アメリカでは給食費の未払いトラブルが起こらない?その理由とは?

日本の学校では、子供たちが食べる給食にかかる費用は、親が負担します。給食がなければ、親が毎日お弁当を作らなければならず、大変な労力や時間がかかってしまいますよね。

それに、学校で提供される給食は栄養バランスが取れているだけでなく、リーズナブルです。自治体によって毎月かかる給食費は違いますが、平均すると4,000円~5,000円程度が一般的ではないでしょうか。

しかしこの給食費、日本では未払いが大きな問題となっています。その理由は払えないとか払いたくないとか様々ですが、この未払いによって自治体は大きなダメージを受けていたり、取り立て役を仰せつかる担任の先生は、白髪が増えるような苦労を強いられています。

この給食費の未払いトラブルは、実はアメリカにはほぼありません。少なくとも、私がアメリカで子育てをしてきた中では、見たことがありません。その理由と仕組みをご紹介しますね。

目次

  1. アメリカの給食費の仕組み
  2. Free LunchとReduced Lunchとは?
  3. 該当するなら利用したほうが良い、その理由は?

1.アメリカの給食費の仕組み

アメリカでは、キンダーから大学まですべて、学校では給食を提供しています。しかし全員が給食を食べなければいけないというわけではなく、自宅からお弁当を持参する子もたくさんいます。生徒や家庭に選択権があり、家庭でお弁当を作るのが面倒な人は、給食という選択肢もあります、というスタンスですね。

この給食費は、プリペイド式になっています。親が事前にランチアカウントなるものを開設して、そこにいくらかを入金しておきます。子供は学校で給食を食べたいときに、4桁の暗証番号(PIN)を会計の時に伝えることで、子供が現金を持たなくてもランチを購入でき、学校側も未払いのリスクを回避できるという仕組みになっています。

子供が自身で現金を管理できるぐらいの年齢になると、学校側もプリペイドだけでなく、子供がその場で現金払いするという選択肢もくれます。プリペイドでもその場で現金払いでも、給食の代金は変わりません。私の息子はほとんどお弁当を持参していたので、給食代金がどのぐらいかはよく覚えていないのですが、確か1食あたり$3(500円程度)ぐらいだったような気がします。

ランチアカウントがない!子供はどうなる?

学校の新学期が始まると、子供達は学校からたくさんのお知らせをもらって帰宅します。これは、日本でも同じですよね。そのお知らせの紙の中には、ランチに関するものもあって、どのサイトでランチアカウントを開設するか、入金はどうやってできるか、といった説明が書かれています。

最初から「年間を通してお弁当を持参させます」という家庭なら、ランチアカウントを開設する必要はありません。しかし、今日はお弁当だけど明日は給食、という子や、毎日給食という家庭では、ランチアカウントを開設することが多いです。

もしも子供が給食の時間にカフェテリアに行き、給食を購入しようとしたのにアカウントに残金が入ってなかったり、アカウントが開設されていない場合には、どうなるのでしょうか?

a boy leaning his head on the table

結論から言うと、ランチは購入できません。キンダーぐらいの年齢だと、担任が慈悲の心で「今日は私が払うから」と言って購入してくれることは、あるかもしれません。しかしその場合、必ず担任から親に「ランチアカウントを開設していないので、してください」という連絡がいきます。

1回ぐらいなら、担任が費用を負担して給食を購入してくれることはあるでしょう。しかし何回も続くと、残念ながらその子はランチタイムには何も食べられない事態となります。周囲の子が給食やお弁当を食べていても、その子は何も食べられません。はい、これは親の責任なのです。

2.Free LunchとReduced Lunchとは?

「給食代が払えない貧困層に対して、それはあんまりじゃないか?」

という声があるかもしれませんね。アメリカにはそうした貧困層向けの福利厚生プログラムがあります。USDAから提供されているNational School Lunch Program(NSLP)という制度で、全米で2,300万人程度が利用しています。

公立の学校では、世帯の収入が一定以下の場合には、給食費は完全無料となります。さらに、無料になるレベルではないけれど客観的に見て生活が貧しい家庭だと認定されると、給食のディスカウント制度を利用できます。

  • Free Lunch(給食費が無料)世帯収入が、政府が定める貧困ラインの130%以内が対象
  • Reduced Lunch(割引価格)政府が定める貧困ラインの130%から185%まで

貧困ラインというのは、毎年政府が決定するもので、世帯人数によって収入のラインは異なります。

世帯の人数2022年度の貧困ライン
(Poverty Guideline)
Free Lunch
2$18,310$23,803以下
3$23,030$29,939以下
4$27,750$36,075 以下
5$32,470$42,211以下
6$37,190$48,347 以下
7$41,910$54,483 以下
8$46,630$60,619 以下
Poverty Guideline チャート

ちなみにこの貧困ガイドラインは、WICが定めるラインとは異なります。

Free LunchとReduced Lunchは、現在Webで申請できるような環境整備が進められています。それまでは、学校のカウンセラーに相談すると、必要な書類を教えてくれますし、場合によっては学校側で手続きをしてくれることもあるかもしれません。

Free LunchとReduced Lunchの申請はこちらから

Free LunchとReduced Lunch に関するガイドラインはこちらから

3.該当するなら利用したほうが良い、その理由は?

このランチプログラムは、自身の世帯が貧困層であるという一定の基準となります。子供が学校に通っている間には、とりあえず栄養のある食事ができるということは、親にとっては大きな安心感ではないでしょうか。

しかし、メリットはそれだけではありません。例えば大学入学のためのSATやACTを受験する際には、ランチプログラムで無料もしくは割引きの人は、テスト料金にも反映されます。

それに、もしも将来、子供が成長して大学を受験する場合には、Free LunchやReduced Lunchを「過去に1度でも」利用した経験があると、FAFSAをファイルする際に考慮されます。自己負担額ゼロ円と計算される可能性も大いにあります。

アメリカの大学費用についてはこちらから

アメリカのホームスクールはポジティブな不登校?メリットやデメリットも!

子供の頃には誰もが一度や二度、人によってはほぼ毎日という人もいるでしょうけれど、「学校に行きたくない」と思ったことがあるはずです。その理由はさまざまです。いじめや人間関係などもあれば、「学校の勉強が簡単すぎてつまらない」なんて理由もあるでしょう。

日本では、教育というと「学校に行く」「行かない」の2択しかありませんが、アメリカにはいろいろな選択肢があります。ホームスクールも、その一つです。

目次

  1. ホームスクールとは?
  2. ホームスクールの理由にはどんなものがある?
  3. ホームスクールのメリット
  4. ホームスクールのデメリット
  5. もしこれからホームスクールをするなら知っておきたいコト
  6. ホームスクールに優しい州はどこ?

1.ホームスクールとは?

ホームスクールとは、学校で勉強するのではなく、自宅で勉強するという教育スタイルを指します。「学校に行かずに家で勉強なんてできるわけないだろ!」というのは、私達典型的な日本人の考え方かもしれません。しかし多様性を良しとするアメリカでは、子供が学校に行かなくても、ホームスクールをすれば代替にできるという選択肢があります。

ホームスクールをしている子どもの数は、アメリカ全土で約170万人程度で、全体の3%程度です。決して多くはありませんね。このうち、圧倒的に多いのは白人世帯で、ホームスクール生徒全体の83%を占めています。日本人を含むアジア人世帯の場合には、約2%で他の人種と比較して少なめです。

誰が教えるの?

ホームスクールは、基本的に親が先生となって子供に勉強を教えます。親が自分で教科書などを選んで教えても良いですが、州ごとにホームスクール用のテキストを無償で提供してくれる制度もあったりします。

また州のカリキュラムに従ったホームスクール向けの授業を動画でやっていたり、有料でホームスクール向けの授業を動画でやっているサービスもあります。

「学校ではなく家で勉強する」場合でも、どんなカリキュラムに沿って勉強するのかという点で、たくさんの選択肢がある所が、アメリカらしいですね。

アメリカって義務教育はないの?

日本だと、小学校と中学校は義務教育と決められています。これは、「子供が教育を受ける権利」ではなく、親が子供に「教育を受けさせる義務」が法律で決められているからです。そのため、子供が勉強したくないからと言って何もしないのでは、親が法律で罰せられることになります。

アメリカの場合、州ごとに義務教育の年齢は異なります。高校までは公立の学校は無償で通えるので、高校までが義務教育だと考える人は多いですね。でも、中学校の途中で学校に行くのを辞めたとか、ハイスクールの途中で行くのを辞めたという「ドロップアウト」な状態でも、ホームスクールでカバーすることはできます。

どんな人がホームスクールに向いている?

