Traditional IRAが税金控除されない?どういうこと?

アメリカの公的な個人年金として知られているIRA。職場で提供している年金積立口座とは完全に別のもので、自身で金融機関にIRA口座を開き、そこに自分自身でコツコツと積み立てるというタイプの金融商品ですね。

このIRAには、Traditional IRAとRoth IRAとがあります。

このうち、Traditional IRAは、そこにお金を入れると、その金額分を課税対象所得から引いてもらえるというメリットがあるため、人気があります。

Traditional IRAとRoth IRAについてはこちらから

しかし、このTraditional IRAには、口座にお金を入金しても非課税にならないことがあります!せっかく税金対策としてTraditional IRAにお金を入れているのに、控除にならなければ意味がないじゃないか!という方のために、今回は、どんな場合に控除にならないのか、またその場合にはどうすれば良いのかをご紹介します。

目次

  1. 高額所得者は要注意
  2. 例外もある
  3. Non-Deductible Contributionの行方

1.高額所得者は要注意

控除されるはずのTraditonal IRAでも、以下の条件を満たすと、部分的に控除されなかったり、まったく控除されない、なんて事態が起こります。

  • 自分もしくは配偶者が、職場の年金プラン(401Kなど)に加入している
  • 所得が高額

詳しくは、↓↓をご覧ください。

Filing status2024 traditional IRA income limitDeduction limit
Single or head of household (and covered by retirement plan at work)$77,000 or less.全額が控除
More than $77,000, but less than $87,000.部分的に控除
$87,000 or more.控除なし
Married filing jointly (and covered by retirement plan at work)$123,000 or less.全額が控除
More than $123,000, but less than $143,000.部分的に控除
$143,000 or more.控除なし
Married filing jointly (spouse covered by retirement plan at work)$230,000 or less.全額が控除
More than $230,000, but less than $240,000.部分的に控除
$240,000 or more.控除なし
Married filing separately (you or spouse covered by retirement plan at work)Less than $10,000.部分的に控除
$10,000 or more.控除なし

2.例外もある

ちなみに、上記の条件を満たしてNon-Deductible扱いになってしまっても、例外的に控除してもらえる場合があります。それは、

配偶者が専業主婦(主夫)の場合

です。

稼いでいる側は、上記の条件を満たすとTraditional IRAへお金を入れても無慈悲に控除ナシの扱いになる可能性はありますが、配偶者が無収入なら、無収入の配偶者がTraditional IRAへ積み立てた金額に関しては、全額が控除されます。

例えば、

夫の収入が$150K、自分は専業主婦、で共に$7,000ずつTraditional IRAへ入れたとしましょう。この時、

夫のContribution分$7,000→控除ナシ

自分のContribusion分$7,000→全額が控除される

となります。

3.Non-Deductible Contributionの行方

もしもTraditional IRAへの積立が、Taxを申告するタイミングで控除されないと知った時、どうすれば良いのでしょうか?

控除されなくても、そのままTraditional IRAに積み立てるという方法もアリです。

しかし、控除されると思っていた積み立てが控除されず、しかもそれがTraditional IRAの場合には、将来いつか引き出す時に税金を払えと言われる可能性があります(もちろん打開策はあります)。

後から面倒な作業や手続きをするのはイヤだな、という人は、Traditional IRAへの積み立てが控除されないと知ったタイミングで、

Roth IRAへ切り替える

という方法がおすすめです。

IRA口座への出し入れは、1月1日~翌年4月15日まで、の期間が設定されています。つまり、税金の申告手続きをしながら、Traditional IRAへ入れたけれど気が変わったのでRoth IRAへ切り替えることも可能です。

Roth IRAに関しては、積み立てる際に税金の控除は一切ありません。しかし、増える利息に対して税金がかかることもなければ、引き出すときにTraditional IRAのように税金を課せられる心配もありません。

この点で、Roth IRAはとても便利ですね。

日本人は長生き!個人年金は必要?

アメリカ人の平均寿命は、男性は73歳、女性は79歳です。しかし私たちは日本人。アメリカへやって来てアメリカっぽい食事や生活習慣をしているとはいえ、このぐらいの寿命で逝くとは、考えにくいですよね。

長生きをして不安になる事と言えば、やはり健康とお金のことではないでしょうか。特にお金は、貯金を切り崩して老後の生活費に充てる人が多いとはいえ、長生きしそうな自分としては、そんなことをするのは不安でしかありません。

死ぬまで定額が入り続ける年金、欲しいですよね。

目次

  1. アメリカにも年金はある!
  2. 個人で年金を購入することも可能

1.アメリカにも年金はある!

アメリカの年金といえば、ソーシャルセキュリティ年金を思い浮かべる人が多いと思います。はい、これは死ぬまでお金が入ってくる公的年金ですね。

この年金は、社会人になってからほぼすべてと言っても過言ではない、35年間分の年収に応じて受給額が計算されます。

しかし残念ながら上限があり、2024年現在では62歳から受給したい人なら上限は$2,710、67歳からなら$3,822、そして70歳まで待ってから受給を開始しても最高で毎月 $4.873 までしか受け取ることはできません。

ちょっと待って、それじゃ生活できない!

