金額
③当該契約に関する権利を取得した時におけるその目的とされた者に係る余命年数として政令で定めるもの に応じ、当該契約に基づき給付を受けるべき金額の1年当たりの平均額 に、当該契約に係る予定利率 による複利年金現価率を乗じて得た金額
毎月受け取る遺族年金は、↑の③で計算されます。
具体的な計算方法は、↓↓です。
- 日本人男性・女性のうち、自身が該当する平均寿命を抽出(2024年時点では、男性なら81歳、女性なら87歳)
- その年齢まで生きると仮定し、それまで受給するであろう遺族年金額の合計
- 相続した時点での為替レートで円へ換算
実際に87歳まで生きるかどうか分からなくても、生きるだろうという仮定に基づいて「受給見込み額」を計算するわけですね。
ちなみに、これはソーシャルセキュリティ年金だけではありません。アメリカの企業から厚生年金的なものを受け取る場合には、それも相続税の課税対象となります。
まだあります。
アメリカの企業の中には、死亡一時金としてお見舞金が出るところもあります。私の夫が勤務している企業でも、年収1年分が出ます。ソーシャルセキュリティも、数百ドルですが一時金が出ますよね。
それに対しても、容赦なく相続税はかかります。
しかも日本の相続税法で計算されるので、控除枠はスズメの涙以下で、私達は持ってもいない数千万円~数億円を請求されることになるかもしれません。
3.回避策はあるのか?
これを回避するためには、日本の相続税法の対象外となるしかありません。
- 過去10年間、日本に居住していた実績がない
- 相続のタイミングで日本に住んでいない
これをクリアすれば、とりあえずは未来に受け取るソーシャルセキュリティ遺族年金に対して相続税を払えと言われることはなくなります。
しかし他の記事でもご紹介していますが、「日本に居住していた実績」に関しては、住民票が入っていたかどうかで判断されるケースが多いので、注意しましょう。
老後に向けての計画は、まだ働いているうちから少しずつ入念に立てるのが賢明かもしれませんね。