ホームスクールという選択肢は、全ての人に与えられています。しかし、全ての家庭でホームスクールを選択することが、必ずしもベストとは限りません。ホームスクールが向いているのは、

  • 親子で先生と生徒の関係になって勉強ができる人
  • 教える人が昼間在宅でいられる家庭(通常は親、もしくは家庭教師など)
  • 落ち着いて集中して勉強できる時間と場所と確保できる人
  • 自主的かつ積極的に学びたいという気持ちがある人
  • なぜホームスクールにするのか理由が明確な人
  • 社交の場を家庭の外で見つけられる人
  • 病気やケガなどで長期療養が必要な人

などです。

ホームスクールだった偉人

発明王トーマス・エジソン

有名な話ですが、アメリカが生んだ発明王のエジソンは、学校になじむことができず、ずっとホームスクールをしていたことで知られています。彼の場合、「なぜそうなるのか」という物事のメカニズムや仕組みを知りたいという気持ちが強かったため、学校に通うと教師から「質問ばかりしてうるさい」「変わり者だ」と厄介者の扱いを受けたことがきっかけでした。

彼の母親は、そうした状況を前向きにとらえて、「行きたくないなら家で勉強すれば良い」と彼のホームスクールをサポートしたそうです。しかし当時はホームスクールのシステムやサポートなどは一切ありませんでしたから、基本的に彼は自分自身で学問を学んだのだとか。

2.ホームスクールの理由にはどんなものがある?

ホームスクールの理由は、ポジティブなものからネガティブなものまで様々です。例を挙げると、

などは、よく聞く理由です。

カリキュラムが気にいらない

私がアメリカで子育てをしてきた中では、ホームスクールを選ぶママ友も少なからずいました。その中でも最も多く耳にしたのが、この理由ですね。カリキュラムが気に入らないというのは、

  • 学校のカリキュラムが簡単すぎて先が思いやられる
  • 無駄な科目をやっているのが気に食わない
  • 家で教えたほうが短時間で効率的に教えられる

などの理由です。例えば、将来はプロアスリートを目指す子だと、学校で1日過ごす時間がもったいないから、家でサッと勉強を短時間で片づけて、午後はずっと練習に費やしたい、という家庭もありました。

また、日本では考えられない事なのですが、学校で「進化論(Evolution)」を教えるから行かせない、という家もありました。アメリカではキリスト教徒が大半で、キリスト教においては、サルが人間に進化するなんて言語道断な話なのです。キリスト教では、アダムとイブが何もない場所に突然現れる創造論(Creation)を信じているため、それに反することを教える学校や教師はけしからん、ということなのでしょう。

アメリカでも、州や学校によっては教師が「進化論」を意図的に教えないという所もあります。しかし、学校のカリキュラムに基づいて教える場合には、その方針に反対する親が、その時だけ学校を休ませるとか、その年は学校に通わせない、なんてことも意外とあります。

先生の教え方が気に入らない

先生の教え方が気に入らないという理由で、ホームスクールを始める家庭もあります。先生の教え方が下手なのか、それとも教え方ではなくてカリキュラムが気に入らないのか、理由はいろいろあると思いますが。

先生の教え方が気に入らないことは、珍しくないと思います。息子が小学校中学年だった時の担任の先生が、教師になったばかりだったようで、「よくわからない」「知らない」が口癖でした。よく分からないという理由で、生徒に勉強を教えないのです。

それでどうするかというと、隣のクラスの先生にお願いして、クラスを丸ごと引越しさせていました。例えば、数学はAクラスと一緒にやってもらい、英語の時間はBクラスにお邪魔する、と言う感じですね。

小学校の中学年といえば、アメリカではちょうど時計の読み方を覚えたり、掛け算、割り算あたりを覚える大事な時期だったと思います。先生の意味不明な言い訳で子供が基礎を理解できなくなったら大変だと思い、我が家ではとりあえず数学に関しては、全て私が教えました。ホームスクールではありませんでしたが。

学校でいじめの被害にあっている

私はアメリカのホームスクールに関しては、あまり手放して賛成するわけではありません。しかし、この理由に関しては、ホームスクールという選択肢があることは、子供にとっては大きな救いの手になってくれると思っています。

アメリカでは、陰険ないじめは日本ほどありません。集団でいじめることに対してマイナス感情を持つ子供が多いことが、その理由だと息子は話していました。

でも、まったくないわけではなく、存在しています。あからさまないじめではなくても、気が弱い子は精神的なストレスを感じながら学校に通っている子もいます。

そうした子供にとっては、学校に行って精神的に追い詰められなくても、自宅で勉強ができて、将来は高校や大学にも進学できるのなら、それは素晴らしい選択肢だと思います。

学校でドラッグや暴力など悪い影響がある

同じ町にある学校でも、住んでいる場所によって学校の質や雰囲気はガラリと変わります。例えば、富裕層が多く住むエリアにある学校は、暴力やドラッグなどの問題は起こりづらい傾向にあります。しかし貧困層が住むエリアにある学校だと、そうした問題が起こりやすい傾向にあるのです。治安が良くない所だと、学校の入り口に金属探知機があり、生徒が銃器を持ち込まないかチェックするところもあります。また、学校の窓に鉄格子がついている所も実際にあります。

同じ町でも、大きな差がついてしまう所は、アメリカの影の部分なのかもしれませんね。

「だったら良い学校に行ける所に住めばよいのでは?」

と考える人はいるでしょう。確かに、その選択肢は理想的です。しかしそうしたエリアには、高級住宅のみで賃貸物件がないとか、富裕層でない人にとっては環境を選べないことが少なくありません。

ガラが良くない学校に通うと言っても、そこに通う生徒が全員、そうした危険因子を持っているわけではありません。そのため、運悪くそうした学校に通うことになると、親子で話し合ってホームスクールという選択をすることもあります。

3.ホームスクールのメリット

ホームスクールには、たくさんのメリットがあります。

  • 基本的に親子でマンツーマンの授業となるので、短時間でも密度の濃い勉強ができる
  • 子供の能力に合わせて、どんどん先にすすめる
  • スポーツや音楽などに時間を使いたい人や遠征などに行く子にとっては、時間的にフレキシブルな対応がしやすい
  • 周囲の生徒から悪い影響を受けずに済む
  • いじめがない
  • 地域によってホームスクールをサポートするグループがある
  • 学校によっては体育や課外授業だけ出席というのもOK
  • 宗教や価値観と教育とで干渉せずに済む
  • いつからでも始められる(年初でなければいけないといったルールはない)
  • 事情があって出席日数を満たせなくても留年にならない

4.ホームスクールのデメリット

ホームスクールには、メリットばかりではありません。少なからずデメリットもあります。ホームスクールを検討するなら、デメリットについても理解しておくことが大切ですね。

  • 社交性が身につかない
  • 他人とトラブルが起きた時の対応の仕方が分からない
  • 子供の世界が家庭内だけになってしまい、視野が狭くなる
  • カリキュラムや使用する教材、教え方によっては最低限の学力が身につかない
  • ホームスクールでも時間割などスケジュール管理は必要
  • 共働きの世帯だと難しい
  • 州ごとに法律があるので従う必要がある(科目や対象年齢、親に必要な資格など)
  • 一人っ子の場合には孤独感を感じやすい

などがあると思います。

5.もしこれからホームスクールをするなら知っておきたいコト

もしこれからホームスクールを使用かなと考えている家庭は、目の前のカリキュラムについて調べるだけでなく、さまざまなシチュエーションをシミュレーションした上で、賢明な選択をする必要があります。

レポートカード(成績表)は必ず作る事

ホームスクールで親が子供に勉強を教える場合、わざわざ成績表を作る必要がないと考える人は多いと思います。しかしこのレポートカードは、もし近い将来、別の学校へ通学する場合や転入する際には、提出するように求められるため、必要です。「ホームスクールだったので作っていません」と言っても認めてもらえません。

大学入学ではSATやACTは必要

ホームスクールなら、レポートカードの成績は良く、GPAも親がつけるので、4.0も十分に可能だと思います。しかし、大学入試においては、GPAだけで入学できるかどうかが決まるわけではないという点は、理解しておきましょう。難関大学になればなるほど、SATやACTのスコアはチェックされます。そして、ホームスクールでのGPAが高くても、テストのスコアが悪ければ、残念ながら不合格となってしまいます。

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Resume(履歴書)に書ける内容が必要

ホームスクールが良くも悪くもどういうものなのか、どんな影響を子供に及ぼすのかという点は、大学側は理解しています。もしも大学入試の際に提出する履歴書が、ただホームスクールをしていましたというだけだと、もしかしたら「じゃあずっと家にいただけ?」と思われて不合格リスクが高くなる可能性はあるでしょう。

ホームスクールをするのなら、勉強以外にボランティアやコミュニティ活動を積極的にするとか、どこかの団体に所属して集団での活動に精を出すなど、履歴書に書ける何かが必要不可欠です。

州によって法律がある

州ごとに法律がある

6.ホームスクールに優しい州はどこ?