という人は多いでしょう。

ソーシャルセキュリティの次に目を向けるのは、職場が提供している厚生年金的な年金制度です。多くの場合、職場がどこかの保険会社と提携しており、年金の受給はその保険会社から受け取ることになります。

いくら納めたらいくら年金を受給できるかは、勤続年数や年収によって異なります。しかし、個人で年金商品を購入するよりも割が良いケースが多いのでおすすめです。

職場によっては、勤続年数が5年以上とか10年以上と言った条件が課せられていることもあるので、その辺は注意してくださいね。

2.個人で年金を購入することも可能

日本にもあると思いますが、アメリカにも個人年金という保険商品があります。これは、死ぬまでずっと入ってくる年金商品を購入するというものですね。

豊かな資金を持っていて、ソーシャルセキュリティ年金と職場の年金だけでは不安な人や、会社から年金を受け取ることができない人などは、検討すると良いかもしれません。

個人年金のメリット

  • 生涯年金なので、長生きしても経済的には安定する
  • 夫婦で購入できる
  • 長生きすればするほど受給する総額が増えてお得

個人年金のデメリット

  • 購入にまとまった資金が必要になる($100,000~という商品が多い)
  • 元が取れない可能性は十分にある
  • 割に合わないと感じる人は多い

ケース・スタディ

購入する金額$100,000に対して、毎月受給できる年金額がいくらになるかは、保険会社や金融機関ごとに異なります。

目安としては、65歳の男性が単独で加入した場合の受給額は$530程度、65歳の女性が単独で加入した場合には毎月$500程度、夫婦で加入した場合には毎月$430程度が受給額となるところが多いようです。

これを単純計算すると、夫婦で$100,000払い込んで年金として受け取る場合には、19年~20年以上(つまり84歳から85歳ぐらいまで)受給し続ければ、元が取れるという計算になります。

85歳か、、、うーん、、と考える人は多いでしょう。

長生きの日本人でも、85歳はけっこうクリアするのは簡単ではないハードルだと思います。

仮に、自身でこの$100,000を投資し、リターンが10%だとするなら、毎月$830ぐらいが利息として入ってくる計算となります。

これだけを見ると、自身で投資をしておいた方が、個人年金よりもはるかにお得に見えます。元本保証ではなく、毎年リターンが10%期待できないリスクもあるとはいえ、これは、かなり迷う所かもしれません。

$100,000を自分で運用しながら毎月少しずつ利息を年金として引き出して使うのか、それとも保険会社というプロに預けて運用してもらいながら、死ぬまで年金として受け取り続けるのか、決断するのは自分自身、もしくは夫婦でよく話し合ったほうが良いですね。

公的年金と働く: 知っておくべきルール

アメリカの公的年金は、ソーシャルセキュリティ年金とよばれています。働いて所得税を納めている人なら、毎年ソーシャルセキュリティオフィスから明細書が発行されるので、現在の経済状況が定年まで続くと公的年金受給額はいくらになるというざっくりとした金額が分かります。

公的年金の計算は自分でもできます。こちらからどうぞ。

目次

  1. 受給開始年齢によって金額が変わる
  2. 年金受給は待った方が良いのか?
  3. 年金を受け取りながら働くことはOK?

1.受給開始年齢によって金額が変わる

ソーシャルセキュリティ年金は、早ければ満62歳から受給ができます。Full Retirement Ageと呼ばれる満額もらえる年齢は生まれた年によって異なるものの、66歳か67歳です。

この年齢よりも早く受給を開始すれば、金額は少なくなりますが、受給開始年齢を遅くすれば、金額はアップします。

それでは、早くもらう場合と遅くもらう場合には、どのぐらいの違いがあるのでしょうか?

仮に62歳から受給する場合、Full Retirement Ageまで待つ場合よりも受給金額は30%程度も少なくなります。

一方、年金受給開始額を70歳まで待つと、受給できる金額はFull Retirement Ageよりも24%程度多くなります。

2.年金受給は待った方が良いのか?

62歳と70歳の間で受給が開始となるソーシャルセキュリティ年金ですが、何歳でもらい始めるのがベストかについては、その世帯ごとに状況は違うので、ひとえに線引きはできません。

しかし、もしも62歳で定年する予定にしているのなら、毎月の受給額が減ったとしても受給を開始したほうが、経済的にメリットとなることは多いでしょう。

もしも62歳で受給を開始した場合、受給額はその少ない金額でロックインされてしまいます。67歳や70歳になったからと言って、計算し直してくれたり、金額をアップしてくれることはありません。ずっと死ぬまで、その金額です。

さらに、配偶者が受け取る配偶者年金の計算にも、その少ない金額を基準として計算されることになります。

例えば、67歳で定年すれば毎月$2,000ドルもらえるはずの人が62歳から受給を開始した場合、もらえるはずの$2,000はペナルティが差し引かれて$1,400程度になるかもしれません。

配偶者年金は、この$1,400を基準に計算します。配偶者がFull Retirement Ageの67歳まで待てば、配偶者が受け取れる金額は半額の$700です。もしも配偶者も62歳から受給を始めたいのなら、この$700からペナルティが差し引かれて、配偶者の受給金額は$500程度となります。

3.年金を受け取りながら働くことはOK?

