日本で生まれ育った私たちは、信号の色は赤青黄、と教わりました。渡っていいのは青信号です。この青信号、アメリカに来るとBlue Lightではなく、Green Lightと呼びます。あれ?なんで?と思ったことがある人は多いのではないでしょうか。ここでは、意外と奥が深い信号の色の謎についてご紹介します。
目次
1.青信号vs Green Light、どちらが先?

信号機は、日本古来のものではありません。外国から持ち込まれた文化の一つです。もともと信号機が発明されたのはイギリスで、1868年にイギリスのロンドンに設置されたのが世界初と言われています。この時には、まだ信号の色は現在のような赤青黄の3色ではなく、「すすめ」と「とまれ」を表す赤色と緑色の2色使いでした。
この信号機は、動力に現在のような電機ではなくガスを使っていたため、ガス爆発の事故が多発してしまいました。そのため、最終的にロンドンに作られたガス式の信号機が世界へ普及することはなく、撤去という運命となってしまいました。
現在のような電気式の信号機が登場したのは、それから40年ほどたった1920年代です。舞台は変わってアメリカで、電気式の信号機が作られるようになりました。しかしこれは、イギリスの信号機を改造したり真似たものではなく、独自のニーズを満たすために発明されたものでした。
当時のアメリカでは、交差点などで警察官が手旗信号を使って交通整理を行っていました。朝から晩まで手を上げて手旗信号を送る警官の疲労は、尋常ではありません。それに、交差点ごとに警官を配置すると、人手が不足してしまうという悩みもありました。
そこで、人の代わりに信号機を接地しようというアイデアが生まれたのです。その結果誕生したのが、赤青黄の3色を持つ信号機です。
この信号機は、アメリカ北部の都市デトロイトに設置されました。その後、多くの専門家やエンジニアたちが試行錯誤しながら、使いやすくて見やすい信号機の開発に乗り出したのです。
日本初の信号は1930年

日本へ信号機が持ち込まれたのは、それから約10年後の1930年のことで、東京の日比谷に日本で初の信号機が設置されました。ちなみにこの日比谷交差点は、現在でも存在しています。
ちなみに、アメリカから日本へ信号機が持ち込まれた時には、Green Light(緑信号)でした。つまり、最初から青信号だったわけではなく、緑信号として輸入されたのです。
実際に、このころに制定された交通関連の法令では、「青信号」ではなくて「緑信号」と記載されていたそうです。つまり、日本も最初は信号の色は「緑」だったのです。
2.緑色の信号が「青」になった背景
信号の緑色は、現在でも変わっていません。それなのに、最初は「緑信号」だった色が、どんなきっかけで「青信号」となったのでしょうか?
その背景には、新聞など当時のメディアによる影響があるようです。どんな意図があったのかは分かりませんが、「緑信号」よりも「青信号」の方が日本人にとっては呼びやすく、親しみがあるということで、一般の人には「青信号」の方が普及しました。その結果、交通関連の法令ものちに「緑信号」から「青信号」へ書き換えられたのです。
これが、日本で正式に青信号が誕生した瞬間です。
日本には緑を青と呼ぶ文化があった
日本の青信号が「緑」ではなくて「青」として根付いた理由は、緑よりも青の方が語呂が良いから、という単純なものだけではありません。日本古来の文化や慣習とも、実は大きな関係があります。
例えば、日本語として使われている古来の色は、「赤青黒白」の4色です。これは、「赤い」「青い」「黒い」白い」と「~い」を付けて表現できる共通点があり。この4職以外はそれぞれ近い色に振り分けられていたようです。ちなみに赤色なら、オレンジ色やピンク色などはすべて「赤い色」とされました。「青い色」には、色味が近い緑色が含まれていたわけです。

文献を見ても、万葉集では新緑のことを「あをによし」と表現しており、青という色が用いられています。
じゃあ日本人が緑色を色として使い始めたのはいつ?
緑色を見て青と呼ぶなんて、日本人は色盲だったのか?と思う人がいるかもしれません。しかし、決してそうではありません。古代の時代には、全ての色を赤青黒白の4色として表現する文化があったようですが、平安時代の末期あたりからは、既に青色と緑色と区別する文化は確立されていました。
この時代には、中国からさまざまな影響を受けました。色についての認識もその一つで、「碧空」という空の色を表現した言葉が、中国から日本へ入ってきたのです。当時の文化人は、碧という色を従来の「青」と訳すことに抵抗し、新しく「緑色」という色で表現しました。これが、日本で緑色という色が誕生したきっかけです。
現在でも緑を青と呼ぶことは意外と多い
こうした文化的な背景があったからでしょうか、現在でも緑色のものに対して「青」という表現をする事は、私達が考えているよりもたくさんあるかもしれません。しかし私たちの多くは、それを疑問に感じることなく受け入れています。
- 青信号
- 青汁
- 青りんご
- 青々とした葉のような表現方法
他にもいろいろあると思います。
3.信号の設置方法も、縦長・横長の違いがある


アメリカと日本の信号機を比べると、アメリカでは縦長に設置されているものが多いのに対して、日本では横長の設置方法が一般的です。その理由は、ご存知ですか?
アメリカが縦長に設置されていて、風が吹くとブラブラと揺れるのは、
「ハリケーンなどの強風でも、影響を受けにくいから」
という理由があります。一方で、日本の信号が横長なのは
「街路樹や看板があっても信号が見やすいように」
という理由があります。ちなみに、アメリカから持ち込まれたばかりの頃の信号機は、アメリカ仕様の縦長でした。しかし京都に信号を設置する際に、街路樹や看板などで信号が隠れてしまうことが多く、安全性を高める目的で横長にしたところ、これが日本人に大ウケして、横長の信号が一気に人気を博したのです。
縦長七日、横長なのかという点においても、日米それぞれで文化や気候が反映されているわけですね。
4.青だけじゃない!他にもある色の違い

アメリカと日本で同じものを異なる色で表現するものは、信号だけじゃありません。他にもあります。
- 太陽の色(日本は赤やオレンジ、アメリカでは黄色)
- 虹の色(日本は7色、アメリカでは6色
- 公衆トイレの扉についている男性・女性のサイン(日本では黒と赤などに色分けするのが一般的、アメリカでは必ず同じ色)