ホームスクールに関しては、可能な子供の年齢や教えなければいけない科目、また親が持っていなければいけない資格や届出の必要性など、州ごとに条件が定められています。条件が厳しい州もあれば緩めの州もありますが、どの州がホームスクールをしようと考えている人にとってはフレンドリーなのでしょうか。

アラスカ州

親が子供に教えるなら年齢も科目も完全自由。届け出も不要。

アイダホ州

親の資格や届け出は不要。ただし子供はホームスクールを含めて16歳までは教育が必要。

インディアナ州

親の資格や届け出は不要。年間で最低180日間の授業が必要。

ミシガン州

州から提供されている9科目の必修科目はマスト。親が教える場合には資格は不要。

ミズーリ州

生徒の数は4人まで。年間の授業時間は1000時間以上であること。子供は16歳までホームスクールを含めて教育が必要。親の資格は不要。

ニュージャージー州

親の資格は不要だが、公立学校と同等のカリキュラムでなければいけない。

オクラホマ州

親の資格は不要。年間180日以上の授業をすること。学校は5歳から18歳までを対象。

テキサス州

ホームスクールは私立校の扱い。通知や親の資格は不要。カリキュラム作成は必要。必須科目には歴史と科学を含める事。

ユタ州

通知は必要。カリキュラムは州が提供するものから選択できる。

アメリカの大学入試と「Affirmative Action(アファーマティブ・アクション)」の関係

アメリカで生活すると、誰もが経験することの一つに、差別があります。ライフスタイルや住んでいる場所などによって、どんな差別をどんな風に経験するかは千差万別ですが、残念ながらアメリカには根強い差別社会であると言っても、決して言い過ぎではないでしょう。

私自身、渡米したばかりの時には、差別をされていても気づかないことが多かったものです。しかし在米歴が長くなることによって、明らかな言葉による差別はなくても、他の人との対応の差とか、その場の空気感などで、差別を感じ取れるようになりました。

そんな差別社会を少しでも軽減しようと登場したのが、Affirmative Action(アファーマティブ・アクション)です。これは「多様性(Diversity:ダイバーシティ)を促進する」ことを目的としています。

アメリカでは、Diversityというと人種的な多様性をイメージする人が多いです。しかし、必ずしも人種的な部分だけではなく、LGBTとか性別なども含めて、多様性を促進する政策はアファーマティブ・アクションとなります。アメリカでデフォルト的に使われているアファーマティブ・アクションは、 Racial Affirmative Action のことですね。ここでは、この人種的なアファーマティブアクションが、大学入試にどんな影響を及ぼしているのかを、分かりやすくご紹介します。

※このページは、人によっては気分を害することがあるかもしれません。できるだけ客観的な内容にまとめていますが、差別についての事情を知りたくないという方は、このまま退出されることをおすすめします。

目次

  1. アファーマティブ・アクションとは?
  2. アファーマティブ・アクションの由来
  3. 大学入試におけるアファーマティブ・アクション
  4. アファーマティブ・アクションがなくなるかも?
  5. 大学への入学しやすさは、アファーマティブ・アクション以外にもある
  6. 最近増えている、アファーマティブ・アクションへの誤解

1.アファーマティブ・アクションとは?

アファーマティブ・アクションとは、日本語にすると「積極的格差是正措置」となります。はい、正直、日本語に訳しても全く意味が分かりませんよね。これを一言で表現するなら、マイノリティに対する差別をできるだけ改善しましょう、多様化を促進しましょうというものです。

アメリカは、人種のるつぼと呼ばれているように、たくさんの民族や人種が暮らしています。そのうち、最も多いマジョリティは、人口の約60%を占める白人です。

マイノリティを大きく分類すると、

  • アフリカ系(黒人と呼ばれる人種です)が12%程度
  • ヒスパニック系(ラティーノ、ラティーナなどが含まれて、メキシコ以南の南米系の人がここに含まれます)は18%程度
  • アジア系(日本人はここに含まれます。東アジアだけでなく、東南アジアやインド系も、すべてアメリカではアジア系に分類されています)が6%弱

となっています。人種は、どの国の出身かということではなく、一言でいうなら「肌の色」で決まります。アメリカ国籍を持っているアメリカ市民なのか、それともグリーンカードで生活している移民なのかという点は、人種が判断されるうえでは、関係ありません。

余談ですが、「移民」という点ではロシアや東ヨーロッパからやってきた人達もいます。しかし彼らは、肌の色という点で分類すると多くは「白人」です。人種的なアファーマティブ・アクションでは、白人は措置の対象とはなっていません。つまり、移民ということで不便を感じることはあっても(アメリカには移民差別にありますので)、他の有色人種のように差別されていないという理由でアファーマティブ・アクションは対象外、となることが多いようです。

2.アファーマティブ・アクションの歴史

アメリカにおけるアファーマティブ・アクションは、実は最初から有色人種を救済するための措置として誕生したものではありません。ご存知ですか?

その昔、アメリカの大学には優秀なユダヤ系の生徒が多くいました。ユダヤ系の数が増え過ぎてしまうことを恐れた政府側が、「白人を救うための救済措置」として、ユダヤ系学生の入学を制限したのが、アファーマティブ・アクションの始まりです。

大学の入学選考過程においては、アファーマティブ・アクションは現在でも存在すると言われています。しかしそれは、決してユダヤ系学生を排除しようというものではありません。歴史の中で経済弱者の立場を強いられてきた有色人種の入学を促進することによって、より平等な社会を作りましょう、という位置づけとなっています。

アメリカの差別が分かりやすくまとめられている動画

3.大学入試におけるアファーマティブ・アクション

大学入試においては、出願申込プロセスの中で、人種を申告する項目があります。「答えたくない」という選択をすることもできますが、多くの学生は、回答拒否することが合否にマイナスの影響を与えたくないと考えるため、人種を申告しています。

私の息子が大学進学の際には、通っていた高校のカウンセラーから「人種の選択は、アジア人を選ばないように。有利にならないから。」と言われました。息子の場合には、アジア人である私が50%、そして非アジア人である夫が50%なので、どちらを選んでもOKでした。

大学入試におけるアファーマティブ・アクションでは、多くの場合にポイント制が採用されているようです。SATの得点に、このポイントを加算すると考えると、分かりやすいかもしれませんね。例えば、マジョリティである白人のSATスコアをプラスマイナスゼロとしたら、

  • 黒人はプラス20ポイント
  • ヒスパニックもプラス20ポイント
  • アジア人はマイナス20ポイント

のように、大学ごとに独自の点数調整システムを採用していると言われています。

また、大学に在学する生徒の人種と性別の統計を見ると、白人の女性が最も多いのだそうです。そのため、息子の高校のカウンセラーは、「白人の女性であることも、有利にならない」とおっしゃっていました。

ちょっと待って、アジア人はマイナスポイントなの?

上のチャートを見ていただくと分かりますが、黒人とヒスパニック系は、自身のSATスコアにアファーマティブ・アクション調整で何ポイントが加算されているのに対し、アジア人は、なんと獲得したスコアからポイントが差し引かれています。これは、タイポではありません。

多くの大学でこうしたアジア人のポイントを下げる対策をするのは、大学におけるアジア人の割合が高くなっていることが背景にあります。

大学におけるアファーマティブ・アクションというのは、多様性という目標を実現するために行う対策です。そのため、実際のSATスコアだけで純粋に合否を決めてしまうと、合格者がアジア人ばかりに偏ってしまうという事態が起こりかねません。そうした事態を防ぐために、アジア人の得点を少し下げるという対策をしているわけです。

カリフォルニア州ではアファーマティブ・アクションを撤廃

アファーマティブ・アクションは、アメリカの憲法によって定められている権利とか義務とかではありません。あくまでも、国がオススメしている「多様化を維持するための」政策です。大学の入学に関するアファーマティブ・アクションは、全国の大学が独自に行っており、公表はされていません。

しかし2009年には、カリフォルニア州が州立大学におけるアファーマティブ・アクションを撤廃しました。大学は、人種に頼らずに自身の実力で入学してくださいね、ということなのでしょう。個人的には、自身の頑張りが純粋に評価されるという点で、私はこの政策には賛成です。

そんなカリフォルニア州がその後どうなったのか、気になりませんか?現在のアファーマティブ・アクションでは、黒人とヒスパニック系が合格しやすくなっており、若干有利な状況ですが、アジア系にとってはとても不利です。カリフォルニア州では、その点はどのように変わったのでしょうか?

カリフォルニアの州立大学では、現在超難関と言われているUniversity of California Barkley Campusを筆頭に、ほぼすべての州立大学のキャンパスで、アジア人学生が占める割合が50%程度と高くなっています。他の州と比べてアジア人の割合が多いカリフォルニア州ですが、それでも州内で生活するアジア人の比率は、全体の14%程度です。そう考えると、州立大学へ進学するアジア人の比率がどのぐらい高いのか、よくわかります。

4.アファーマティブ・アクションがなくなるかも?