公的年金を受け取っていたら、他に仕事をしてはいけないという法律はありません。公的年金だけでは生活が成り立たない人は多く、年金を受給しながら働いているという人も数多くいます。

働くこと自体は問題ないのですが、公的年金を受給しながら働くと、その労働収入に対してペナルティがかかる点は、あらかじめ理解しなければいけません。

例えば、労働収入が年間で$21,240(2023年度)を超えると、超えた分$2ドルに対して$1ドルが公的年金から差し引かれます。つまり、$21,240以上稼ぐと、超えた分は半分がなかったことになるわけです。

高齢者の収入からふんだくるなんて、何事だ!!

という罵声が聞こえてきそうですね。しかしこれはルールなので、誰にも止めることはできませんし、抗議とか交渉をしても無駄です。

そのため、年金を受給しながら働くなら、年収が$21,240以下になるように調整することを強くお勧めします。

ソーシャルセキュリティ公式サイトはこちらから

アメリカにも個人年金がある?必要?

アメリカの年金には、いくつか種類があります。

  • 公的な年金(ソーシャルセキュリティ)
  • 企業の年金制度(401Kや加入すると勤続年数に合わせてもらえる厚生年金的なもの)
  • 私的な年金(IRAなど。個人が自身で購入する。)

今回は、3つ目の個人年金について簡単にご紹介します。

目次

  1. アメリカの個人年金の特徴
  2. 個人年金って必要?

1.アメリカの個人年金の特徴

アメリカの個人年金は、証券会社もしくは保険会社で販売されています。IRAなどは良く知られていますが、IRAは年金のように死ぬまで受け取れるわけではありません。何歳まで生きるか分からない長寿な私達にとっては、やはり少額でも死ぬまで受け取れるタイプのAnnuityタイプの年金の方が、ありがたいものです。

証券会社の個人年金商品

日本の個人年金商品と近いのは、こちらです。一定期間コツコツと積み立てるタイプもあれば、Single Premium と呼ばれるように、掛け金をまとめて一括で預けて寝かせ、増えた分も合わせて年金として受け取れるというタイプもあります。

最低いくらから一括預金できるかは、金融機関によって異なります。2万ドルとか3万ドル程度で始められるものから、10万ドルスタートというものもあります。

個人年金の特徴は、年間の預け入れ上限がないことです。税金の控除などもありませんが、潤沢な資金がある人ならたっぷり預け入れて自身の老後に備えることができそうです。

保険会社の個人年金商品

保険会社が販売する個人年金商品の多くは、IRAの範囲内で少額を積み立てるという商品が多いですね。自分自身でIRAを積み立てる場合と何が違うのかはビミョーですが、プロに任せるのが安心という人にとっては、便利なのかもしれません。

→IRAについてはこちらから

2.個人年金って必要?

個人年金が必要かどうかは、色々な要素によって変わります。

  • 定年後のAnnuity年金がいくら入ってくるか
  • 個人年金に預け入れるまとまった資金はあるのか

あたりが、判断基準となりそうですね。

定年後のAnnuity年金がいくら入ってくるか

よく新聞などで、アメリカのどの州でリタイヤするのが一番経済的にお得か、なんていう記事が掲載されています。また、定年するまでに2ミリオン貯めても足りない、なんて非現実的かつ絶望的な展望を涼しい顔で語る専門家もいたりしますよね。

しかしこれはすべて、毎月死ぬまで必ず入ってくる年金を含めていない仮説です。職場によっては、何歳から年金が毎月いくら入ってくるというリタイヤメントプランが提供されており、転職しても各職場で加入して受給条件を満たしていれば、定年後には複数から年金が死ぬまで入ってくることも十分に可能です。

例えば、職場からの年金制度で毎月$2,000が入ってくるとしたら、

  • 1年間で $2,000 x 12 = $24,000
  • 65歳から85歳までの20年間では $24,000 x 20 = $480,000

となります。つまり、毎月$2,000の年金を20年間必要だとしたら、職場のAnnuityがなければこの金額を貯金や投資で自分で準備しなければいけません。しかし年金として受け取れるなら、持っていなくても自分が生きていれば入ってくるのですから、経済的にはずいぶん助かりますよね。

老後の資金計画を立てる際には、老後にいくら必要かという記事に惑わされて不安になるのではなく、自身の生活にはいくらかかるのかを客観的に計算した上で、それをどの年金でどこまで補えるのかを計算しながら、資金計画を立てることをおすすめします!