大学の入学に関するアファーマティブ・アクションに対しては、賛否両論です。歴史的に経済的弱者で、自身の努力だけではどうすることもできない壁があるのなら、アファーマティブ・アクションで救済し、チャンスを与えることがアメリカンドリーム、という気はしますよね。国がすすめるアファーマティブ・アクションも、ここが目標というか、理想形なのだと思います。

しかし実際には、大学への進学率を決める要因は、人種ごとによる背景だけが要素というわけではありません。親の教育レベルや、親の収入によっても、子供の進学率には大きな差があります。

極端な例を挙げてみます。例えば、両親が博士号を持っていて世帯年収が100万ドル近く(1億円程度)の世帯で生まれた有色人種の子と、親が高校中退で世帯収入も低く、政府からの支援に頼らなければ生活できない白人の子を比較した場合、大学に進学できる可能性という点では、経済的に裕福な有色人種の子の方が有利です。

理由は、親が高等教育を受けているため、経験をもとに子供に教育しやすい生活環境を与えられたり、経済的余裕があることで、子供に必要な教育環境を選択できるからです。

これは、人種が関係しているわけではなく、経済的な背景が大きく影響していることを表しています。

シンプルな、人種のみを考慮するアファーマティブ・アクションでは、この富裕層の子供は有色人種という理由で入学がさらに有利となります。そして、貧困層の子でも白人の場合には、有利となる措置にはなりません。

近年のアメリカでは、人種による格差もまだまだ残っています。しかしその一方で、経済的な格差が広がっています。そこに、人種という要素が複雑に絡んでいるため、アファーマティブ・アクションをどのように取り扱うかという点が、難しいのです。

5.大学への入学しやすさは、アファーマティブ・アクション以外にもある

アメリカの大学において、合否を決める要素は、学校の成績やSATスコアだけではありません。アファーマティブ・アクションも要素の一つですが、その他にも、ポイントがアップして合格しやすくなるケースは、たくさんあります。

奨学金の優待生

アスリートやアーティストなど、大学からScholarshipによるリクルートを受けている人は、自身のSATスコアに対して、「+20ポイント」などの上乗せをしてもらえることが多いです。ただし大学側も、コーチがスカウトしてきた生徒だからと言って、無条件で合格させることはできません。大学のレベルを維持しなければいけませんから、下駄を履かせることはできても、スカウトされた生徒に対してもそれなりのレベルを要求します。

Legacy枠

Legacy(レガシー)というのは、親や祖父母がその大学の卒業生であるときに活用できる枠です。特に私立大学の場合にはLegacy枠によるポイント上乗せは大きく、+40ポイントぐらいはゲットできるのではないでしょうか。

多額の寄付

これは、富裕層にしかできない裏技なのかもしれません。数十万ドルから数百万ドルという寄付を申し出れば、大学側もビジネスなので、子息の入学を「特別に」認めてくれることはあるようです。

例を挙げると、過去に大統領だったトランプ氏の義息のジェリー・クシュナー氏は、ハーバード大学に入学させたい父親による$20M(日本円にして20億円程度)以上の寄付金を条件に、入学を認められたのだとか。

ちなみに、寄付金による優遇措置は、人種によるアファーマティブ・アクションとは全く関係ありません。大学運営がビジネスである以上、多額の寄付金で入学させてもらえるという例外的な優遇措置は、必要悪だと考える人は多いです。

6.最近増えている、アファーマティブ・アクションへの誤解

最近では、アファーマティブ・アクションに対する間違った認識が広がっていて、勘違いから大憤慨する人も少なくありません。

下のクリップでも説明されていますが、アファーマティブアクションはあくまでも「多様性を促進するためのもの」であって、「特定のグループに属する人(人種など)を罰する」ためのものではありません。しかし、残念な使われ方がしていることはまだまだ多いようです。

日本人学校や補習校、行かせた方が良いの?

アメリカには、日本人学校や補習校などがあります。子供がいる家庭なら、実際に通うかどうかは別として、一度ぐらい検討したことがあるのではないでしょうか?ここでは、アメリカにある日本人学校や補習校は何をする所なのか、そして自分の子供を通わせた方が良いのかどうかについてご紹介しますね。

目次

  1. 日本人学校とは?
  2. 補習校とは?
  3. 現地校との掛け持ち、大変じゃないの?
  4. アイデンティティ、そして将来の教育設計で決めるべし

1.日本人学校とは?

日本人学校とは、海外にある日本人のための学校のことで、文部科学省がある程度の経費を負担してくれています。基本的には義務教育の年齢が対象となるので、小学校と中学校がメイン、高校も探せばあります。

日本人学校はアメリカだけでなく世界中に設置されていて、その数は95。そのうち5校がアメリカにあります。

カリフォルニア西大和学園カリフォルニア校
イリノイシカゴ日本人学校
ニュージャージーニュージャージー日本人学校
ニューヨークニューヨーク日本人学校
グアムグアム日本人学校
文部科学省ホームページより

メリット

  • 場所は海外だけれど日本の学校
  • カリキュラムは日本の公立の学校と同じ(文部科学省が認定)
  • 全日制で、月曜日から金曜日まで、日本の学校と同じように通学できる
  • 教科書は日本国内で実際に使われているものを採用
  • 現地の日本人会が運営
  • 卒業すれば日本国内の学校と同じ卒業資格を得られる
  • 日本語での授業、友達との付き合いもすべて日本語
  • 校長や教頭は日本から派遣

デメリット

  • 現地の人と交流する機会が少ない
  • 現地の言語を習得できる環境が少ない
  • 現地の税金は投入されない、私立校の扱い
  • 学費は無料ではない
  • 入学審査や定員がある
  • PTA参加義務など、親の関わりが求められる
  • ロケーションが限定されている

日本人学校に向いているのはどんな人?

  • 数年間の駐在で、日本へ帰ることが分かっている人
  • 海外に駐在している間に、子供の教育面がとても心配な人
  • 日本へ帰って子供が高校や大学を受験しなければいけない人
  • 日本人としてのアイデンティティを強く持ち続けたい人

2.補習校とは?

補習校とは、土日にだけ行われる塾のようなもので、普段は現地の学校に通っている子どもたちが、週末に補習校に通うというスタンスが一般的です。日本人学校へ通わせたいけれど定員で入れなかった場合や、すぐそばに日本人学校がないので補習校という選択肢しかないなど、補習校を選ぶケースは様々です。

補習校は、世界中に229校あり、アメリカにも大小さまざまな補習校があります。

アラスカアンカレッジ 日本人補習学校
アラバマバーミングハム日本語補習校
アーカンソーリトルロック日本語補習校
アリゾナアリゾナ学園スクール
カリフォルニアサンフランシスコ日本語補習校
カリフォルニア三育学院サンタクララ校
カリフォルニアサンディエゴ補習授業校みなと学園
カリフォルニアポートオブサクラメント補習授業校
コロラドコロラド日本語学校
コロラドデンバー日本語補習校
コネチカットハートフォード日本語補習校
フロリダオーランド日本語補習校
ジョージアジョージア日本語補習校
ハワイホノルル日本語補習校
イリノイシカゴ補習授業校
インディアナグレータールイビル日本語補習校
インディアナフォートウェイン日本語補習授業校
インディアナインディアナ日本語補習校
カンザスカンザスシティ日本語補習授業校
ケンタッキーエリザベスタウン日本人補習校
ケンタッキーシンシナティ日本語補習校
ケンタッキーセントラルケンタッキー日本人補習校
ルイジアナニューオリンズ日本語補習校
ルイジアナバトンルージュ日本語補習校
マサチューセッツボストン日本語補習校
マサチューセッツアムハースト日本語補習校
メリーランドワシントン日本語補習校
ミシガン駿台ミシガン国際学院
ミシガンデトロイトりんご会補習授業校
ミネソタミネソタ日本語補習校
ミネソタミネアポリス日本語補習校
ミズーリセントルイス日本語補習校
ミシシッピノースミシシッピー日本語補習校
ノースカロライナシャーロット日本語補習校
ノースカロライナローリー日本語補習学校
ニュージャージーニュージャージー補習授業校
ニュージャージープリンストン日本語補習校
ネバダラスベガス学園
ニューヨークロチェスター日本語補習校
ニューヨークニューヨーク補習授業校
ニューヨークバッファロー日本語補習校
オハイオシンシナティ日本語補習校
オハイオコロンバス日本語補習校
オハイオクリーブランド日本語補習校
ペンシルバニアフィラデルフィア日本語補習校
ペンシルバニアピッツバーグ日本語補習校
サウスカロライナグリーンビル日本語補習校
サウスカロライナ松葉学園
テネシー中部テネシー日本語補習校
テネシーイーストテネシー日本語補習校
テネシーメンフィス日本語補習校
テキサスエルパソ日本語補習学校
テキサスオースチン日本語補習校
テキサスサンアントニオ日本語補習校
テキサスダラス日本語補習校
テキサスヒューストン日本語補習校
ユタユタ日本語補習校
バージニアニューポートニュース 補習授業校
ワシントンシアトル日本語補習校
グアムグアム日本人学校
北マリアナ諸島サイパン日本人補習校
文部科学省のホームページより

メリット

  • 日本人学校で使われている教材を採用
  • 授業は日本語
  • 土日のみなので、現地校に通える
  • 義務教育以外の年齢、幼稚部や高等部が設置されていることもアリ
  • 運営は現地の日本人会
  • 入学式や運動会、遠足や七夕などの伝統行事もアリ
  • 現地の言語を習得しやすい
  • 現地の友人を作りやすい
  • 現地の学校へ進学する際にスムーズな移行が可能
  • 保護者主体のクラブ活動もある

デメリット

  • 全教科を習うわけではない。国語と数学がメイン。
  • 宿題が多く、現地校とのバランスが難しい
  • 週末はスポーツの試合や習い事などで忙しい
  • ロケーションが限られており、場合によっては片道数時間かかることもアリ
  • 学費がかかる
  • 日本国内の学校を卒業した場合と同等の資格は得られない
  • 学校によってカリキュラムの内容や進度がちがう
  • 狭い日本人社会の中で人間関係のトラブルが生まれるかも
  • 親の負担は少なからずある

補習校に向いているのはどんな人?

  • アメリカ人としてのアイデンティティを確立しながらも、日本人のアイデンティティも維持したい人
  • 日本へ帰国の際には帰国子女の枠で受験することを考えている人
  • 国語と算数をしっかり学べれば良いと考えている人
  • 現地校と補習校からの宿題のどちらにもしっかり取り組める人
  • 親が子供の学習をサポートできる人
  • 将来は現地校への進学を考えている人
  • 日本のカリキュラムよりアメリカのカリキュラムに沿うことのメリットが大きな移住組

3.現地校との掛け持ち、大変じゃないの?

全日制の日本人学校なら、現地の人とあまり関与することなく数年間のアメリカ生活を全うし、日本のカリキュラムに遅れることなく帰国できる可能性は高いでしょう。しかし平日は現地校、そして週末は補習校となると、子供は週休0日で学校に通うことになります。掛け持ち、大変ではないのでしょうか?

宿題は大変です

補習校と現地校を掛け持ちしている家庭からよく聞くことは、宿題が多くて大変、ということですね。アメリカの現地校では、年齢が上がるにつれてどんどん宿題の量が増えていきます。ハイスクールになると、毎日数時間、宿題をしなければいけないということもあります。

だからと言って、補習校は手加減してくれません。補習校に通う子供の中には、日本へ帰国する前提で通っている子もいるので、しっかりカリキュラムをこなしてほしいという希望は少なくありません。1週間分の授業を土日の2日間に凝縮して行い、宿題も1週間分がみっちり出される、というスタンスなのです。

子供によっては、現地校からの宿題と、補習校からの宿題の両方を、毎日することが習慣になる子もいるようです。宿題が忙しすぎて現地校のクラブ活動とか、お友達と遊ぶこともできないというケースも珍しくありません。

年齢が上がると社交面で問題が浮上しやすい

子供達が社交に積極的になり、Sleep OverとかSlumber Partyと言った「お泊り会」をするようになると、「補習校はもう行きたくない」「休みたい」という子が増えます。そうしたお泊り会は金曜日の夜に行われることが多く、土曜の朝早くから補習校に行かなければいけない子だと、参加しづらいからです。

また、現地校でスポーツなどのクラブ活動をしている場合にも、週末ずっと補習校ということは、問題が生じてしまいます。アメリカのクラブ活動は、練習は平日の放課後、そして試合は土日だからですね。

子供の年齢が9歳か10歳ぐらいになると、多くの家庭では「そろそろ補習校は辞め時なのかしら?」という壁にぶつかるのだとか。

4.アイデンティティ、そして将来の教育設計で決めるべし

補習校に子供を通わせるかどうか、またいつまで通わせればよいのかを決めるには、家庭の中で長期的なプランニングが必要です。

我が家の例ですが、我が家では子供を補習校へ通わせませんでした。その理由は、

  • 夫は転勤族だったため、日本のカリキュラムに沿った教育を継続できる確証がなかった
  • 子供は現地校でのクラブ活動やお友達との社交に積極的だった
  • 将来はアメリカの大学へ進学する予定だったので、アメリカのカリキュラムで学んでほしいと考えた
  • 国語と数学に関しては、私が自宅で教えることが可能だった
  • 日本語という言語よりも文化を学べば良いと考えた
  • 帰国の予定はなかった

などですね。

私は学生の頃に数学が得意で、アルバイトで塾や予備校の講師をした経験がありました。そのため、息子はキンダーから高校を卒業するまで長期休みも含めて毎日30分~1時間、私と一緒にテーブルに座って「ママ塾」をしていました。

マンツーマンで教えることは、限られた時間の中でも密度の濃い内容で学べるというメリットがあります。教える側も、マンツーマンなら解き方を観察しながら弱点を把握し、克服のための応用問題を出せます。

親子で学習習慣をつけたことは、子供が大学へ進学してからも、それなりに役立ったような気がします。長時間の勉強でもそれほどストレスに感じないようですし、息子はコンピューターサイエンス(CS)を専攻しており、基本的な数学的な考え方ができることは、少なからず役立っているようです。そうした些細な成果があっただけでも、親としては息子の人生に役立ったような気がして、嬉しいですね。

私の周囲には、最初から補習校は検討していないという人もいましたし、絶対に補習校はマストという人もいました。いろいろな口コミを聞いた中で、「行かない」という決断をした場合に考えられるデメリットをいくつかご紹介しますね。

  • 日本人のお友達が少ない
  • 日本語で会話できる人が親以外にいない場合も
  • 日本語の読み書きに関しては、補習校に通っている子よりもレベルが劣る

などが挙げられます。途中まで通わせていたけれど辞めたという家庭では、宿題の量が減ってストレスが減ったとか、補習校関連の親子喧嘩が減ったなど、良いこともあるようです。

補習校に通わなくても、こんなチャンスがあります

補習校に通わないという選択をすると、どうしても日本語の読み書きや会話のレベルは、補習校でスパルタ的に学んでいる子よりも劣ります。これは、仕方ないと思います。

しかし、「それなり」のレベルでも日本語をある程度話せる子なら、大学で日本語をダブルメジャーで専攻して完成度を上げるという方法もあります。

息子の友人は、小学校2年生まで補習校に通っていました。日常会話は問題ないレベル、しかし学術的な分野ではイマイチだったそうですが、大学に入って経済学を専攻するのと並行して日本語も専攻した所、ゼロの状態から始める同級生と比べるとやはり基本が既にできていることは大きなメリットだったらしく、大学2年生でも上級生向けのクラスを受けていました。もちろん成績優秀者として、就職の際の履歴書にもしっかり記入したそうです!

そういう例もあるということで、ご参考にしてくださいね。

アメリカの大学に行くなら登竜門!SATはどんな試験?いつどこで受けたら良い?

アメリカの大学を受験するなら、SATもしくはACTというStanderized test(共通試験)を受験しなければいけません。ここでは、そのうち日本からの留学生でも日本で受験できるSATについてご紹介します。

目次

  1. SATとは?
  2. SATの受験項目
    • Reading( 読解力)
    • Writing(筆記)
    • Math(数学)
  3. 間違えると減点される?
  4. SATはどこで申し込む?
  5. SATの申し込み方法
    • 必要な書類
    • 受験場所は自由に選べる
    • 受験当日の持ち物
  6. 受験結果はどうやってわかる?
  7. Super Scoreとは?
  8. SAT受験にかかる費用は?
  9. SATは何回まで受験できる?

1.SATとは?

SATとは、Scholastic Assessment Testのことで、主に英語力と数学的思考力を調べるテストです。分かりやすく言うと、英語と数学だけのセンター試験のような位置づけですね。主催しているのはCollege Boardという独立した機関です。

SATは、数年ごとにスコアや出題科目の見直しが行われていますが、2021年現在では1600満点での採点となっています。

2.SATの受験項目

SATの受験項目は、English(Reading&Writing)と、Mathに分類できます。

Reading( 読解力)

Readingでは、長さが異なる文章を読み、質問に答えていきます。答えは選択式となっているのが特徴で、AからEの5択となっているのが特徴です。文法力や読解力、ボキャブラリーを調べる試験で、アメリカ人の学生でもかなり苦戦する分野です。英語を母国語としていない留学生にとっては、超難関な分野かもしれませんね。

Writing(筆記)

Writingに関しては、数年ごとに行われるSAT出題の見直しによって、必須科目に入ることもあれば、選択科目となることもあります。しかし選択科目となっている場合にも、大学ではEssayも受験するように勧めることが多いため、受験しておくのがおすすめです。

Writingでは、2~3つぐらいの文章を読んで答える問題で、主に文法力や語彙力を調べます。約25分程度でエッセイを仕上げるわけですが、文章の中に答えが隠されているというわけではなく、これまでの自分の経験や知識などを織り込みながらエッセイを仕上げることが、高得点につながります。

Math(数学)

アメリカ人の学生が苦戦する数学ですが、日本からの留学生にとっては、すこし準備をすれば満点も取りやすい科目です。出題レベルとしては、高校1年生までに習う部分から出題されますが、解けないほどの難問はほとんどなく、センター試験よりも若干難易度が高いぐらいのレベルだと考えると良いでしょう。

3.間違えると減点される?

選択式の出題分野では、分からなくてもとりあえず何かを選択しておけば当たる可能性が期待できますよね?日本の受験では、少なくてもそうです。だから、何も選択せずに試験を終えるのは、とてももったいないものです。

しかしSATでは、答えを間違えると、なんと減点される仕組みとなっています。この点は、日本の試験とは大きく異なる点ですね。正解すれば+1点、間違えると―0.25点の減点となります。

もちろん、全ての問題が同じ配点となっているわけではなく、試験の採点方法や配点については、公表されていません。

4.SATはどこで申し込める?

SATは、高校でも大学でもない、独立した機関が主催する共通テストです。申し込みは、高校を通して受験できることもありますが、学校とは別に個人でCollegeboard.orgで申し込めます。

高校を通して申し込めるかどうかは、その学校のISDによって異なります。学校を通して申し込む場合には、受験料はISDが支払ってくれるケースもあり、無料で受験することも可能ですね。ただし、学校を通して受験する場合でも、費用がかかることもあります。

なお、高校によっては、SAT受験には一切関知しないという学校もあります。その場合には、学校から何もお知らせなどを受け取らない可能性もあるので、個人でCollegeboard.orgから申し込みましょう。

SAT試験は、年間に複数回開催されていて、全国で受験できます。日本にも受験会場があるので、日本からの留学生なら、日本にいてSATを受験することも可能です。ただし、日本で受験する場合には、受験できる頻度はアメリカ国内ほど多くなく、年間で5回程度です。そのため、期間には余裕をもって受験することをおすすめします。

5.SATの申し込み方法

SAT試験は、全ての科目を受験すると、受験時間は約3時間程度となります。

必要な書類

  • 身分証明書(運転免許証、学生証など。日本で受験する場合にはパスポートでOK)
  • 支払をするためのクレジットカード

を準備して、Collegeboard.orgのサイトから申し込みをしましょう。College Boardのサイトは、まず最初にアカウントを作らなければいけません。このサイトは、ただSATを受験するためだけでなく、高校から大学へTranscriptを送ったり、大学在学中にはFAFSAと合わせてファイルが必要なCSSのアプリケーションとしても使います。そのため、ログインIDやパスワードは、なくさずに大切に保管しておくことをおすすめします。

受験場所は自由に選べる

SATは、アメリカ全土で同じ日に開催されています。自宅から足を運びやすいロケーションを選ぶのが便利ですが、必ずしも自宅のそばでなければいけないというルールはありません。人気がある受験会場だと、受け入れ可能な人数をオーバーしてしまうこともあります。その場合には、希望してもそのロケーションでは受験できないため、別のロケーションを選ばなければいけません。

オンラインで受験の申し込みを終えたら、当日に必要な持ち物や受験票をプリントアウトしておきましょう。受験票は、当日確認されるので、忘れずに持参しなければいけません。

受験当日の持ち物

SATの受験当日には、いくつかの持ち物が必要です。スマホを使うことは認められていないため、オフにしてカバンに入れておくか、自宅に置いていく必要があります。

  • 鉛筆(シャープペンシルはNGです)
  • 消しゴム
  • 身分証明書(試験会場で確認されます。写真付きの身分証明書のみがOK)
  • 腕時計(試験会場によっては、壁時計がないこともあります)
  • 電卓(オンライン機能がついていないモノは持ち込みOK)
  • ドリンクや軽食など(試験中の飲食はNGですが、休憩時間はOKです)

6.受験結果はどうやってわかる?

SATを受験すると、約1週間~2週間ぐらいで、結果が通知されます。合否という結果ではなく、スコアが計算されるので、受験した人は全員がこの結果通知を受け取ることになります。

受験結果は、

  • Collegeboardのサイトでチェックできる
  • 携帯のテキストで通知される
  • 願書を出している大学へ直接通知してもらうことも可能

大学への直接通知に間しては、既にその大学へ願書を出しているけれど、SATのスコアだけまだ提出していないという場合や、もしかしたら今回のスコアが良ければ記録を塗り替えるかもしれない、なんて時に便利です。

7.Super Scoreとは?

SATでは、Englishのスコアが何点、Mathのスコアが何点、合計は何点、と言う感じで結果が出ます。これまで複数回受験したことがある人にとっては、

「Englishは今回が最高点だけれど、Mathは前回の方が良かったな」

なんてことも起こりうるわけですよね。そんな時には、大学によってはSuper Scoreと呼ばれる「各科目ごとの最高得点」を合計して、自分の合計点とする事ができます。全ての大学でSuper Scoreを採用しているというわけではありませんが、採用している所なら、過去に受験したSATの中から、最も良いEnglishのスコアとMathのスコアを抽出して合計点として申告できるのですから、入学できる確率もアップしそうですよね。

ちなみに、Super ScoreでSATスコアを申請する場合には、それぞれの科目の最高得点が記録されているSATスコアを大学へ送ります。CollegeBoardのサイトから、大学へスコアを通知できるので、やり方はそれほど難しくありません。

ちなみに、大学へSATスコアを送る際には、費用がかかります。そのため、出願する際にはSATスコアは自己申告で、合格通知をもらって入学すると決めた大学のみに対して、正式にCollegeBoardからスコアを送る、という方法がおすすめです。

SATスコアを自己申告なら、すこし水増ししてもOKかな?なんて考える人がいるかもしれませんね。しかし、大学から受け取る入学通知は、あくまでも仮のものです。合格してから実際に入学するまでの間に、SATの正式なスコアなども含めて必要な書類を提出するわけですが、その際にスコアが虚偽の申請だったとバレると、合格取り消しになることもあります。注意しましょう。

8.SAT受験にかかる費用は?

SAT受験にかかる費用は、2021年現在では$55となっています。基本的には、オンラインでSATの申し込みをした時にクレジットカード払いをします。受験会場で払うというわけではないので注意してください。

この受験料は、低所得世帯だと免除してもらえる可能性があります。もしも高校で、Reduced lunchのプログラムに加入している人なら、免除してもらえる可能性が高いですね。

受験費用を免除してもらうためには、通学している学校のカウンセラーから、免除用のコードを受け取ります。それをSATの申し込みの際に入力して、どの高校に通っていて、どんな理由で免除になっているのかという点を記入すれば、SAT運営側で確認をした上で、免除が認められます。

9.SATは何回まで受験できる?

SATは、年間で約10回程度開催されています。そして、取得したスコアは5年間有効です。そう考えると、大学に進学する5年ぐらい前から、年間10回受験する、ということも可能ですね。合計、50回も受験するなんて、考えただけでも気が遠くなりそうですが、実質的には可能です。

受験回数が複数回あっても、それが大学受験の審査でマイナスの影響を与えることは、あまりありません。しかし、それはあくまでも、受験回数が10回未満ぐらいの場合です。

あまりにも受験回数が多い場合には、それが何かしらマイナスの影響を与える可能性はあるかもしれません。

その理由は、何回か受けることでスコアアップできる可能性が高いから。SATは共通テストのため、出題傾向が類似することが少なくありません。つまり、1回しか受験しない人よりも、複数回受験したほうが、確実に高得点を獲得しやすいという土壌があります。

一回の受験で$50以上かかる試験なので、複数回受験するとなると、やはりその世帯の経済力が大きく影響するでしょう。同じSATスコアでも、20回受験してそのスコアにたどり着いた生徒と、1回のみの受験でそのスコアを獲得した生徒の場合には、どちらが「より優秀な生徒である可能性が高いか」を予測できます。

ちなみに、私の子供は高校のFreshmanでSATをお試し受験し、Sophomoreでさらに1回。Juniorに2回受けました。

出題範囲に関しては、高校のFreshmanあたりで習う範囲も出題されるので、Freshmanで高得点を取るのは大変かもしれません。しかし、うちの場合ですが、受験するたびにスコアが上がり、最終的には初回スコアよりもプラス200点になりました。

ちなみに、複数か受験してアップできるスコアの平均は、100+だそうです。

我が家では、SATの前に過去問を購入しました。息子本人は1回さっと流しただけのようでしたが、それでも「この問題、前回のテストに似ている」などの感想を持ったようです。

アメリカの大学入試完全マニュアル!出願から入学まで!

日本の大学へ入学したければ、受験勉強をして入学試験を受け、合格しなければいけませんよね。近年では、AO入試と呼ばれるスタイルが増えていて、入試試験1発で合否が決まるのではなく、高校時代に頑張ってきたことや特技などが評価されて大学入学が認められる傾向が増えています。

アメリカの大学では、日本のように受験日が決められていて、その日に受ける入試問題の結果だけで合否が決まるというわけではありません。これからアメリカの大学へ留学しようと考えている人、もしくは既にアメリカに移住して子育てをしている人は、ぜひアメリカの大学入試の仕組みを理解することで、賢い選択ができるのではないでしょうか。

目次

  1. アメリカの大学の種類
    • Selectiveの入学条件
    • Competitiveの入学条件
    • Open型は社会人にもオススメ
  2. 大学の共通試験、SATとACTとは?
    • SATとACT、どこでいつ受験できるの?
    • SATとACTはどう違うの?
    • SATとACTは無料?それとも有料?
  3. 日本からでもSATとACTは受験できる?
  4. 試験だけじゃない!入学選抜に必要なもの
    • 高校の成績
    • 教師からの推薦状(Recommendation Letter)
    • Resume(履歴書)
    • Essay(エッセイ)
  5. 願書はいつから受付開始
    • 出願の締め切りはいつ?
    • Common Applicationを使用する際の注意点
  6. 合格発表はいつわかるの?
  7. Early Decision, Early Action, Regular Decisionの違いとは?
    • Early Decisionは断れるのか?
  8. 複数から合格通知をもらった!どうする?

1.アメリカの大学の種類

アメリカには、大学と言ってもいくつかの種類があります。公立の大学と私立の大学がある点では日本と同じですが、公立の大学の場合には、国立ではなく州立、つまり州の資金で運営されているという点が、日本と異なりますね。

  • Selective(大学が定める基準を満たした人が入学できるタイプ。州立大学はここに分類)
  • Competitive(競争型。有名私立大学が該当し、高いレベルの入学希望者を、いくつかの方法で振り分ける)
  • Open(開放型。基本的に高校を卒業していれば誰でも入学ができる。2年制のコミュニティカレッジはここに分類)

Selectiveの入学条件

アメリカの高校生が「大学」と呼ぶ教育機関の多くは、このSelectiveと呼ばれるスタイルを採用していて、州立の大学を始め、私立大学などが含まれます。満たさなければいけない条件は複数あり、

  • 高校を卒業していること
  • 高校時代の成績
  • SATやACTなどの共通試験のスコア

など、高校ごとに異なるレベルを定めており、これをクリアした学生が入学できる仕組みとなっています。

Competitiveの入学条件

アイビーリーグなどに代表される、一流難関の私立大学がCompetitiveに分類されますが、基本的にはSelectiveの入学形式と同じです。ただし、大学側が求める基準がとても高いため、合格率は1ケタ台という特徴があります。

Open型は社会人にもオススメ

コミュニティカレッジと呼ばれる2年制の大学の多くは、4年制の大学ほど厳しい入学基準を設けておらず、高校を卒業していれば誰でも入学できるシステムとなっている所が多いです。高校を卒業したばかりの若者が入学できるだけでなく、社会人になってからでも入学しやすいですし、学費もリーズナブルです。

2.大学入試SATとACTとは?

アメリカの大学には、日本のような入学試験はありません。しかし、全く試験を受けずに入学できるのかと言えば、そういうわけでもありません。

アメリカの多くの大学では、学力のレベルを把握するためのStanderized Test (共通試験)として、SATもしくはACTを受験し、そのスコアを大学側へ提出することを義務付けています。

SATの申し込みはこちらから

ACTの申し込みはこちらから

SATとACT、どこでいつ受験できるの?

SATとACTは、高校と大学から独立した機関が提供している標準テストです。それぞれ、年間に複数回開催されていて、何回でも受験することができます。標準テストということで、似たような問題が出題されることもあります。そのため、1回しか受験しない人よりも、何回か受験したほうがスコアは良くなる傾向があるようですね。

SATとACTは、通学している高校で申し込みができることもあれば、高校は一切関知せず、自分でネットを使って申込まなければいけないこともあります。州によって違うというよりは、ISDと呼ばれる学区ごとに方針が異なるようです。どちらの申し込み方法でも、受験する場所が異なるだけで試験の内容が変わるということはありません。

SATもACTも、全国で一斉に開催され、同じ受験日なら受ける試験の内容も同じです。共通試験と呼ばれているのは、そのためですね。ただし、年間に何回も開催されているため、試験ごとの難易度は若干変わります。この辺りは、スコアを計算する際に考慮されており、「難しすぎてダメだった」と思っていたら、想像以上によいスコアだったということもあります。

SATとACTはどう違うの?

SATとACTでは、試験の出題傾向やスタイルが若干異なります。一般には、理系に強い人ならACTの方が適している、なんて言われていますが、どちらの試験が自分に合っているか相性もあるので、どちらも受けてスコアを比較すると良いでしょう。

SATとACTは無料?それとも有料?

SATとACTは、基本的に有料です。

SATの場合には、受験する度に$49.50~$64.50がかかり、受験科目の数によって費用は変わります。日本からの留学生の場合には、費用は$53と定められています。

SATの受験料はこちらから

ACTも受験科目によって費用はことなり、$55~$70がかかります。

ACTの受験料はこちらから

なお、SATもACTも、低所得世帯の場合には、受験費用がかからず無料で受けられるWaiverの制度もあります。留学生の場合には受験料を免除してもらうことは難しいですが、アメリカの高校に通っている子供なら、ランチプログラムの料金が免除されているなどの条件を満たせば、受験料はかかりません。

3.日本からでもSATやACTは受験できる?

日本からアメリカの大学へ留学を考えている人は、日本にいながらSATを受験することができます。日本で受験する場合でも、申し込み方法はアメリカ国内にいる学生と同じで、Collegeboard.orgから行います。

ただし日本で受験する場合には、アメリカ国内のように毎月受験できるというわけではなく、どうしても頻度は少なくなってしまいます。そのため、留学したいなと考えたら、まずは腕試しのつもりでSATを受けてみてはいかがでしょうか?時間に余裕があれば、何回か受験してスコアをアップすることもできますよね。

4.試験だけじゃない!入学選抜に必要なもの

アメリカの大学は、難易度が高い大学になればなるほど、SATやACTのスコアが重視される傾向にあります。しかし、入学選抜に必要なものは、それだけではありません。

高校の成績

高校時代の成績も、アメリカの大学では重視されています。アメリカでは、高校は中学校の延長で、入学の際に入試などはありませんし、自宅から通いやすいエリア内で学区わけがされています。

しかし日本では、難関高校に行けば、そこで良い成績をとることは難しいですよね。そうした点も、日本からの留学生を受け入れている大学では理解しているので、安心してください。

高校の成績に自信がない人は、どうしたら良いのでしょうか?

大学ごとに、基準とするGPA(成績の平均)が設定されていて、そのラインを満たすことが条件となっています。しかし、このGPAは学校や学区によって計算方法が異なります。最高GPAが4.5の学校もあれば、5.0とか6.0が最高という高校もあります。

それに、学校によっても成績のつけ方が異なります。良い成績を取りやすい学校もあれば、採点が厳しい学校もあるわけです。決して一律ではありません。

アメリカの大学では、そうした地域やエリアごとの差についても、ある程度理解しています。そのため、できることは、現在通学している高校で、できるだけ良い成績を取ることを目指すという点ですね。

アメリカの高校に通っている人が今からできることは

  • できるだけハイレベルなクラス(APやPre-AP、Dual Credit、IBなど)を選択する事
  • B+で甘んじるのではなく、Aを目指すこと

です。

チャレンジクラスでBを取るリスクがあるなら、確実にAを取れる基礎クラスの方が良いのかな、と考える人がいます。大学側としては、ハイレベルなクラスに挑戦する姿勢も評価するので、基礎クラスばかりより、ハイレベルなクラスに挑戦する子供の方が、高評価されることが多いです。

教師からの推薦状(Recommendation Letter)

アメリカの大学では、ほとんどの場合、高校時代の教師からの推薦状が必要です。基本的にはどの教科でも良いのですが、大学から高評価されるのは、EnglishかMathの教師からの推薦状です。

この推薦状は、ペーパーで書いてもらったものを郵送で大学へ送ってもOKです。しかし、全米で広く利用されている大学受験のためのサイト The Common Applicationを利用するなら、願書の申請から推薦状の提出まで、全てオンラインでできます。

推薦状が何通必要かは、大学によって異なります。最低でも1通という大学もあれば、3通必要という大学もあります。また、最低1通だけれど多く提出してもOKという大学もあり、その場合には、できるだけ多くの推薦状を提出することで、大学へ入学したい気持ちをアピールできます。

うちの息子の大学受験では、教師からの推薦状を4通取得した他、教師以外の推薦状も受け付けている学校があったので、私と夫からの推薦状も準備しておきました。

書いてくれない先生もいる

推薦状を書くのは、先生の仕事ではありません。あくまでも先生が生徒を応援しようと気持ちがあるからこそ、ボランティアで書いてくれるわけです。

そのため、依頼しても書いてくれない先生は、意外と多いです。驚きですが。

息子に場合にも、書いてくれると言ったのに待てど暮らせど書いてくれない先生とか、書いてくださいとメールを出しても完全スルーな先生もいました。

なので、推薦状を教師に依頼する際には、丁寧に頼むには当然ですが、その先生の授業がとても楽しかったとか、先生のモチベーションを高めるような営業努力も必要かなという気がします。

Resume(履歴書)

大学入試では、Resumeと呼ばれる履歴書も必要です。日本では、履歴書というと既に決められたテンプレートがあり、そこに記入すればよいのですが、アメリカでは基本的にはフリーフォーマットです。そのため、ゼロの状態から自分で作り込んでいきます。

ネットでは、お手本となるような履歴書がたくさん紹介されています。そうしたテンプレートを真似しながら、記載する内容を自分でカスタマイズしていくという方法でも、OKです。ただし、大学受験のためのResumeは、1ページにまとめるのが原則です。

Resumeに何を記入すればよいかという点ですが、主に

  • Header:名前、住所、メールアドレス、連絡先などの情報を記入
  • Objective:どんな性格の人間なのかという点を、2行ぐらいに簡潔にまとめる。
  • Education:高校生なので、高校名と現在のGPAを記入。取得したAPクラスなども記入すると良し。
  • Extra Canicular:クラブ活動や、参加したコンテストなど、学業以外でアピールしたい点を記入
  • Community Service;ボランティアの内容を記入。アメリカの大学ではボランティアが重視されます。

Essay(エッセイ)

アメリカの大学では、エッセイの提出が求められるケースが多いです。Common Applicationを利用して願書申請するなら、Common Application内にエッセイをアップロードし、同じエッセイを全ての大学の願書に使うことができます。

それ以外に、大学ごとにテーマを出題し、それに対して生徒がエッセイを書くという課題もあります。どんなテーマかは大学によりますし、文字数なども大学によって異なります。

エッセイを書く際には、テーマが決められていなければ何を書いてもOKです。しかし、大学から高評価されやすいエッセイは、「困難をいかに乗り越えて成功体験へ結びつけたか」というストーリーですね。もちろん、創作の小説を書くわけではないので、全く実体験に基づかない内容は控えたほうが良いでしょう。しかし、「自分はこんなに素晴らしい人間です」をアピールするよりも「自分は困難を乗り越える力を持っている強い人間です」をアピールしたほうが、評価という点では高くなりやすいですね。

5.願書はいつから受付開始?

アメリカの大学への願書は、8月1日に受付開始となります。多くの大学が使用しているCommon Applicationは、8月1日から受付開始となり、必要な書類がすべてそろっている人なら8月初旬に出願のプロセスを終えることができます。

出願の締め切りはいつ?

出願の締め切りは、出願形態によって異なり、11月中旬もあれば、1月下旬という所もあります。できるだけ早めに出願したほうが、早く合否を知ることができるという点てもおすすめです。

Common Applicationを使用する際の注意点

カリフォルニア州やテキサス州の州立大や、一部の私立大学では、Common Applicationではなく、独自の出願システムを採用している所もあります。しかし、全米を広く見渡すと、やはり大半の大学は、このCommon Applicationを採用しています。

大学への進学を考えたら、まずはこのCommon Applicationにアカウントを作り、大学のリサーチや出願に必要な書類集めを始めることになります。しかしこのCommon Applicationを利用する際には、注意点があります。

それは、8月1日に、それまでのデータがすべてリセットされてしまうという点です。アカウントの基本的なプロフィール情報はリセットされませんが、それまでコツコツ集めた教師からの推薦状や、既にアップロードしたエッセイなどは、全て8月1日でリセットされてしまいます。そのため、早めに準備をしていた人は、再アップロードが必要となりますし、教師からの推薦状も、教師にもう一度サイトへアップロードしてもらうように依頼しなければいけません。

この二度手間を回避するためには、書いたエッセイなどは、ワードファイルなどで保存しておくという方法がおすすめです。大学の多くは、毎年同じテーマのエッセイを出題するので、すでに書いてあれば、後はそれをコピー&ペーストするだけで済みますよね。

6.合格発表はいつ?

日本の大学では、受験日が決まっているだけでなく、合格発表の日も決められていますよね。そのため、合格発表の日になると、ワクワクドキドキしながら、合否を確認することになります。

アメリカの大学でも、合格発表の日が決まっている大学はたくさんあります。その場合には、決められた合格発表の日時に、指定されたホームページへ行くと、Congratulation!という合格通知のレターがあるか、残念でしたと言うレターが届いているので、それを確認するという方法で合否をチェックします。

しかしアメリカの大学の中には、特定の合格発表の日は設けず、出願した人から順番に合否を通知するというシステムを採用している所もたくさんあります。大学が設定する条件をクリアしている人なら、大学側にとっても合格通知を出しやすいわけで、その場合には、出願してからたったの2週間で合格通知を受け取ったということもありますね。

大学に合格すると、大学のパンフレットや入学までの手続プロセスなどの書類が、分厚い郵送で自宅に届けられることになります。ただし、郵送で送られてくる情報は、基本的に大学の受験者用のサイトでも確認できるので、郵送はまだ受け取っていないけれど合格したことは分かっているし、どんな手続きが必要かも知っている、ということはよくあります。

7.Early Decision, Early Action, Regular Decisionの違いとは?

アメリカの大学へ出願する際には、Admissionのタイプを選びます。大きく分類すると、

  • Early Decision
  • Early Action
  • Regular Decision

との3つがあり、出願の際にどのタイプにするかを決めた上で、願書を申請します。

Early DecisionEarly ActionRegular Decision
願書受付開始日8月1日8月1日8月1日
願書受付締め切り11月15日あたり11月15日あたり1月末あたり
合格しても行かないという選択できないできるできる
競争率

表から分かるように、必要な書類が早めに揃った人は、競争率が高くなって合格しづらくなるRegular Decisionではなく、Early Actionを選ぶのがおすすめです。

また、Early DecisionとEarly Actionの違いですが、これはBindingと呼ばれるものが大きく関係しています。

Early Decisionの場合には、合格したらその大学へ行かなければいけない、という条件のもとに出願します。他の大学へ願書を提出するのはOKですが、Early Decisionでの出願は、大学1校しか認められていません。

ちなみに、どの大学へEarly Decisionしたかは、高校のカウンセラーがしっかり管理しています。すべての生徒がEarly Dicisionするわけではありませんが、私の息子がEarly Decisionで出願した時には、数日後に高校のカウンセラーから「受かったら行きます」的なことが書かれたフォームをもらって帰宅しました。そして、そこに署名して提出しました。

多くの場合には、Early Decisionは、第1希望の大学に対して用いるのが一般的です。普通に受験したらハードル高そうだけれど、入学できるならぜひ行きたい!という憧れの大学に対しても、Early Decisionが良いでしょう。

早めに応募して早めに合格発表を頂いていくと、気持ち的に安心できます。early actionなら何校に出願しても良いので、ぜひおすすめです。

我が家では、早めに準備を始め、8月中旬に挑戦校から滑り止めまで、全てに出願しました。周囲と比べて、これはかなり早めでした。

滑り止め校からは9月中旬に合格発表をいただきました。全てEarlyで出したので、クリスマス前には進学先が決まりました。

Early Decisionは断れるのか?

もしもEarly Decisionで受験して合格したけれど、やっぱり行きたくないという場合には、どうなるのでしょうか?

大学によって対応は異なりますが、1年分の学費を払えと請求されるケースもあれば、金銭的なペナルティはゼロというケースもあります。

しかしいずれの場合でも、Early Decisionを蹴ることによって、その年は他の大学には行けないというペナルティがつきます。つまり、他の大学から合格通知を受け取っていても、自動的に浪人決定となってしまいます。

8.複数から合格通知をもらった!どうする?

複数の大学から合格通知を受け取った場合、どの大学へ進学するのかという意思表示をしなければいけません。多くの場合には、大学の受験者用ホームページにアクセスして、そこから入学するかどうかを選択して通知します。

入学しないという意思表示をした場合には、「どの大学へ進学するのですか?」という質問をされることが多いです。この場合には、正直にどこへ進学するのかを記入しましょう。こうした情報は、大学の外に漏れることもなければ、何かの目的で使われることもありません。あくまでも、参考資料や統計を取るために使われるだけです。